きょうの社説 2010年12月4日

◎臨時国会閉会 「熟議の国会」には程遠く
 64日間の日程を終えて閉会した臨時国会は、最重要課題と位置付けられた補正予算の 成立が唯一の成果と言ってよく、菅直人首相が所信表明で強調した「熟議の国会」には程遠い内容だった。相次ぐ閣僚の失態や失言で審議が停滞し、政府・与党は補正予算以外の法案をほとんど成立させられず、「有言実行内閣」も看板倒れに終わった。

 内閣支持率はこの2カ月あまりで、64.4%から23.6%まで急落した。柳田稔法 相の事実上の更迭、仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相の問責決議案可決は、外交、内政のあらゆる面で、菅政権が大きな壁に突き当たっていることを物語る。

 そもそも衆参ねじれ状況での国会運営は周到な準備と野党側への配慮が必要だったはず である。ところが、菅首相や仙谷官房長官は野党の挑発にたやすく乗り、失言や暴言を繰り返した。その場しのぎの稚拙で安易な国会運営がたたって大量失点を重ね、ダウン寸前にまで追い込まれた印象だ。

 この結果、政治主導確立関連法案や地域主権改革関連法案、郵政改革法案、労働者派遣 法改正などは本格論議に入れずに継続審議となり、野党が求めていた小沢元代表の国会招致も実現しなかった。

 予算編成は現内閣でやるにしても、来年の通常国会をどうやって乗り切るつもりなのか 。八方ふさがりの状況下で、菅首相が打つ手は限られている。仙谷官房長官らを交代させる内閣改造に踏み切り、来年の通常国会に道を開くか、それとも小沢一郎元代表への離党勧告で一気に支持率回復を狙うか、どちらも一定の支持率回復が見込める半面、一歩間違えれば致命傷になりかねない。

 仙谷官房長官を外せば政権の要を失い、求心力がますます低下する。「小沢切り」は党 の分裂につながる恐れがあり、どちらのカードを切るにしても相当の覚悟が求められよう。「大連立」や連立の組み替えなどの秘策もささやかれているが、交渉能力に乏しい現政権には難しいだろう。これから始まる予算案の編成作業が難航するようなら、「解散」の二文字がちらつき始めるかもしれない。

◎能登空港活性化 広域圏組合がより前面に
 能登空港の利用促進策として、奥能登2市2町の首長が今月後半、九州で羽田経由の能 登便利用を促すトップセールスを実施することになった。4首長が足並みをそろえるのは初めてだが、空港のお膝元であるなら、今回のように奥能登広域圏事務組合の枠組みを生かし、地元首長がもっと前面に立っていい。

 能登空港は県管理とはいえ、航空会社との間で設定された搭乗率保証で目標越えの大き な役割を担うのは奥能登の各自治体である。開港8年目の今シーズンも、目標搭乗率(62%)を上回れるか楽観できる状況にはない。今のうちから認識を共有し、臨機応変にテコ入れを図る必要がある。

 広域圏事務組合は自治体の緩やかな連合体であり、バランスに配慮して責任の所在があ いまいになりやすい面もあるが、奥能登では空港活用をはじめ、公共交通や医療ネットワークの構築、能登丼に代表される食のプロジェクトなど4市町一体の取り組みが増えている。他の地域以上に自治体連携が重要である。事務組合の機能をさらに強化し、一つの行政体のようなまとまりを維持していきたい。

 能登空港では全日空の22路線で乗り継ぎ割引が設定されており、輪島、穴水、珠洲、 能登4市町の首長は今月20、21日、鹿児島や福岡県で旅行会社などに利用を働きかける。就航路線は1日2往復の羽田便しかないだけに、羽田経由の利用掘り起こしは搭乗率を上げるためにも極めて重要である。4首長がそろって旗を振るような場面は今後も増えてくるだろう。

 奥能登地域の広域行政は1970年に当時の2市4町1村で広域市町村圏が設定され、 77年の事務組合設立を経て40年の歩みがある。組合の事業としては圏域振興計画策定や消防業務、職員共同研修などのほか、能登空港の利用促進が明確に位置づけられている。

 搭乗率向上へ向けては商工団体や老人会などがツアーを企画したり、高校が修学旅行の 行き先を首都圏に決め、都内で観光PRや物産販売にも努めている。4市町は能登の他の自治体を引っ張る気概で活用策に汗をかいてほしい。