主人公・ワタナベ役の松山と大学の同級生、緑を演じる水原の顔がゆっくりと近づき、次第に唇を重ね合わせる。
映像のバックには主題歌の「ノルウェーの森」(ザ・ビートルズ)が流れ、透き通るような美しいキスシーン。最後に黒い画面にタイトルなどの作品情報が表示されるまで、15秒のうち10秒間は、キスだけだ。
通常、映画のスポットCMは、劇中から印象的なカットを複数使用して作品全体のイメージをアピールする。今回のような長回しの1シーン1カットだけで構成されること自体、異例だ。
配給元の東宝によると、CMのコンセプトを決めたきっかけは、一般試写会のアンケートの中にあった「キスしたくなる映画です」という意見。原作ファンの間では、ワタナベと緑のキスは作品を象徴する場面としてとらえられており、映画でもこのイメージを大切にしたという。
同作が女優デビュー作だった水原にとって、初めてのキスシーンでもあった。ユン監督は「希子の頑張りとケンイチのリードで、爽やかだけど重厚で軽くて内気、そして誠実かつ慎重な、今まで私が撮影した中で最も複雑なキスシーンを撮ることができました」と振り返った。
“100%の恋愛小説”とうたわれた小説のイメージを強く印象づけるCMに注目だ。