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現場から記者リポート:クマ出没 消えた人里との境界 /滋賀

毎日新聞 11月23日(火)16時11分配信

 ◇獣害予防に放牧も 県、休耕地で試み効果
 ツキノワグマの出没が頻発している。県内のけが人は5人(22日現在)と、出没が相次いだ04、06年の4人を超えて過去最多。捕獲数も29頭に上る。山に食べ物が少ないのが大きな原因らしいが、田畑の管理など身近な生活にも課題があるようだ。クマの生息域と重なる湖北地域を歩き、人と動物の暮らし方について考えた。【安部拓輝】
 8日夕、大谷川沿いに伸びる長浜市木之本町古橋。夕日が山の端に沈む中、市立高時小の児童らが集団下校する。「コロンコロン」。ランドセルからクマよけの鈴が鳴る。玄関前で見送った旧木之本町教育長の谷口久夫さん(69)は「日が暮れると私も出歩くのが怖い。よい方法はないものか」と腕を組んだ。
 3日前の午後7時前、乗用車で帰宅した家族が自宅ガレージに体長約1メートルのクマがいるのを見つけ大騒ぎに。1週間前には約300メートル離れた龍泉寺に子グマが迷い込み、殺処分された。対応に追われた谷口さんは「胃袋は空っぽでやせ細っていた。背に腹は代えられず餌を探しに出てきたのだろう」と話す。
 空腹なのはクマだけではない。近くの畑で野菜を作る80代の女性は「収穫前の豆が全部サルにやられた」とぼやく。県によると、昨年度のサルの農作物被害は県全域で約7800万円。イノシシ被害は1億4400万円にも及ぶ。湖北農業農村振興事務所は「今秋はほとんど山に帰らず、田畑を荒らし続けている」と話す。
 獣害はなぜ深刻化するのか。研究を続ける県立大環境科学部の野間直彦教授は「集落が野生動物を呼び込んでいる」と話す。過疎化した休耕地がやぶに覆われ、人里との境界が消えてしまった、というわけだ。野間教授は「サルやクマは木の実だけでなく、放置した農作物や生ゴミも食べる。無意識に餌付けしているようなものだ」と指摘する。
 県もユニークな試みを続けている。01年に始めた「放牧ゾーニング」事業。15日、近江八幡市白王地区を訪ねた。田を囲んださくを餌の容器で打ち鳴らすと、山の斜面から大きな雌牛がすごい勢いで駆け寄ってきた。休耕した周囲の棚田は草木が茂り、イノシシが稲を食い荒らしていたが、放牧を始めて被害は減少。湖北地域では発信機を付けたイノシシを追跡したところ、山奥に行動域を移したとの報告もある。クマにも効果があるようで、長浜市木之本町の杉野地区では03年から集落を囲む休耕地1・5ヘクタールに牛2頭を放牧。翌年、各地でクマ出没が相次いだため牛に鈴を付けたところ、集落に寄りつかなかったという。地元の代表で猟師の木下新一さん(67)は「山沿いの柿の木にはクマのつめの跡があったが、今年も姿を見せていない。大きな動物がいると警戒するのだろう」と話す。
 集落で取り組む課題は、クマもサルもイノシシも同じなのだ。野間教授は「互いが見通せる空間の確保が大切。山との境界を取り戻すことが日本中の獣害を減らすポイントだ」と話している。

11月23日朝刊

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最終更新:11月23日(火)16時11分

毎日新聞

 

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