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OSCE首脳会議:行動計画、見送り 安保機能に不透明感--閉幕

 【アスタナ田中洋之】カザフスタンの首都アスタナで開かれた全欧安保協力機構(OSCE、加盟56カ国)首脳会議は3日未明、総括文書の「アスタナ宣言」を採択して閉幕した。21世紀初の首脳会議で、OSCEの今後の具体的な活動方針を示す行動計画も策定する予定だったが、グルジア紛争を巡る欧米とロシアの対立で調整が付かずに見送られるなど、明確な将来像を描けなかった。域内の安全保障メカニズムとしての存在意義がさらに低下する可能性もある。

 アスタナ宣言は、国境不可侵など欧州安保の基本原則を定めたヘルシンキ宣言(1975年)や過去の合意を確認したうえで、OSCEの機能強化に向けた作業の継続を表明。テロ・麻薬など国家を超えた脅威への対処や、アフガニスタン安定化への貢献の必要性が盛り込まれている。

 議長を務めたカザフのナザルバエフ大統領は、前回99年のイスタンブール首脳会議以来となる宣言について「OSCEの活動に新たなステージを開く歴史的な出来事」と評価した。

 ただ、行動計画を巡る交渉が難航したため、宣言の採択は当初予定の2日昼から12時間近くずれ込んだ。

 一方、OSCEが関与してきたグルジア、ナゴルノカラバフなど旧ソ連地域の民族紛争は、いずれも解決のめどが立っていない。南オセチア(グルジア)で活動していたOSCE停戦監視団は昨年、ロシアの反対で撤収に追い込まれた。

 このため行動計画に関しては、これらの紛争解決に向けた指針を示す予定だったが、08年のグルジア紛争後に南オセチアとアブハジアの独立を承認したロシアと、「グルジアの領土保全」を支持する欧米の対立は解消できなかった。

 アスタナ宣言も欧州安保の原則を再確認したもので、内容は新味に乏しいものに終わった。

 行動計画の策定は来年の議長国リトアニアに引き継がれるが、今回合意できなかったことで、OSCEの先行きには不透明感が漂う。

毎日新聞 2010年12月3日 東京夕刊

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