2010年12月2日5時31分
野田佳彦財務相は1日、来年度予算の公共事業費について、今年度予算の約5.7兆円から1割程度減らす方針を固めた。公共事業費は、民主党が掲げた「コンクリートから人へ」を実現するため、今年度予算でも前年度より2割近く削減。厳しい財政事情を反映し、2年連続の大幅カットとなる。
菅内閣は6月に閣議決定した「財政運営戦略」で、来年度予算の歳出額について国債費を除いて71兆円以下に抑えることを決めている。各省庁の予算要求額は、高齢化に伴って1.3兆円増える社会保障費を含めて72.6兆円にふくらんだ。これを71兆円の枠内に抑えるには、公共事業費をいっそう削減するしかないと判断した。
1割削減が実現すると、公共事業費は、ピークだった1997年度予算の約9.7兆円から5割近く減ることになる。
来年度の公共事業費について、各府省は今年度予算とほぼ同額の約5.7兆円を要求。その大半は国土交通省(約4.8兆円)と農林水産省(約0.6兆円)が占めている。財務省は、菅内閣が「成長戦略」に盛り込んでいる国際的なコンテナ港湾や大都市圏の道路の整備などには、優先して予算配分する方針。地方の道路・港湾の整備、農業土木などが削減の対象になりそうだ。
8月末の概算要求で、各省庁は既存予算の1割削減を求められたが、公共事業費はすでに大幅に減らしているとして、前原誠司国土交通相(当時)は反発。前年比横ばいで要求した経緯があるが、菅内閣として、削減を徹底しなければ、予算が組めなくなるという事情を優先する方針に切り替えた。
ただ、景気の先行きに減速懸念が出ているなかで、民主党や地方自治体などの反発が強まるのは必至だ。(高田寛)