東京都は11月30日、過激な性行為を描いた漫画やアニメの販売などを規制する都青少年健全育成条例の改正案を都議会に再提出した。6月に否決された改正案の条文を一部修正、論議を呼んだ「非実在青少年」などの文言を削った内容だ。
ただ、今回の改正案も前の案と同様、事実上、表現の自由を侵害するのではないかとの懸念が根強い。29日には有名漫画家と大手出版社幹部らが、会見で反対表明。ちばてつやさんは「条例案をこれでもか、これでもかと出してくる都の趣旨が分からない。漫画、アニメの文化がしぼんでしまう」、秋本治さんは「(規制対象が広がれば、自作の主人公の)両さんが普通の生活しか送れなくなる」など、強い危機感を訴えた。
「児童ポルノの氾濫を見過ごせない」とする石原慎太郎知事の問題意識は理解できるが、表現の自由は民主主義の根幹であるだけに、規制には可能な限り慎重でなければならない。何より、現実の社会のゆがみに対する憤りを、虚構の世界の取り締まりに向けるのは、はっきり言って筋違いだと思う。
熊本市では市青少年センターの専任指導員5人と市が委嘱する指導員517人が、繁華街や各中学校区を巡回し、声掛けや補導などに当たっている。また歳末に向けては、2学期が終業する24日に、県内一斉の街頭指導も予定されている。
以前も書いたが、漫画やアニメの監視に目を光らせるくらいなら、その視線を現実の子どもたちに注ぐ方が、どう考えても合理的だ。地域の人たちが取り組む地道な活動こそ、子どもたちを守り育む要であることを再確認しておきたい。(宮下和也)
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