インターネットなんかこの世に存在しなきゃよかったのに……。
ウィキリークスで世界に恥をさらされた人たちのぼやきではない。先週の金曜、自宅のパソコンが突然、ネット接続不能になってしまった。いざ、つながらなくなると一日中、不愉快な気持ち。
いろいろやってみた。電源を落とし、ていねいに入れ直す。はやぶさ君の例もあるから、モデムを軽くコンコンしてもみる。変化なし。誰に聞こう? 問い合わせるべき先の電話番号を見つけ出すのに半日以上。それでも復旧のめどは立っていない。ネットのない時代は、こんなイライラ、経験することもなかった。憤りはエスカレートする。結局、人間らしいコミュニケーションを奪ったり、いじめを助長したり、ITなんて人類を不幸にするだけじゃない?!
違います、というのがイギリスの社会学者、マイケル・ウィルモットさんら研究チームの結論だ。世界の3万5000人を調べたら、ネットはくらしを精神的に豊かにする、との結果が出た。年齢や所得による違いはなかったけれど、男性より女性の幸福上昇度が大きく、専門家もびっくり。
理由の調査はこれから。でも、「ネットを通じて情報を得たり発信したりする自由さ、解放感や、受け身ではなく自分がコントロールしているという満足感が幸福の実感につながる」というウィルモットさんの説明を考えたら、なぜ女性の方が恩恵を受けるのか分かる気になってくる。
そんなありがたさも忘れ、ITのない時代がよかったなどと思ったから罰が当たったのだ。今度は5年半使った頼みの携帯が瀕死(ひんし)の状態に。さて、パソコンのネット復活と新しい携帯端末の購入、どっちを優先した方がより幸せに? そういう研究なんてないですよね。(論説室)
毎日新聞 2010年12月3日 東京朝刊
12月3日 | ネットは人を幸せに?=福本容子 |
12月2日 | ケネディは偉かった=布施広 |
12月1日 | 子供はすごい=滝野隆浩 |
11月30日 | 生きる力の源=福岡賢正 |
11月29日 | どうせまねるなら=笠原敏彦 |