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裁判員裁判:横浜・殺人未遂 20年余不法滞在の末、有罪判決で強制送還へ /神奈川

 ◇「おとなしい人だったよ」

 横浜市中区の簡易宿泊所で隣人を包丁で刺したとして殺人未遂罪などに問われた韓国籍の作業員、徐尚用(セサンヨン)被告(60)の横浜地裁の裁判員裁判で、大島隆明裁判長は2日、「死ぬかも知れないと認識し、左脇腹を刺した」と未必の故意を認め、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役6年)を言い渡した。

 弁護側は「妄想障害で心神耗弱であり、隣人の音に怒り脅そうと包丁を持ったが、殺意はなく傷害罪にあたる」と主張。判決は「心神耗弱」を認めたものの「脅さず、いきなり刺し、深さ11センチの傷を負わせた」と殺意を認定した。

 徐被告は89年に来日以来、20年余り不法残留を続けた。猶予判決の後、待機していた東京入国管理局横浜支局の係官に身柄を拘束された。近く韓国へ強制送還される。

 「125円」。裁判長が逮捕時の所持金を聞いた時、徐尚用被告(60)は韓国語でそう答えた。

 判決前日の1日午後、徐被告の住んでいた通称「ドヤ街」(中区松影町)の簡易宿泊所に行った。横浜地裁から歩いて10分ほど。5階建てに約80室がうなぎの寝床のように並ぶ。

 経営者(67)は「1泊1200円(2畳)と1400円(3畳)。泊まり客は30人ほど。不法滞在者の取り締まりが強化され、客が減った」と話す。

 徐被告は隣室の男性(58)が深夜に立てる音に怒りを感じ、一度注意に行ったが、無視され「韓国人へのいじめ」と怒りを募らせた。昨年11月23日朝、男性が出勤しようとした時、包丁で左脇腹を刺した。

 近くの居酒屋の女性は「深夜に酔って騒ぐ泊まり客がいる。徐被告はおとなしい人だったよ」と話す。周辺には仕事にあぶれたのか、群れて路上に座ったり、たき火を囲む高齢者の姿が目立つ。

 徐被告はおじを頼って来日後、建築現場などで日雇い仕事を続けた。

 公判では「(事件のあった)11月、仕事は2日だけだった。仕事はまず日本人から決まった」と述べた。検察側の自白調書2通が却下され、弁護側は「捜査当局のドヤ街の住人に対する差別意識が根底にあった」と主張した。

 裁判長が最後に「母国に帰り、きちんと立ち直って」と言うと、徐被告は「ハイ、努力します」と頭を下げた。【網谷利一郎】

毎日新聞 2010年12月3日 地方版

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