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米原タンク殺人 判決要旨 滋賀

2010.12.3 02:24

 被告を懲役17年に処する。

 【罪となる事実の要旨】

 被告は交際していた小川典子さんを殺害しようと企て、平成21年6月10日午後9時ごろから翌11日午前1時ごろまでの間に、米原市内の汚水タンク付近で殺意をもって、鈍器のようなもので小川さんの頭部を多数回にわたって殴打するなどし、瀕死(ひんし)のけがを負わせたうえ、タンクに落とし、窒息死させて殺害した。

 犯人は、汚水タンク付近で、被害者の頭部を乱打して瀕死の重傷を負わせたことが認められる。この事実と、被告車両の左後輪のブレーキドラムに、暴行の際に飛散した血液の一部に由来する蓋然(がいぜん)性(確実性)が非常に高い血痕が付着していること、暴行が行われた時間帯と重なる10日午後10時半ころ、被告の車両と似た車が現場に駐車されていたことを考慮すると、犯人は、犯行の際に被告車両を使用していた可能性が極めて高い。

 また、被告は被害者の血液が付着していた車のマット類を自宅に隠匿するなど車内の血痕の存在を認識していたかのような行動をとっており、被告と犯人との結びつきをうかがわせる。

 次に、被害者は6月10日午後8時43分に被告にメールを送信した直後、被告と合流したと認められるが、その後、被害者に接触した人物は確認されておらず、第3者と連絡を取った状況もうかがわれない。

 一方、被告は10日以前は被害者と頻繁に連絡を取り合っていたにもかかわらず、11日以降はほとんど連絡を取ろうとせず、安否を気遣う行動もとっていない。また、13日には被告車両の修理と清掃を自動車修理業者に依頼して、修理を急がせるなど不自然な行動を繰り返している。被告と犯人との結びつきについて積極的に作用する事情。

 他方、被告に被害者を殺害する動機が明白にあるとはいえないが、交際状況などから被害者への怒りなどを暴発させてもおかしくない状況にあったことから、突発的に殺意を抱くことがあり得ないとまではいえない。

 以上の通り、被告が犯人でないとすれば合理的に説明することができない事実関係があり、そのほかにも被告と犯人の結びつきを示す多数の間接事実が認められ、これらを総合すれば、被告が犯人であることは合理的疑いを差し挟む余地がない程度に立証されているといえる。

 【量刑理由】

 被害者が攻撃を受けてから絶命に至るまでには相当の時間があったと認められるが、その間に味わわされたであろう恐怖の大きさは想像を絶するものである。それがほかならぬ交際相手によってもたらされたことが、被害者の絶望感をより深めたであろうことも疑いがない。

 遺体に残された傷は目を背けざるを得ないほどの凄惨(せいさん)さで、犯行様態の執拗(しつよう)さや残忍さがうかがえる。もっとも、犯行に用いられたのは小型の鈍器のようなものであると考えられ、計画的に犯行に及んだということはできず、興奮に駆られて我を忘れ、過剰な攻撃に至ってしまった可能性が高い。汚水タンクに投下させた行為は、被害者の尊厳を無視した非道な行為であるが、これが殺意に基づくものとまで認められる証拠はない。

 動機は最終的には不明であるが、事件直前に何らかの事情で行き違いが生じ、被告の怒りを暴発させた蓋然性が高い。

 検察官は、被告の反省の情が皆無で、矯正は困難と述べるが、本件も突発的な犯行というべきことを考えると、矯正困難といえるかは疑問である。

 被告は遺族に謝罪も弁償もせず、保身のため被害者の名誉を損なうような発言さえしており、遺族の処罰感情が厳しいのはもっともである。しかし、本件はあくまで個人的な事情による犯罪で、社会を震撼(しんかん)させたという事情はないため、量刑を左右する事情になるとみることはできない。

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