2009年02月06日 (金)おはようコラム 「北方四島人道援助中止の波紋」

(阿部キャスター)
おはようコラムです。明日2月7日は「北方領土の日」ですが、最近のロシアの行動が、返還運動を続けている元島民を不安にさせています。田中解説委員に聞きます。

Q1:先週、日本海でロシアの国境警備隊に日本の漁船が拿捕されましたよね。

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A1:ええ、これまで専ら北方四島の周辺のことだった漁船の拿捕が日本海で起きたので、オヤッと思いましたが、その翌日、北方四島でも元島民を不安にさせることが起きました。
6年前から続けられてきた日本からの北方四島への人道援助事業に支障が出たのです。


Q2:人道援助事業は、確か、「ビザなし交流」の一環で行われているものですよね。

A2:その通りです。 
この「ビザなし交流」は、「領土問題に関する日ロの立場を損なわない」という基本合意のもとで、元島民と四島のロシア住民が旅券やビザを持たずに相互訪問するもので、17年間も続けられてきました。

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ところが、今回、援助物資をもって四島に上陸しようとしたところ、ロシア側が合意に反して、出入国カードの提出を求めてきたので、人道援助事業は中止になりました。

これで元島民は、この春から再開される予定の相互訪問が中止になり、故郷の土を踏むことが出来なくなるのではないかと懸念しているのです。

Q3:ロシア側は、なぜそのような行動に出たのでしょうか。

A3:まさに、そこなのですが、近々、サハリンで行われる予定の日ロの首脳会談に関係していると思われます。
この会談は、メドベージェフ大統領がサハリンの日ロの合弁事業の完成式典に麻生総理大臣を招き、そこで領土問題を念頭に「2国間の全ての問題について話し合いたい」と持ちかけたものです。


Q4:漁船拿捕や人道支援事業に対する強硬な姿勢と会談の呼びかけは、矛盾していませんか。

A4:いや、したたかなロシアの外交戦術だと思います。
といいますのも、ロシアは、これまで好調だった経済が一気に落ち込み、打開策として日本を含めたアジアに目を向けようとしているのです。
だからこそ経済的弱みを見せないで強硬な姿勢で強いロシアを印象づけたいのでしょう。
麻生総理大臣は、こうしたロシア側の戦術に惑わされることなく、戦後64年、元島民が訴え続けてきた北方領土問題の解決に一歩でも近づけてほしいと思います。

投稿者:田中 和夫 | 投稿時間:08:22

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