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きょうのコラム「時鐘」 2010年12月3日
赤字が手に負えないと、突然、JRから名指しされた氷見線、城端線はどうなるのだろう。黄色信号の点滅は赤になるのか、ひょっとして青に戻るのか
氷見線の車窓には有磯の海が広がり、城端線は散居村の野を走る。「列車も楽しい」と思わせる路線である。この「列車も」がクセモノで、車の便利さに浸り切っているから、そう思う。赤字が減らない道理である 海岸近くを走っても、北陸の鉄道の車窓に海はなかなか現れない。明治の昔、軍艦の艦砲射撃に備え、線路を海から遠ざけたのだという。氷見線は貴重な例外で、海越しの立山連峰という自慢の車窓が広がる。が、自慢のタネと赤字の山とは別ものである 車からも海と山は見える。散居村の光景を楽しむには、車の方が便利だろう。汽車の旅には独特の趣がある、と思うのは時代遅れに違いない。いつか汽車に揺られて北海道の壮大な流氷を眺めたいと夢見ていたが、とうに線路はなくなった 鉄道は「地球に優しい」と褒められる。が、地球より一企業の赤字の方が深刻なのである。分かっちゃいるが、美しい褒め言葉は信用が置けない。 |