小さなガーディアン(前編)
2010-05-24 21:10:01 テーマ:三世界の守護者達・番外 posted by orimitsukao番外のカテゴリではオリキャラを使っての番外編小説等、イラスト以外を掲載。
時代背景はレンがアルヴィスに保護される前、小学校に潜入捜査中のアルヴィスの話。
この話に登場する和樹少年はアルヴィスの正体を知る数少ない人間。
現在、成人し養護教諭となりガーディアンの協力者です。
(注意:理事長は経済面での協力者、和樹は精神面での協力者)
和樹の設定は、後日登場するかもしれません。
それから、このお話(前・中・後編)の挿絵を募集しています。
詳しくはメールフォームにご連絡を。
桜の花が散り落ちた春の夜。
10歳位の少年が息を切らしながら走ってきた。
「大変、遅くなっちゃった!!」
少年の身長は140cmくらいで太ってもなく痩せてもいない中間の体型。
ダークブラウンの少し長めの髪。
メガネをかけているがガリ勉風というわけではなく、可愛らしいオタク少年といった感じ。
薄いグレーのトレーナーに膝丈位の長さのズボンを着用していた。
少年が向かった先はこの町の外れにある墓地。
大人から近道だけど夜は物騒だから通る事を禁じられている場所。
「夜は通っちゃダメって言われてるけど・・・近道しちゃえ!!」
通って怒られる事よりも1分でも早く家に帰りたいという一心から少年は墓地を横切る事にした。
少年が横切ろうとしている墓地の中では・・・
赤茶色の短めの髪に左のもみ上げだけ肩までの長さ、頭頂部は少し跳ね上がっている。
目の色は朱色で大きくもなく小さくもない二重のつり気味の目。顔立ちはモデルで通る位の美形。
白いコートを身につけた20代後半の男性が何かを睨んで立っていた。
男の睨んだ先には人の形はしているものの容姿や肌の色はとても人とは思えない。
妖怪もどきと言ってもいいが、ああ見えても下級能力者の魔神だ。
「さて、吐いてもらおうか、お前の主が眠る場所をな。」
男は高くもなく低くもないが凄みのある声で妖怪もどきの主の場所を聞き出そうとしている。
妖怪もどきは男の言葉に一切耳を傾けず男を殺そうと狙っていた。
「誰が人間ごときに話すものか!これでも食らいやがれ、ロック・・・」
妖怪もどきが術法で男を狙うよりも先に男は大きな杖を出し妖怪もどきに光を浴びせた。
「お前の術法能力を一時的に封じさせてもらった。後ろの野次馬を巻き添えしかねないからな。」
少年が近づく足音と声を男は感じ取ったらしく剣で弾き返せば少年が巻き添えを食らう事を察し
魔封じの杖サイレントロッドで妖怪もどきの力を封じ込めた方がいい、と判断したのだ。
男は指輪からクレイモアに似た剣を取り出し左手に持ち妖怪もどきに剣を向けた。
『えっ、ええっ!なぜ、ボクがいる事を知ってるの!?あのお兄さん。もしかして・・・千里眼?』
剣を向けた先には野次馬になって見ている少年がいる。
少年は余りの凄さに言葉も出ず腰を抜かしてしまい動けないでいた。
「その剣はグ、グレイシアソード!貴様は三世界の守護者アルヴィス!!」
妖怪もどきは白コートの男をアルヴィスと呼び恐怖におののいてしまった。
白コートの男=アルヴィスはグレイシアソードに術法をチャージし魔法剣を作り出している。
「光の鎖と戒めの風よ、敵を封ずる水晶になれ!クリスタルシュート!!」
アルヴィスはそう叫ぶと逆袈裟斬りで妖怪もどきを斬りつけた。
「ば、ばかめ!何処を斬ってやがる。痛くも痒くもな・・・何じゃこれー!!」
斬りつけた所から水晶化が始まり1分もたたずに妖怪もどきは完全に手のひらサイズの水晶に封印されてしまった。
「馬鹿はお前だ。クリスタルシュートは敵を殺す技ではなく拘束技だ。」
クリスタルシュートは光属性の光の鎖と風属性の戒めの風を合体させた魔法剣。
暴れて尋問する事が困難な敵や脱走した敵を捕らえるのに、この技を使用する。
「くそっ!早く戻せ、このクソガキ!!」
水晶に閉じ込められてしまった妖怪もどきは抵抗できずアルヴィスに悪態をつき出した。
妖怪もどきの悪態にアルヴィスは無視という形で受け流し少年に近寄った。
「・・・それから、そこの野次馬小僧。」
男の威圧的な声に少年は完全に怯えて逃げ出してしまった。
「しまった、逃げられたか。ん?」
少年が逃げた後には落し物。どうやら名札のようだ。
アルヴィスは名札を拾い上げると名前を読み上げた。
「高垣台小学校5年3組、相沢和樹。あの野次馬小僧の名前か。」
この町の高台にある町立高垣台小学校5年3組の教室。
教室は馬鹿にした笑いに包まれている。
笑われているのはメガネをかけた小柄の可愛い少年=和樹。
和樹はクラスメートの悪ガキ軍団10人位に囲まれていた。
「夜の墓場で白いコートの兄(あん)ちゃんが化け物と戦ってた!?」
悪ガキ軍団のリーダーは和樹の胸ぐらをつかみ睨みつけた。
「んなわきゃねーだろ!てめーが見たのは幽霊だよ!!う・そ・つ・き・か・ず・き。」
「そーだ、そーだ!この嘘つき野郎!!」
「嘘つき和樹、嘘つき和樹!」
和樹は集団で迫られ怯えて小さい声で反論するだけ。
「そ、そんな・・・確かに見たんだよ。赤茶色の髪の白いコートを着たお兄さんを。」
「はぁ?聞こえねーな!!」
悪ガキ軍団のリーダーは和樹の発言にイラつき突き飛ばした。
「リーダー、もっとやれやれ!!」
「こんな嘘つき死んでしまえよ!」
取り巻き連中もリーダーの行動を更に煽った。
悪ガキ軍団派ではない男子グループと女子全員はこの光景を見て見ぬフリ。
それどころか陰で笑いものにしていた。
騒ぎが大きくなりかけたその時・・・・
「こらっ!いい加減に席に座れ!!」
教室の扉を開く教師の声が聞こえ児童達は一目散にそれぞれの席についた。
「急な話だが転校生を紹介する」
教師はそう言うと転校生のフルネームを黒板に書き上げた。
黒板には『元宮スバル』と書かれている。
「元宮、入れ。」
教室に入ってきた転校生の少年の外見は身長145cmくらいで髪の色は赤茶色。
短めの髪で左のもみ上げだけ肩までの長さ、頭頂部は少し跳ね上がっている。
目の色は朱色で二重のつり気味の目。顔立ちはジュニアモデルで通用するほどの美形。
服装は水色のフードつきトレーナーにブラックジーンズ。
転校生の顔を見て女子児童は黄色い声を上げて騒ぎ出した。
あれ?この容姿の特徴、どこかで見聞きした様な・・・ん・・・
ああーっ!転校生スバルの正体は子供に変身したアルヴィス。
何故、アルヴィスが子供に変身しているのかというと・・・
昨夜、和樹が逃げた後で妖怪もどきを尋問し妖怪もどきの主人が
高垣台小学校の旧校舎敷地内で眠っている事を聞き出した。
場所を突き止めたアルヴィスは頭を抱え、ため息をついた。
「・・・小学校の敷地に潜伏とはな。厄介な所に隠れたものだ。」
学校に潜入する事自体、アルヴィスにとっては頭痛の種。
はたから見たら大人アルヴィスは不審者に間違えられてしまう。
(何せ、複数の物騒な武器を隠し持ってるし衣装はコスプレ状態)
化け物が潜伏しているから潜入捜査させてくれ、といっても信用してもらえる筈もない。
そこでアルヴィスは子供に変身し朝一番に学校に忍び込み教師達に暗示をかけた。
彼自身が最も嫌う闇属性の術法で。
-人心操作(マリオノール)の術法・・・本当は魔神が得意とする闇属性で合法ギリギリの術法だけどな。-
子供アルヴィスと和樹、それぞれの顔を見た瞬間2人同時に大声で叫んでしまった。
「何だ、相沢と元宮、知り合いか?」
教師の質問に対して
「昨日、帰りに見たカッコいいお兄さんにそっくりだったから。」
と、和樹はそう言って誤魔化し
「彼の叫び声に釣られてつい・・・。」
と、子供アルヴィスはそう言って誤魔化した。
-うっかりあいつの姿を見て叫んだが忘れてた、今のオレは転校生・元宮スバルだって事を。-
教師に促され、子供アルヴィスは緊張した口調で自己紹介をした。
本当はアルヴィスの現住所は魔界ファティマ国。
それを北海道から来たと偽って。
「北海道から来ました、も、元宮スバルと申します。み、皆さん宜しくお願いします。」
女子児童たちは更に騒ぎ出し一部の男子児童から嫉妬の嵐が渦巻いていた。
一時間目の授業が終わり、悪ガキ軍団は和樹に行かず子供アルヴィスに矛先を向けてきた。
「おい、転校生。ちょっと顔を貸せ。」
「あの・・・顔って貸せるものなんですか?」
ボケという形でさらりと受け流したが子供アルヴィスの行動を気に食わない悪ガキ軍団。
「うるさい!その生意気な口を黙らせてやる!!」
リーダーは子供アルヴィスを殴ろうと襲い掛かってきた。
「こんな真似をしたくありませんが仕方がありません!」
アルヴィスは剣と槍のエキスパートだが武術・格闘技の方にも精通している。
おまけに魔神の血を半分引くアルヴィスの攻撃力は素手の状態でも桁外れに高い。
本気を出すと流石にまずいので合気道の小手返しで悪ガキ軍団のリーダーを倒した。
その光景を見た5年3組の児童達は暫く言葉が出なかった。
静まり返った教室で和樹一人だけ子供アルヴィスに対し無邪気に話しかけた。
「元宮君、凄いです!一番ケンカの強い河田君を一撃で倒したんですから。」
和樹の言う河田と言うのは悪ガキ軍団のリーダーの事だ。
悪ガキ軍団はこの日一日中大人しくなったが子供アルヴィスに仕返しする事を画策していた。
放課後・・・
「くそっ!元宮スバルの奴。あいつに何か恥をかかせてやらないと気がすまねぇ!!」
河田少年は恥をかかされてかなり立腹。
「リーダー。またやりますか、嘘つき和樹いじめ。旧校舎に連れ込んで。」
「そうだな、まず、和樹をつぶす事が先決だ。」
その河田少年が敵視している子供アルヴィスは・・・
屋上で誰もいない事を見計らい左手を前にかざして叫んだ。
「エメロード・イグニッション!!」
エメロード・イグニッションは子供アルヴィスから大人アルヴィスへと戻る言霊。
三着所有の賢者の法衣はランダムに現れる。だが、出現する武器で判別する事が可能。
出現した武器は片手の中型剣クラスターソードが二本。
二本のクラスターソードが出現すればアルヴィスの法衣は黒コート。
旧校舎の調査準備が出来たアルヴィスは旧校舎へ向かおうと屋上から飛び降りようとした途端・・・
「さて、旧校舎を調査するか。ん?あれは相沢和樹と河田グループ!あいつら旧校舎の方へ向かっている!!」
アルヴィスが見た物は悪ガキ軍団改め河田グループに旧校舎へと連行される和樹の姿。
旧校舎には妖怪もどきの主人が眠っており、いつ覚醒するかわからない状態。
おまけに人間の体を乗っ取り器の命が尽きるまで容赦なく悪行の限りを尽くす。
1000年近く前から魔界と魔神世界でお尋ね者になっている重罪人だ。
アルヴィスの任務はその重罪人を調査し見つけ捕らえる事。デリートも許可されている。
「一刻も早くあいつらを追い返さなければならない。」
アルヴィスはそう呟くと校舎の屋上から飛び降り旧校舎へと急いだ。
高垣台小学校の旧校舎
校舎とその周辺は特殊なガスが充満されている。
この特殊なガス、人間には無害なのだが・・・
旧校舎に足を踏み入れたアルヴィスは一瞬、貧血に近い感覚になった。
「体から少しずつ体力と魔力が抜ける・・・。早くあいつらを見つけなくては!!」
どうやら、魔神の血を引く者には有毒なガスなのだろう。
アルヴィスは体力と魔力が奪われるガスの中を和樹と河田グループを探し回っている。
その和樹と河田グループは、というと
和樹を旧理科準備室の人体模型に縛りつけてから閉じ込めて自分達は裏口からさっさと下校していた。
その事実を遠くから聞いていたアルヴィスは腸が煮えくり返ったように激怒した。
「あのクソガキ共、人の皮を被った悪魔だな!早く和樹君を見つけ出さないと・・・」
アルヴィスは旧校舎を移動する度にダメージを受ける原因を朦朧とする意識の中でうすうす察知していた。
建物の広さは現在の校舎より大きくはなく一般の大人の足だと入口から理科準備室まで3分くらい。
だが、ガスの影響でアルヴィスは体力と魔力を奪われ準備室の入口まで10分かかった。
準備室の外側はガムテープで何重にも張られていたが簡単にはがせる物。
ドアを開けたのはいいが和樹と人体模型を縛る縄は非常に長くミノムシ状態に縛られていた。
それも他人が自力で解かれないようにご丁寧にかなり硬いかた結びで結んであった。
「大丈夫か!?和樹君。しかし、なんて奴らだ!!立派ないじめじゃないか。」
怒りながらもクラスターソードの片割れで和樹を縛る縄を切った。
「ボクは大丈夫ですけど、何故お兄さんボクの名前を知ってるの?」
解放された和樹はいたって元気。ただ、アルヴィスが自分の名前を知っている事に違和感を感じている。
「オレの事は詮索するな。和樹君、今すぐ、この建物から出ろ・・・」
アルヴィスの警告に和樹は大人しく言う事を聞き出口へと向かった。
和樹の体には何の影響もなかった事を考えるとあれが原因とアルヴィスは答えを出した。
-相沢和樹には何ともなくオレだけにダメージがくる原因・・・間違いなく対魔神ウィルス!
母さんの・・・人間の血を半分引くオレの場合、普通なら此処までダメージを受けることはない。
だが此処に撒かれてる奴は新型の対魔神ウィルス。混血児対策までしてやがる!!-
アルヴィスの意識はここで失われ倒れてしまった。
倒れた音に反応し和樹少年は引き返してきた。
「えっ、お、お兄さん!!」
(中編に続く)
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