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三世界の守護者達・第一部8

2010-11-22 23:08:42 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第7話「ゆきの夢とグレイファスの癖」


熱を出してしまった『しの』の為に、ゆきは里の住人に黙って山に行ってしまった。

権兵衛の妻さよから話を聞いたグレイファスは彼女を探しに山に入り滝近くにいる所を目撃。

落下した所をグレイファスは仕方なくドラゴン体に戻り無事に救出し里に帰った。


助け出され里に帰ったゆきは一番にグレイファスから平手打ちと説教を食らい泣き出してしまった。

グレイファス自身、彼女が憎くてひっぱたいたり説教をしたわけではない。

誰よりも心配していたのは他ならぬ彼自身。いってみれば親心的感情で彼女を叱ったのだ。


そんな彼女はグレイファスの家で疲れ果てて眠っている。

しかもかすかな笑みを浮かべながら。

一体、彼女はどんな夢を見てるのだろう。


ゆきの夢の中・・・

今のゆきよりも大きくなって20歳前後の女性の姿になっている。

彼女の側には「お母さん」と呼ぶ4歳位の男の子と2歳位の女の子が甘えるようにいる。

男の子はクリムゾン・レッドの髪、女の子は漆黒の髪だ。

二人に引っ張られるようにゆきがある場所に向かうと・・・

男の子と同じ髪の色の三十代後半の男性が優しく微笑んで立っていた。

それから続きは見えなかった。


場所を現実に戻して・・・


ゆきが目を覚ますと外は朝に。

土間にはクレイモアに似た剣・グレイシアソードを持ち胡坐をかいて眠るグレイファスがいた。

彼がこんな風に眠るようになったのには訳がある。

人間界の時間で200年近く前に言われなき罪を着せられ逃亡生活がつい数ヶ月前まで続いた。

追跡者は時間や天候に手段を選ばず彼を襲撃、眠っている時に襲われる事も多々あった。

そういう訳で彼は眠る時は必ず剣を持って眠る事にしている。


しかし、そういう事情を知らないゆきは不思議に思った。


-どうして、お兄ちゃんは変わった武器を持って眠っているの?-


ゆきはグレイファスを起こそうとしたその時、彼は目を覚ましてしまった。


「ん・・・、スノウ、何故お前は不思議そうな顔をしている。」

ゆきはグレイファスの質問に対しグレイシアソードを指差した。

彼女が不思議そうな顔した原因がグレイシアソードを持ったまま

眠っている事だとわかりグレイファスは偽りの理由を話した。


「・・・ああ、これか。子供の頃からずっとこうやって眠っている。オレの故郷は物心つく以前から戦が絶えなかったんでな。」


「え!?お兄ちゃんのいた所って、そんな危ない所なの?」

グレイファスは首を縦に振り続きを話した。


グレイファスがゆきに話した偽りの理由はこう。


彼の故郷は生まれる前から戦が絶えず、村の住人は安全な場所に

避難したくても法律に阻まれ避難できない状況。

時間を選ばず眠る時間のはずの深夜でも攻撃を受ける事も頻繁で

身を守るために武器を肌身離さず持ち警戒しながら眠るのだと、子供も例外ではない。


「大丈夫!グレンお兄ちゃん。ここではそんな人いないよ。」

グレイファスの話を聞いたゆきは笑顔で彼を安心させるセリフで答えた。

「だから、安心していいよ。グレンお兄ちゃん。」


この癖は長い間の逃亡生活で身についてしまったもの。

そう簡単に染みついた癖は治らないだろうが彼女の言葉を聞いてグレイファスは安心した。

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2010-11-05 23:20:50 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第六話「ゆきの危険な山登り?」


季節は秋。

元宮の里では冬に備えて保存食の準備を各家庭で準備している最中。

この地は山が近く少しだけ小高い場所にあるためか冬の訪れが周辺地域に比べ少し早い。


グレイファスも此処での暮らしに慣れ表面的には里の住人と交流してはいるが

完全に心を許したわけではない。


それは彼が魔神という素性を隠しているから。


ある秋の朝、グレイファスの住居の(今でいう所の)玄関扉を頻繁に叩く音が聞こえる。

その音で彼は目を覚まし戸を開けてみると権兵衛の妻・さよが血相を変えて来るではないか。

「グレン、おゆきちゃんがここに来なかったかい?」

さよの質問にグレイファスは首を横に振りながら答えた。

「いや・・・スノウはオレの所に来ていないが。スノウがどうしたのか!?」

スノウとはゆきの事。

反対に彼はさよにゆきの事を聞きだそうとしている。

お節介だけどほぼ毎日のようにやって来るゆきの事はまんざらでもないらしい。

「まさか、あの子・・・一人であの山に?」

さよの呟きをグレイファスが聞き漏らすはずがなく問い詰めた。


ゆきは捨て子で身寄りのいない孤児。

権兵衛夫婦と娘のしのと一緒に暮らしているが、しのが昨夜急に熱を出して寝込んでしまったらしい。

常備していた熱さましの薬のストックがなくなってしまい翌朝、権兵衛が山に薬草をとりに行く予定だった。

朝、権兵衛夫婦が目を覚ましたらゆきがいなくなっていたという。


「おさよさん、しのの熱の事ならコレで何とか対処できる。それからスノウの事はオレが探す!

あいつの性格から考えるとしのを助けたい為に里長達に黙って山に向かっただろう。」

グレイファスは魔神世界産の解熱用薬草を人間の体質に合うように品種改良したものを

さよに渡し煎じて飲ませるよう伝えるとグレイファスはゆきを探しに山へと向かった。


ちょうどその頃、ゆきはというと・・・。

薬草を探しに山の中を彷徨っていた。


「おじさん達怒っているよね。黙って来た事。」

彼女は反省しているのか少し心細くなっている。


実は彼女、山の中には一度も立ち入ったことがない為

薬草の本当の場所がわからないまま。


むやみやたらに歩き回った結果、遭難してしまったというわけだ。


ゆきが山に入って遅れてグレイファスも山の中に入り、ゆきを探して大きな声を出した。

「スノウの奴、一体何処にいる。この山はそう高くはない筈だが・・・。」


グレイファスの言うとおり、この山の標高は高くはない。

しかし、ふもとに近い場所ならば多少の手入れをしており、ある程度わかる。


「ん?道でない所に子供の足跡がある。まさか・・・あいつ!!」

グレイファスは道から外れた場所に子供の足跡を見つけた。

かなり新しいもので大きさから考えて足跡の主は女の子。


グレイファスは足跡の主がゆきだと断定し足跡を辿り始めた。


足跡は道なき道に向かっている。

辿っている途中、水が流れる音に彼は気がついた。

ゆきの足跡と水の音に神経を研ぎ澄まして走ってみると・・・


「なに!?この山には滝が流れていたのか!!」

グレイファスは数十メートル先にある滝を見て驚いた。

余り高くない山にしては滝の落差は激しい方。


「あんな所から落ちればひとたまりもない。それにしてもあいつは。」

グレイファスはゆきを探すために、この場所から離れようとしたその時・・・


滝の近くに小さな人影が見えグレイファスは驚いてしまった。

小さな人影の主はなんと・・・ゆきだったのだ。

「スノウ!此処から動くな、今そっちに向かう!!」

グレイファスはゆきを助けに行く為に滝の近くに向かい始めた。


一方、滝の近くにいるゆきは薬草を見つけたようで取ろうとしている。

「これがお姉ちゃんのお熱を下げる薬草なんだ。よいしょ、よいしょ。」

グレイファスの声は遠く、ゆきには届いていない。


グレイファスの声が聞こえていないゆきは薬草のことしか目に入っていない。

小さな体でようやく薬草が手に入り安心した瞬間、ゆきは滝の下へと落ちていくではないか。


彼女が落ちていくさまをグレイファスは滝の近くで目撃した。


「スノウ!くそっ、この距離ではキリュウは届かぬ。こうなればアレを使うしか・・・。」

浮遊術法キリュウが間に合わないと悟ったグレイファスは最後の手段を使う事にした。


グレイファスの最後の手段、それはドラゴン体に戻る事。

ドラゴン体に戻れば数秒で下に落ちていっているゆきを助け出せる。

でもそれは一歩間違えればゆきに正体を知られる事になる。


躊躇いつつもグレイファスはゆきの命を助ける為にドラゴン体に戻り

猛スピードで落ちていく彼女に追いつき受け止めた。


-無事でよかった・・・、それに気を失ってる。オレの正体を知られずに済んだ。-

グレイファスがゆきを受け止めた時、彼女は既に気を失っていた。

命が無事だった事、気絶で正体がばれずに済んだ事でグレイファスは胸をなでおろした。


気を失っているゆきを抱えたまま、グレイファスは上昇し山のふもとに降り立った。


ゆきを下におろすとグレイファスはドラゴン体から人間体に変身した。


朦朧とした意識の中でゆきはグレイファスがドラゴン体から人間体になるところを見てしまったのだ。

-これって夢だよね?グレンお兄ちゃんが人間じゃないって。-

グレイファスがドラゴン体から人間体に変身するところをゆきは夢と信じ再び気を失った。


ゆきが目を覚ますと外は夕暮れに。

そして元宮の里のグレイファスの家にいた。


「あれ?どうして、グレンお兄ちゃんのところにいるの?」

ゆきは首をかしげている、さっきまで山の方にいたのに、と。


首をかしげるゆきの前に物凄い剣幕でグレイファスが胡坐をかいて座っていた。

ゆきが目を覚ますと同時に立ち上がり彼女の左頬を平手打ちし怒り出した。


「・・・スノウ、お前な・・・里長達がどれだけ心配してたかわかるか!?」

グレイファスの怒りの形相にゆきは泣き出してしまった。


「話はおさよさんから聞いている。しのを助けたい余りに危険を冒してまで山に入った事。だけどな、お前が命を落としてしまっては元も子もないだろう。」

泣き出してしまったゆきをグレイファスはなぐさめるかのように優しく接した。

それを聞いたゆきは泣きながら首を二回縦に振った。


「お、お兄ちゃん・・・おしのお姉ちゃんのお熱はどうなったの?」

「しのならオレが持ってる薬で熱が下がって元気になった。」


ゆきはそれを聞いて安心したらしくグレイファスの家で眠ってしまった。


-全く・・・人思いでお節介、おまけに無茶な事をしてくれる。-

グレイファスはゆきの行動に少し呆れながらも起こさないようにその場から立ち去った。

三世界の守護者達・第一部6

2010-10-22 22:59:57 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao
第五話「初めての安らぎ」


瀕死の重傷を負ったグレイファスは人間界に逃げ込み元宮の里で保護され一命を取り留めた。

彼を最初に見つけたゆきという幼い女の子に懐かれてしまい、権兵衛夫婦の厚意で里で暫く暮らす事となった。

但し、グレイファスの名と魔神という正体を隠し海難事故で漂流し彷徨ったグレンという外国人として。


グレイファスがこの里で暮らしはじめて数日が経過。


衣装は某アニメに出てくる砂漠の使徒の様な衣装ではなく

シンプルで落ち着いた色味の直垂と小袴姿に変わっている。


外の天気は此処に倒れていた時と同じ雨。

里の住人に話を聞くとちょうどこの時期は梅雨と呼ばれ雨の日が続く事が多い。

(年によっては余り降らない事もあるらしいが)


多少の雨ならば畑仕事をするが雨の量が多ければ外での仕事が出来ない為、里の住人も退屈気味。


里の住人よりも雨の日を一番憂鬱に思う男が一人・・・そう、グレイファスだ。


グレイファスが雨の日を憂鬱に思うのは理由がある。

魔神世界でディヴァインの卑劣な罠によって言われなき罪を着せられ

人工的な雨で力を無理矢理奪われた挙句、集中攻撃を受けた。

そんな状態が人間界の時間に換算して200年近く、一回や二回だけではない。

そういった卑劣な攻撃を何度も受けた結果、雨の日になるとトラウマが蘇り憂鬱に。


今は彼を追跡する魔神は誰一人として来ていないが、100%来ないという保証はない。


「・・・ちゃん、グレンお兄ちゃん。」

グレイファスの事をグレンお兄ちゃんと呼ぶ女の子の声が聞こえる。

憂鬱な状態のグレイファスは女の子の声で我を取り戻し

振り返るとグレイファスの背後に5歳位の幼い女の子が心配そうな顔をして座っていた。


「大丈夫?どこか具合が悪いの?」

この里で5歳前後の幼い子供は一人しかいない。

「確かお前は・・・」

グレイファスが女の子の名前を言おうとしたその時・・・

「やっぱり此処にいた、おゆきちゃん!うちのお母さんから話を聞いたでしょ。

心配する気持ちわかるけどグレンさん、今凄く機嫌が悪いから勝手に入っちゃダメって!!」

入口で幼い女の子を責める10歳位の女の子がグレイファスの住居に入ってきた。

「ごめんなさい、おしのお姉ちゃん。」

おゆきちゃんと呼ばれた幼い女の子は、10歳位の女の子=しのに叱られてしょんぼりとしてしまった。

ゆきはしのの事を『お姉ちゃん』と呼んでいるが姉妹ではない。

わかりやすく言えば幼なじみに近い状態だ。


「お前、オレの事を心配してくれてたのか。ありがとうな。」

そんなゆきの姿を見たグレイファスは慰めるかのように彼女の頭を優しく撫でた。


ゆきはグレイファスに凄く懐いているが彼は少し困惑している。

彼女が嫌いだからという訳ではなく3000年生きてきて初めて他人に懐かれて戸惑っているだけ。

実際、グレイファスはゆきに懐かれてしまった事、まんざらではない様子。


「二人とも、他に何か用があるんじゃないのか!?」

グレイファスの指摘にしのは、ばれたか!という様子で舌を出した。

「ほら、おゆきちゃん!」

しのはゆきの背中を押すと自宅へと帰っていった。


ゆきはしのに背中を押されたものの、言いたい事が言えない状態。

「そんなにあせる必要はない。時間はまだある、言いたければいつでもいい。スノウ。」

その状況を見かねたグレイファスはあせる必要はない、とゆきに諭した。彼女の事をスノウと呼んで。

「スノウって・・・お兄ちゃんの国の言葉?」

グレイファスは首を縦に振り、ゆきの質問に答えた。

「そうだ。オレの国の言葉で空から降る雪の事。お前の名前『ゆき』もそこから由来してると聞いた。・・・嫌か。」

ゆきはグレイファスのセリフに対し首を横に振ると笑顔を見せた。

「ううん、お兄ちゃんの呼びたい方で呼んでいいよ。」

彼女は緊張がほぐれたのか、ようやくグレイファスに本題を話せる様になった。

ゆきがグレイファスの住居に来たのは、この季節にしか咲かない花を彼に見せたかったから。

但し、その場所は山のふもとにある。

それを聞いたグレイファスはゆきの話に快諾した。

「わかった、スノウ。山のふもとにあるお前がオレに見せたい花、雨が止めば一緒に行こう。」

グレイファスは『雨が止んだら山のふもとに行く』と、ゆきと指きりで約束した。


翌朝、元宮の里の雨は止んで晴れ間が見え約束どおり山のふもとに行く事にした。

道は舗装されているとはいえ当時の道は土、この数日の雨で道はぬかるんでいる。

そこで、グレイファスはゆきを背負い山のふもとまで出かける事にした。


元宮の里から山のふもとまで大人の早足で行けば10分程度とそう遠くない。


山のふもとにたどり着いたと同時にグレイファスは背負っていたゆきをおろした。

雨露に濡れ健気に咲く小さな花がグレイファスの視界に飛び込み、見た瞬間、言葉が出なかった。


「お兄ちゃん、どうしたの?このヤマアジサイの花、何か変なの?」

ゆきの質問にグレイファスは首を横に振りながら答えた。

「いや・・・ヤマアジサイというのか、小さいけれどきれいな花だな。

スノウ、お前がオレに見せてあげたい花ってコレの事なのか?」

ヤマアジサイを見るグレイファスの表情にはかすかに笑みがこぼれていた。

「うん!そうよ、グレンお兄ちゃん。私もこの花が好きなの!!」

彼の質問にゆきは無邪気な笑顔で答えた。

グレイファスの心はゆきの無邪気な笑顔とヤマアジサイの花で少しだけ癒された。


-スノウのこの無邪気な笑顔を守りたい。その為にもオレの正体は絶対に隠し通して見せる!!-

ゆきの無邪気な笑顔を守る為にグレイファスは魔神の正体を隠し通す事を改めて決意した。

三世界の守護者達・第一部5

2010-10-08 22:52:43 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

(注意)

今回より舞台を人間界に移しますが、セリフや単位等、わかり易い様に今風に置き換えて書いてます。

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第四話「元宮の里へ・ゆきとの出会い」


エクシリオンを封印し故郷の魔神世界に帰ってきたグレイファスは突如国家反逆罪の汚名を着せられた。

彼と次期総統の座を争うディヴァインの卑劣な罠とそれを信じきった総統の手によって。

処刑され完全に止めを刺されそうになった隙にどこに飛ぶかわからぬ移動術法をかけ脱走する事に。


グレイファスが飛ばされたのは魔神世界と魔界の境界地。

人間体になり体力の消耗を最小限に抑え、体力を取り戻す為に近くの洞窟に身を隠す事にした。

「この地は魔神世界と繋がっている、長い時間滞在するのは危険だ。」

グレイファスはそう察すると体力が回復次第、洞窟を脱出した。


魔神世界にいる総統とディヴァインは大人しくグレイファスの逃亡を見逃すはずがない。

第二次討伐隊を結成しグレイファスの残留魔力を辿りながら始末するよう指揮した。


討伐隊が追いつく前にグレンは殺気を感じ取り脱出する為討伐隊はグレイファスを捕らえる事ができない。

魔神世界だけでなく境界地や魔界にまたがりグレイファスは逃亡生活を続けた。

そんな逃亡生活が人間界の時間に換算して150年以上の時が流れたある日。


魔神世界のある辺境地にグレイファスは身を隠していた。

しかし季節が運悪く、雨季の季節と重なりこの数週間身動きが取れない。

肉体属性が火属性の彼にとってこの季節はもっとも憂鬱な季節。

そこを狙われてしまったらひとたまりもない。


そういう時に限って討伐隊がグレイファスの事をかぎつけて襲い掛かってくる。

グレイファスは討伐隊の水属性攻撃を受けつつも奥へ奥へと逃亡。

しかし、ある場所で止まってしまった。


「ばかめ!その奥は崖、下は谷底だ。いずれにしても貴様はこの地で死んでもらう事になる!!」


討伐隊の小隊長によるとグレイファスの逃げ込んだ先は崖っぷち、そして下は谷底らしい。

-くそっ!もはやこれまでか。・・・ん?この谷底は!?なるほど・・・噂に聞いたあの場所か。-

崖っぷちに追い込まれてしまったがグレイファスは下を少し覗いたと同時に不敵な笑みを浮かべた。

此処がどんな場所かグレイファスはわかったらしく何の躊躇いもなく谷底へ向けて飛び降りた。

-祈りの谷よ・・・魔神達が一度も足を踏み入れていない世界にオレ様を飛ばしてくれ!!-

グレイファスがそう呟くと肉体を光が包み何処へと消えた。

「き、消えた!」

討伐隊はグレイファスが消えた事にただ困惑するばかり。


グレイファスが何の躊躇いなく谷底へ飛び込んだのは

この谷が祈りの谷と呼ばれる場所だとわかっていたから。

祈りの谷は飛び込んだ者の祈りの声を聞き届ける力を持つと言われている。

ただ、魔神世界でも祈りの谷と呼ばれる場所を知る者はごく僅か。

彼が願った場所は自身以外の魔神が一度も介入していない場所=人間界。

人間界の何処に行くかは彼もそこまでは考えてはいなかった。


場所は変わって人間界、鎌倉時代初期の日本。


西日本のとある地域、里山にある小さな村。


村から少し離れた場所で姉妹と思われる女の子が二人遊んでいた。

突如空が暗くなり、雨が降り始めた瞬間・・・

姉と思われる10歳位の女の子が5歳位の妹と思われる女の子に対し家に帰ろうと促している。


妹と思われる女の子は少し離れた所で大きな物音がしたのを感じ取り音の方向へ走った。

「ちょっと・・おゆきちゃん、待ちなさい!」

『おゆきちゃん』と呼ばれた5歳位の女の子は10歳位の女の子の制止を振り切りながら。


大きな物音の原因は瀕死の重傷を負った赤竜が落ちてきた音。

瀕死の重傷を負った赤竜の正体はドラゴン体のグレイファス。

魔神世界の祈りの谷に飛び降りた時、偶然ここに繋がったらしい。


討伐隊による集中攻撃と地面に叩きつけられたダメージで意識が朦朧としており身動きが出来ない。


-冷たい、雨が降っているのか。此処は何処だ・・・。着物を着た子供がどうして・・・-

グレイファスは幼い子供の姿が見えたと同時に無意識に人間体になり意識を失ってしまった。


「・・・ちゃん、大丈夫?お兄ちゃん!」

意識を失ったグレイファスに駆け寄ってきたのは

10歳位の女の子が『おゆきちゃん』と呼んでいた5歳位の女の子。

その後に10歳くらいの女の子がやって来た。

「ちょっと、おゆきちゃん。早く・・・ええっ!ひ、人が倒れてる!!」

10歳位の女の子は驚きながらも一度里に戻り大人の人を連れて来た。


意識を失ったグレイファスは大人二人がかりで担がれ里に運び込まれた。


運び込まれて数日が経った明け方・・・

「ん・・・」

グレイファスは目を覚まし上体を起こすと周りの風景に対する違和感と足元に重みを感じた。

「此処はどこだ?オレ様は何故此処にいる。それにこの女の子は・・・。」

風景の違和感は此処の建物が質素な木造建築物で見た事がないような内装だったから。

足元の重みの原因は5歳位の女の子が眠っていたからだ。


グレイファスは眠っている女の子を起こさないように起き上がり外へ出ようとした。


その時・・・


三十代前半から半ばぐらいの少しふくよかな女性がこの部屋にやってきた。

グレイファスと鉢合わせ状態になり大声を上げて叫んだ。

「あんたー!行き倒れの男が気がついて起きてるよ!!」

女性の声に反応し女性の亭主と思われる四十代前半の男性が駆けつけてきた。

それと同時に部屋にいた女の子はそんな女性の大声に反応して目を覚ました。


「あんた、急に起きて大丈夫か!?5日間、ずっと眠り続けておったんじゃ。」

中年男性の声にグレイファスが首をかしげた。

「5日間、オレはずっと眠ってたんですか。そして此処はどこですか?」

グレイファスは自分の事をオレ様と言わずオレと言い、中年男性に場所を聞き出そうとしていた。

「此処は・・・元宮の里。あんたは5日前、この里の近くで倒れておったのを『おゆき』と今、家で眠っているワシの娘『おしの』が見つけたんじゃ。」

中年男性は場所と事情を説明した。


-確かオレ様は魔神世界で討伐隊に追い詰められて祈りの谷に飛び込んだ。

此処に飛ばされたというのか。その時オレ様は死に掛けていた!-


中年男性の話を聞いたグレイファスはどういう経緯で此処に来たか納得できた。


「それにしても、あんた何処から来た。この国の者ではない事は確かなのじゃが。」

中年男性は悩みだし、目を覚ました『おゆき』と呼ばれた女の子は心配しつつグレイファスに懐いた。


「お兄ちゃん、大丈夫?私、ゆき。お兄ちゃんの名前は?」

中年男性と『おゆき』と呼ばれた女の子の質問にグレイファスは答えた。

本当の事答えるわけにいかず名をグレンと偽り外国人で天涯孤独の身の上、祖国の海難事故によって流れ着き日本国中を放浪していた事にした。

それを聞いた中年男性とふくよかな女性は自己紹介し里長の権兵衛と妻のさよと言う事がわかった。

そして、ゆきが権兵衛夫婦の子供でなく赤子の時、雪の日に捨てられた孤児だという事も。


話を聞いたグレイファスは、この場を立ち去ろうとしたが住む場所と帰る場所は彼にはない。

そして、ゆきがグレイファスに懐いてしまい離そうとすると泣きじゃくる始末。


その光景を見た権兵衛夫婦はグレイファスに暫くこの里で暮らさないかと持ちかけた。

「グレン、あんたも天涯孤独の身の上と言うし、それに・・・おゆきちゃんがあんたに懐いちゃったみたいだしね。」


それを聞いたグレイファスは何の躊躇いもなく即答で世話になる事を決めた。

「言葉に甘えて暫く此処で世話になろう。宜しくな。」

「この里にいてくれるの!?ありがとう、グレンお兄ちゃん!」

それを聞いたゆきは大喜びした。


ゆきに懐かれてしまったグレイファスはこの里に暫く世話になる事となった。

-オレ様がこの里を出る時は正体がばれた時。それまでは人間グレンとしてこの里で住まわせてもらおう!-

三世界の守護者達・第一部4

2010-10-07 16:38:46 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第三話「グレイファス絶体絶命」


史上最悪の大魔道士エクシリオンを人間界で封じたグレイファスは

一度魔界のクスハ国最北端の村とカリナ国の議事堂に立ち寄った後、ドラゴン体に戻り魔神世界へ向かった。


魔神世界と魔界の境界にある領地の領主になってから一度として帰らなかった祖国。

里帰りのため年に二度一時帰郷が許されてはいるが彼には家族と呼べる者はいない。

厳密に言えば物心つく以前に孤児となってしまっている。

どういう経緯で孤児になったのかは本人はわかってはいないが。

その所為か祖国に戻る事は殆どなくなり戻るのも100年ぶり。


-久しぶりだな、この国も。オレ様には物心つく前に家族を亡くし帰る所はないが祖国に変わりはない。-


グレイファスが飛行して魔神世界の総統府に向かう途中、複数の視線を感じている。

-なんだ!?オレ様に対する殺気立った視線を幾つも感じる。一体どういう事だ。-

自身が処刑される事を全く知らぬグレイファスは視線を気にしつつも総統府へと向かった。


グレイファスを監視していた下級魔神の一体がワープの術法で総統府に先回りしある者に報告。

そのある者とは、グレイファス討伐隊総司令となったライバルの次期総統候補。

報告を聞いたライバルの総統候補は集結させていた水・雷属性が得意な術者と戦士を総統府の広場に配置させた。


罠を仕掛けられている事を知らぬグレイファスは総統府のある首都の町にたどり着いた。


その瞬間・・・


突然、空が暗くなり雷とスコールと間違えてしまうほどの雨がグレイファスに攻撃するかのように降り注いだ。

いや、攻撃するかのようにではなく完全に彼を狙って攻撃しているようにしかとても思えない。

その証拠に総統府のある建物や周辺の町、地面などは全く濡れてはいない。


-く、くそ!体の力が抜けていく・・・一体、誰の仕業だ!?-

グレイファスは肉体が雨に濡れたせいで力が奪われてしまい墜落し地面にたたきつけられた。


地面に叩きつけられたグレイファスは悶絶し動く事ができない。


「やはり調べた通りだな、グレイファス!貴様の肉体属性は火属性、水属性の集中攻撃を受ければ身動きが取れなくなる。」

総統府の最上階にある大きなテラスに不敵な笑みを浮かべ仁王立ちする二人の男。

一人は立派な身なりをしておりもう一人も別の一人に比べ少しだけ質素だがある程度の身分だとわかる。


-閣下、そしてオレ様と次期総統を争っているディヴァイン!何故あの二人がオレ様を?-


グレイファスが閣下と呼ぶのは一番立派な身なりをした男で、この国の総統。

総統の横にいる男はグレイファスがディヴァインと呼んでおり次の総統を争っている。


「ある一定身分以上の者は総統から頂いた領地の女は全員乱暴を働く事が定められている。」

ディヴァインがこの国の掟らしき事を言うと総統はグレイファスに罪状と此処での処刑を言い放った。

「グレイファス、貴様はその掟を破り続けた。よって国家反逆罪に処し即刻この場で処刑する!!」


-なんだと!?そんな馬鹿な掟、オレ様は聞いた事ない!確かに女に乱暴を働く事は知っているが。

・・・まさか!ディヴァインの奴、オレ様を蹴落とす為にした策略!!-


グレイファスは自身の処刑がディヴァインによる策略だとすぐに悟ったが・・・時、既に遅し。


総統とディヴァインは結託しており兵士を指揮してグレイファスを水属性の術法で拷問にかけた。

グレイファスはただその拷問に耐えるしかない。


「・・・グレイファス、貴様の能力は非常に優秀、処刑するのがもったいない、どうだ?取引をせぬか。」

総統とディヴァインはグレイファスに処刑回避の取引を持ちかけた。

「今の立場から大きく降格してもらい、必ず女に乱暴を働くと宣言するならば生かしてやってもいいぞ。」

だが、その条件はグレイファスのプライドをズタズタに引き裂くもの。


そんな条件を彼がのむはずがない。

命よりもグレイファスは自身のプライドを選び拒んだ。


-ふざけるな!たとえ肉体が滅んでも理不尽な掟に賛同する気はさらさらない。ガキの頃、あの現場を見た時から!!-

グレイファスが女性に対し暴力を働かない主義を貫いているには理由がある。

人間体の外見で12歳位の時、その時はまだ下級兵士の一人で上官の乱暴現場の見張り役をしていた。

上官が用を済ませると始末するようグレイファスは言いつけられたが犠牲となった女性は自らの命を絶ってしまった。

その現場を見てしまって以来、トラウマを抱えてしまい女性に対し乱暴を働かない主義を貫いている。

生涯の伴侶となる者以外には絶対に手を出さぬとも決めていた。


「・・・ほう、この期に及んでまだ、そんな事を言い続けるか。てめぇら・・・やれ。」

ディヴァインが指示すると術者や兵士達は水属性攻撃をグレイファスに対し集中攻撃しようとした。


-馬鹿が!大人しく貴様らの集中攻撃を受けるオレ様ではない!!-


グレイファスは右腕を空に向けて伸ばし、人差し指を高く掲げた。

「天を揺るがす霹靂よ、大地に降り注げ!サンダースコール!!」

そう詠唱した瞬間、グレイファスのいる地点から半径1キロ圏内に雷のスコールが降り注いだ。


するとグレイファスの術の射程内にいた兵士達はほぼ即死、全滅状態に。

射程外にいた者は術法の威力を恐れ怯んでしまう始末。


その隙を見てグレイファス自身、アンチェインドという術法を自らにかけて脱走という最後の賭けに出たのだ。

但し術法アンチェインドは彼自身も何処に飛ぶのかわからない代物。

ただわかる事は同一世界・・・此処では魔神世界には飛ばないという事だけ。

ドラゴン体のグレイファスは一体どこに飛ばされたのか・・・。

三世界の守護者達・第一部3-2

2010-10-02 23:17:30 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第二話「史上最悪の大魔道士(後編-2)」


グレイファスは自身専用術法アンチェインドでエクシリオンを異世界に飛ばしたと同時に自身も異世界に飛び込んでしまった。


アンチェインドは異世界に飛ばす移動系術法だが何処に飛ぶか彼自身も全くわからない厄介な代物。

(同じ移動系術法でもワープやリターンは目的地がはっきりしている)


異世界についたグレイファスは首をかしげた。


「此処は・・・何処だ?」

首をかしげつつも人気がいない事を確認しドラゴン体に戻って空から状況を確認した。

上から見たら木々や自然が殆どだが少し離れた所に多くの木造建築物と往来する人々の姿が見える。

木造建築物は住居だけでなく大きな屋敷や小さい商店も幾つか点在。

人々の衣装は男性の多くは簡素な直垂に袴姿、少数ながら水干姿の者も。

女性の多くは小袖姿で大きな屋敷にいる女性の中には十二単姿の者もいた。

グレイファスが飛ばされたのは人間界、衣装から察すると平安時代中期から後期頃の日本だと思われる。

-成程、此処は人間界。この国は日本というのか。-


地上に降り立ったグレイファスは怪しまれないように人間体に変身した。

今、身につけている衣装は某アニメの砂漠の使徒風の衣装。

「空で見た限り、この衣装は此処では違和感がある。確かこんな感じだったな。」

グレイファスは空で見た庶民の男性衣装をイメージし衣装を変えた。

今の衣装は灰色と黒を基調にした簡素な直垂と袴姿。


グレイファスは早速、エクシリオン探しをしようとしたその矢先・・・


そう遠くはない距離から殺気と邪悪な魔力を感じた。


-強い殺気と邪悪な魔力を感じる。禁術に手を染めた者特有の邪悪な気が。-


感じ取ったその時、頭上と両サイドから大量の氷の矢がグレイファスめがけて襲い掛かってきた。

「ちっ、陰険な事をしてくれる!炎よ、渦巻け・・・フレイム・ストリーム!!」

陰険な不意打ちにグレイファスは腹を立てたがすぐに冷静になり炎の術法で対処。


氷の矢を打ち出した犯人は何処かに隠れていると思われるエクシリオン。


先程の氷の矢でグレイファスはエクシリオンのいる場所をある程度まで割り出した。


「奴の居場所はある程度絞り込めたがどの方角かまではオレ様もわからん!ならば・・・コレならどうだ!!」

グレイファスは右腕を空に向けて伸ばし、人差し指を高く掲げた。


「天を揺るがす霹靂よ、大地に降り注げ!サンダースコール!!」

そう詠唱した瞬間、グレイファスのいる地点から半径1キロ圏内に雷のスコールが降り注いだ。


すると、すぐに断末魔に近い叫び声が聞こえ、グレイファスは術を使うのをやめた。


グレイファスの術法であぶりだされたエクシリオンが前からあらわれた。

「き、貴様!卑怯にもほどがある!!サンダースコールは魔族では扱えぬ強力な技、貴様どこで!?」


エクシリオンの質問にグレイファスは腕を組みながら答えた。

「エクシリオン、貴様の言うとおりこの術法は貴様クラスの魔族の術者でさえ扱う事ができぬ代物だ。」

「わかってるじゃねぇか、若造。なら、何故貴様が扱える。魔族の魔法剣士ごときが!」


エクシリオンのセリフを聞いたグレイファスは不敵な笑みを浮かべながら赤竜に変化解除。

その姿を見たエクシリオンは高笑いしながら次の攻撃術法の準備をしている。

「ふははははは!そうか、貴様が魔神世界の異端児グレイファス将軍だったとはな!!」

エクシリオンのセリフを聞いたグレイファスは怒りの感情を抑え人間体に再び変身。

「誰が異端児だと・・・。」

「魔力・戦闘能力は魔神最強クラスだが無益な殺生と婦女暴行を嫌い、正義の味方面してお節介を焼く変わり者。我はそういう奴が一番だいっ嫌いなんだよぉ!!!」


エクシリオンはそう叫ぶと術法を使いグレイファスを地面に叩きつけた。


-く、くそっ・・・こいつは普通の重力波ではない。普通ならこんなにダメージを受けぬ筈だが。まさか!!-

グレイファスはエクシリオンの術法で地面に叩きつけられた時、禁術の技だとすぐに理解。


「普通の重力波は魔神に余りダメージを与えぬ事ぐらい調査済み!我は魔界だけでなく全ての世界の覇者になる為、禁術に手を染めた。貴様に禁術の犠牲になってもらおうか!!」


エクシリオンは禁術の重力波と同時に攻撃系の禁術を生み出してグレイファスを仕留めようとしたその時・・・


彼の肉体に異変が起きたらしく、嘔吐しながら悶絶している。


恐らくグレイファスだけでなく、色々な場所で様々な人種に対して禁術を乱用したつけが回ってきたらしい。


悶絶の所為か術法の威力が弱まり、グレイファスは重力波の呪縛から解かれると

ブレスレットからクレイモアに形状の似た剣グレイシアソードを取り出しエクシリオンの肉体を斬りつけた。


しかし、仕留めた手ごたえは全くない。


「ふははははは、バカめ!我は精神体だ。光属性の術者でない限り我の体は消滅せん!!」

斬りつけたのは器の方。エクシリオン本体は斬りつけられる少し前に器から抜け出ていた。


「奴の言うとおりだ、オレ様の力では奴を消滅できぬ!だが・・・」

-消滅はさせられないが、あの術法ならば・・・。しかし、オレ様の全魔力を消耗するハイリスクな物。-

グレイファスは魔神ゆえに光属性は扱う事ができない。

しかし、消滅させる事が不可能だとしても封印と言う手段がある事を把握。

その封印の術法はグレイファス自身の全魔力を消耗するハイリスクの術法で使用する事を躊躇っている。


-奴を野放しにする位なら全魔力が回復するのに一日かかっても構わぬ!あの術法で奴を止める!!-

現在の状況と将来的状況を判断したグレイファスは全魔力を消耗してもいいからエクシリオンを封印する事を決めた。


「な、なんだ。観念して我の配下になると言うのか!?」

エクシリオンのセリフに対しグレイファスは睨みつけ指差し術法を詠唱し始めた。

「オレ様は凄く諦めが悪い性質なんでな・・・闇の力よ、悪しき魂を捕らえよ!ダークネス・ホールド!!」


グレイファスの術法が精神体のエクシリオンを捉え身動きできないように。

「し、しまった!貴様は魔神。闇属性が得意だったな。闇属性には精神体さえ拘束する物と封印する術法があったか!!」

更に全魔力を消耗してしまう封印の術法をグレイファスは詠唱し始めた。

「天と地の怒りを闇の箱に変換し悪しき魂を半永久的に閉じ込めよ、ブラックボックス!!」

グレイファスがそう叫ぶと精神体のエクシリオンは黒い箱に吸い込まれ強制的に眠らされて封印された。


黒い箱は禁術の重力波でかなり深くなってしまった所に埋められ土がかぶせられた。


グレイファスがエクシリオンを封じた場所は数百年後、高垣台という地名になり

エクシリオンの封印が解かれ再び暴走を企てる事になるのはそれは後の話。


封印で著しく体力と魔力を消耗したグレイファスは、その場で一晩眠り込んでしまった。


グレイファスは一晩眠った後、衣装を直垂+袴姿から某アニメの砂漠の使徒風の衣装に変えリターンの術法で魔界・クスハ国最北端の村に飛んだ。


エクシリオン襲撃の生存者に再び会いエクシリオンを封印した事を伝えた。

それを聞いた生存者達は大喜びをしたがグレイファスは冷静なまま。

彼が施したのはあくまでも封印、完全消滅できるのは光属性の術者だけ、とわかっていたから。


村から離れたグレイファスは使い魔を召喚し、エクシリオンに関する全ての事を記した手紙をクスハ国王に届けるように指示。


それからカリナの国に北上し試作品のクラスターソードを議事堂の門番に返却。

ここでもエクシリオンの事を伝え門番達には国家元首に近い者に消滅できる術者養成依頼の事を伝言して欲しいと伝え、その場から立ち去った。


お節介ながらも一仕事を終えたグレイファスは自身の故郷へ一度戻る事にした。

「管轄地を貰ってからは帰っていなかったが久しぶりにあそこに戻るとするか。」

グレイファスは誰もいない事を確認しドラゴン体に戻ると久しぶりに魔神世界へ帰っていった。


魔神世界ではライバルの総統候補の言葉を信じきった総統がグレイファスの処刑を命じ

ライバルの総統候補が水属性術法の得意な魔神たちを引き連れて待ち構えている。

グレイファスにとって死の罠が張り巡らされている事は彼自身、まだ知る由もなかった。

三世界の守護者達・第一部3-1

2010-09-29 23:47:14 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第二話「史上最悪の大魔道士(後編-1)」


試作品のクラスターソードを譲り受けたグレイファスは、カリナ国の議事堂前から離れ旅立っていった。

史上最悪の大魔道士エクシリオンを捕らえ消去する為に。


グレイファスがカリナの国を出た同じ頃の魔神世界では・・・

「総統、お耳に入れておきたい情報が・・・。」

グレイファスと次期総統を争っているライバルの魔神が総統のもとを訪ねていた。

ライバルは総統に会うとすぐに耳打ちをした。

耳打ちした内容はグレイファスに関する事について、かなりの尾ひれをつけ。

「あやつが、我が国の法律に背き続けているだと!?」

総統はライバルの言葉を聞いた途端、驚きと怒りが混じった口調になった。

「ご存知じゃないんですか?総統。あいつは領地を頂いた時から・・・。」

ライバルは更にグレイファスに不利になるような事を総統に話した。

それを聞いた総統は激怒し、ライバルの次期総統候補をグレイファス討伐隊長に任命し

直ちに彼を捕獲し秘密裏に処刑するよう命じた。


再び場所を魔界に戻して。


魔界にいるグレイファスは、と言うと・・・

人間体の姿で史上最悪の魔道士エクシリオンに関する情報収集と行方を追って

カリナの国を南下し隣国・クスハの領地に足を踏み入れていた。


国境近くに小さな村がある事を知っているグレイファスは人気がない事に違和感を感じている。

-おかしい、確か国境近くに村がある筈。何故人気がないんだ。-

すると、カリナの門番から譲り受けたクラスターソードの片割れが突如弱い緑色の光を複数放ち

もう一方はグレイファスが認識している村の方角を指していた。
「剣が弱く光っている・・・この剣が意味する訳はわからぬが行ってみよう!」

グレイファスは自身が認識している村の方向へ急いで向かった。


村にたどり着いた瞬間、グレイファスは一瞬言葉を失った。


村の建物の殆どが破壊され焼き尽くされており、村人の殆ども傷つき倒れて全く動かない状態。


何人かは息があるものの今に消えそうな状況だ。

-この剣にあらわれた緑の光は魔族の生命反応を意味していたというわけか。-


グレイファスは息のある者で一番近くにいた老人に薬湯を飲ませ、ある程度まで生命力を回復させた。


「お、お前さんは一体・・・。」

老人の質問に対しグレイファスは事情を話すより先に人命救助を優先させようとした。

「話は後でする。今は息のある者の救助が先だ!」


グレイファスは少しでも息のある者に薬湯を飲ませたが生命力を回復させられたのは数人だけ。


「爺さん達、一体何があった。村全体が全壊・全焼になって殆どの村人が命を落としたようだが。」

村の老人達は数時間前に起きた出来事を話し出した。


今から数時間前・・・

平和だったこの村に突如、黒装束の中年大魔道士があらわれた。

黒装束の中年はこの村の外れにある洞窟の秘宝を狙っているらしく場所を聞き出そうとしていたのだ。

村長をはじめ村人は秘法を渡す事に関しては猛反対。

それを聞いた黒装束の中年は禁術で建物を壊したり燃やしたり村人を次々に殺し始めたのだ。

「禁術を使う大魔道士!そいつはエクシリオンと名乗らなかったか!?」

グレイファスの質問に老人達は首を縦に振った。

「そいつは魔界の指名手配者だ!そいつの向かった秘宝のある場所は何処にある!!」

グレイファスの質問に老人達は奥を指差した。

「爺さんら、ありがとうな!」

グレイファスは老人達に礼を言うとエクシリオンを追って秘宝の置いてある洞窟へ向かった。


グレイファスが洞窟に向かった同じ頃、エクシリオンは洞窟の中にいた。

洞窟内は迷路になっており、そう簡単には秘宝に辿り着けないようになっている。

「くそっ、なんて所だ!ちんたらやってるなんてまどろっこしい、こうしてやる!!」

迷子になってイラついたエクシリオンは術法で何箇所か破壊した。


破壊された音は洞窟の入口に来ていたグレイファスにも聞こえていた。

「コレは破壊音!あの野郎、ここで何しやがる!!」

グレイファスはエクシリオンの声と音を頼りに洞窟の中に入って彼を追った。


洞窟に入って3分も経たないうちにエクシリオンの背後をグレイファスは捉えた。


「見つけたぜ、史上最悪の大魔道士エクシリオン!!」


グレイファスの声を聞いたエクシリオンはすぐに攻撃術法を詠唱する準備をしている。

「貴様は、カリナの議事堂前で我が禁術を相殺した!!貴様も我を追う追跡者とはな、我を邪魔する者は皆殺しだ!!!」

エクシリオンはグレイファスに攻撃術法で狙いを定めようとしたその時・・・


「馬鹿はてめぇだ!オレ様がエクシリオン、てめぇの姿を捉えて何の準備もしてないと思ったか!?」

グレイファスはエクシリオンに対し馬鹿呼ばわりすると左指を鳴らした。


するとエクシリオンの足元から大きな円が渦巻いていた。

「き、貴様!一体何をする!!」

エクシリオンの問いにグレイファスは答えた。

「此処でドンパチされても困るんでな、異世界に貴様を飛ばす!オレ様だけの術法アンチェインドでな!!」

アンチェインドはグレイファス専用の術法で自身や敵を今いる場所から異世界へ飛ばす術法。

「何だと!?」

「もっとも何処に飛ばされるかはオレ様も知らん。彼の者を異世界へ飛ばせ!アンチェインド!!」

グレイファスはエクシリオンを違う世界に飛ばし、自身も次元の穴に飛び込んだ。


飛ばされる場所は何処になるか術者のグレイファスさえ全く知らなかった。

三世界の守護者達・第一部2

2010-09-09 16:30:07 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

第一話「史上最悪の大魔道士(前編)」


魔神世界ではグレイファスを次期総統にしないように彼の事を快く思っていない

ライバルの総統候補が掟を利用した罠を張り

現在の総統にグレイファスを候補から外し反逆者として処刑するように画策している。


その頃、グレイファスは赤竜の姿で新たな情報を得るために魔界上空を飛んでいた。

将軍と言う立場ゆえに誰も文句を言わないが殆どの者はグレイファスの行動を快くは思っていない。

それもそのはず、階級に関係なく殆どの魔神は自分達が全ての支配者だと思っているから。


飛んでいる上空から下を見下ろすと白い景色が多く見られる。

地上の季節は冬(あるいは夏でも高地ゆえに雪がとけないのかもしれないが)なのだろう。

とある国の上空でグレイファスは邪悪な気配を感じた。

邪悪な気配の正体はとある国の大きな建物の上で放つ黒い炎。

術者は黒装束姿の魔族、性別等はグレイファスのいる上空ではわからない。


邪悪な気を帯びた黒い炎は赤竜グレイファスのいる上空に向かってくるではないか!

-何、こっちに向かってくるだと!?得意ではないアレをぶつけるしかないな!!-

グレイファスは判断すると邪気を帯びた黒い炎に彼自身が得意ではないアレをぶつけた。


すると黒装束の魔族の放った黒い炎とグレイファスの放ったアレが水蒸気爆発を起こした。


水蒸気爆発を起こした、と言う事はグレイファスの言っていた得意ではないアレというのは水属性攻撃の事。

種族の問題で光属性は扱えないが、それ以外の全属性の攻撃術法は扱える。

ただ、得手・不得手があり水属性は彼自身は得意とはしていない。


水蒸気爆発の衝撃でグレイファスは弾き飛ばされ叩きつけられようとしていたが

咄嗟の判断で人間体になり風の浮遊術法キリュウを自身にかけて建物の前に降り立った。


降り立つ直前、グレイファスは黒装束姿の魔族の姿を見た。

黒装束の魔族は人間の外見年齢に置き換えて40歳前後の男性。

すれ違いざまに魔族は口パクでグレイファスに対してセリフをはいた。

-禁術ヘルファイアを相殺するとは・・・面白い、今度会ったら我の禁術で貴様を倒す!-


降り立った場所は一面が銀世界という事は此処一帯の季節は冬なのだろう。

大きな建物の前には門番が二名、瀕死の状態で倒れていた。

「しっかりしろ!まさか黒装束の野郎にやられたのか!?」

グレイファスは攻撃術法は扱えるが回復術法は扱えない為、常に薬類を所持。

瀕死の状態でも完治する薬草を煎じた薬を門番二人に飲ませた。


「う・・・」

暫くすると二人の門番は気がつき目を覚ました。

二人とも倒される以前の記憶しかなく少しの間混乱状態。


「一体、何があった。それから此処はどこだ。」

高くもなく低くもないグレイファスの声が聞こえた瞬間、門番達は我に帰ったのだ。


グレイファスは門番達に旅の剣士と偽り爆発音が聞こえ此処まで来たら二人が倒れていたと説明した。


門番達がグレイファスに場所と事情を説明した。

「此処はカリナ共和国の議事堂・・・政治を執り行う場です。」


-カリナ・・・魔界最北端の国。そういえば200年前に起きた伝染病で民の半数以上が亡くなり王家の者も全員亡くなった為に共和制へと移行した国だ。-


「我々を襲ったのはエクシリオンという名の大魔道士。現在、魔界全土で指名手配となっている。」

先程、グレイファスに挑発的なセリフを口パクで言った黒装束の男の名はエクシリオン。

「エクシリオン、確か名前を聞いた事がある。光・闇属性を除いた属性全ての攻撃術法を極め魔界で三本の指に数えるほどの実力の主。何故指名手配になった。」

門番Bが人づてに聞いたエクシリオンが指名手配犯になった経緯を話した。


「ある方から聞いた話なのだが・・・」

エクシリオンは、元々この国の出身でシャーマン出身の女性賢者に一目惚れしてしまった。

しかし、女性賢者には他国に傭兵として出稼ぎに行っている幼なじみと既に婚約している。

その事実を認めようとしないエクシリオンは婚約者から女性賢者を略奪する為に禁術に手を染め

禁術で殺人ウイルスを作り出して多くのカリナ国民を死に至らしめたそうだ。

エクシリオンが一方的に思い続けた女性も作った本人も命を落とした。

肉体は滅んでしまったが他人の肉体を乗っ取って悪事の限りを尽くしているのだと。


「オレはこんな噂を聞いたぞ。」

と、門番Aが別の人間から聞いた噂話を話し始めた。

エクシリオンが女性賢者に片思いしていた話は門番Bと同じだが

純粋に強い術法を求める余りに禁術に手を染め魔界全土を征服する為に暴走。

その代償で命を落としたが他人の体を乗っ取って悪事を続けているらしい。


「ところで魔界各国はそんな危ない野郎を野放しにしているのはどうしてだ!?」

門番達の話を聞き終えた後、グレイファスは疑問を二人にぶつけた。

グレイファスの質問を聞いた門番達は表情を沈ませて答えた。

「魔界各国も兵士や魔道士達を派遣しているものの力量が違いすぎるんです。」

魔界全土でもそんな危ない者を野放しにするわけにはいかず討伐の動きがある。

しかし、魔界全土で兵士達を派遣したが全員返り討ちに遭い殺され手を焼いている模様。


相手は禁術に手を染めた高いレベルの術者、能力的に中途半端な兵士や術者は確実に命を落とす。


門番達の話を聞いたグレイファスは怒りを押さえ込み平静な態度を装った。

「いずれにしてもエクシリオンという野郎は史上最悪の大魔道士だという事がよくわかった。」

と、グレイファスは議事堂前から立ち去ろうとしていた。


「話を聞いて無視できるほどオレ様は薄情じゃない。これ以上あいつを野放しには出来ぬ。」

彼が立ち去ろうとしたのはエクシリオンの悪事を食い止める為。


グレイファスの態度を知った門番Bは二本の中型の剣をグレイファスに渡した。

「クラスターソードと呼ばれる剣で生命力に反応する金属を使用しています。まだ試作品ですが。」


門番Bがグレイファスに渡した剣はクラスターソードと呼ばれる剣。

この剣には生命力に反応する金属が使われており反応すると光を放つもの。

但し、試作品の段階で門番Bでは扱いきれない。(実際に完成し武器として出回ったのは、数十年先)


クラスターソードを譲り受けたグレイファスは、カリナ国の議事堂前から離れ旅立っていった。

史上最悪の大魔道士エクシリオンを捕らえ消去する為に。

三世界の守護者達・第一部1

2010-09-03 22:43:31 テーマ:三世界の守護者達・本編 posted by orimitsukao

この作品は三部又は四部構成になる予定ですが

グレイファス編に限り完全版での掲載は不可能です。

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プロローグ「プライド高き戦士」


現代からさかのぼる事、約1000年昔・・・

人間界ではない他所の世界、緑豊かな小さな村が数多く存在している。

一見平和そうに見える村々だが自称全世界の支配者・魔神が支配する土地。

そこは村の民が言われもなき拷問を受け、若い娘は手篭めにされてしまう。


但し、ある男が統括する特定の地域を除いては・・・。


此処はとある魔神が統括する管轄地にある小さな村。


女性の悲鳴が村のはずれでむなしく響く。

栗色の髪を肩まで伸ばした15歳位の少女が余りの恐怖で腰を抜かして動けない状態でいる。

右肩の衣服が少しだけ破れて肩が露出している。


怯えて動けない少女の前には見た目が鬼にそっくりな化け物が二体。

鬼にそっくりな化け物は下級魔神で魔神世界の中では身分も能力も最低ランク。


下級魔神達が少女に襲い掛かろうとしたその時・・・突如動けなくなってしまった。


「体が動かん!!」

「だ、誰だ!」

一体の魔神が下を見ると影に黒い刃の短剣が一本ずつ刺さっていた。


「シャドウダガーは影に刺さると金縛りの効果を発揮する。貴様ら、オレ様の管轄地でいい度胸をしているな。」

と、高くもなく低くもない威圧的な声が下級魔神・二体の背後から聞こえる。


下級魔神達が振り返るとかなり背が高いが細マッチョ、クリムゾンレッドの長い髪を襟足で束ねた剣士が腕を組んで立っている。

剣士の外見は25歳位で衣装は、まるでとあるアニメに出てくる砂漠の使徒のような感じだ。


「娘よ、早く逃げろ。」

剣士の声に反応した少女は一礼をすると走ってこの場所から立ち去っていった。

「あ、ありがとうございます!」


村人が無事逃げた事を確認するとクリムゾンレッドの髪の剣士は二体の下級魔神に刺さっていた短剣をぬき

自由にした瞬間、下級魔神達の顔とみぞおちを拳で殴りつけた。


「何をしやがる!人間の分際で!!」

殴られた下級魔神達は地面に叩きつけられ剣士に反撃をしようとしたその時・・・

「ちょっと待て、あの剣はグレイシアソードだ。あの剣士はまさか・・・」

下級魔神の一体は剣士の持っているクレイモアにそっくりな剣を見た瞬間、青ざめ腰を抜かした。


「ひぃっ!あ、貴方様はグレイファス将軍!!」

「グレイファス将軍って・・・我が国最高幹部の一人で次期総統筆頭といわれる!?し、失礼しました!!」

剣士の正体が魔神世界最高幹部の一人グレイファス将軍だと知った下級魔神達は土下座をした。


「貴様ら誰の配下だ!?だがコレだけは言わせてもらう。」

下級魔神からグレイファス将軍と呼ばれた剣士は少し間を置いて二体の下級魔神を睨みつけ威圧的な声で釘をさした。

「・・・オレ様の管轄地に来た同胞は罪人以外の無益な殺生と婦女暴行する事は罷りならん!!

もしこの警告を無視し行動を起こしたら容赦なく、このグレイシアソードの餌食となる。」


グレイファスはそう言い捨てると赤竜の姿になって立ち去っていった。


剣士はグレイファスの仮の姿で赤竜と呼ばれる赤い体のドラゴン体が本来の姿だ。


それから数時間後・・・グレイファスによって散々な目に遭った下級魔神達は本来の主の元に帰った。

その際にグレイファスの行動を密告した。


「我々魔神は全ての世界の支配者、特に総統は何をしてもよい。

だが、このままではグレイファスが次期総統におさまるだろう。それを阻止しなくてはならん!」

下級魔神達の主は次期総統候補の一人でグレイファスのライバル。

ライバルの総統候補のセリフを聞いた側近がグレイファスの事を耳打ちした。

「御前、グレイファス将軍は重大な犯罪を犯しています・・・。」

「あやつめ一人も女を手篭めにしていないだと!そうか・・・ならば、あの掟を拡大解釈して、あの男を陥れ追放する事ができる!!」

グレイファスの行動を良く思っていないライバルの次期総統候補が

魔神世界の掟を利用した罠でグレイファスを貶めようと密かに企みはじめた。

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