2010年12月2日2時11分
三井物産が権益を取得したペルーのリン鉱山。リン鉱石が船積みされる=三井物産提供 |
三井物産が参画したペルーのリン鉱山。ベルトコンベヤーで、港で待つ船までリン鉱石を運ぶ=三井物産提供 |
資源メジャーが目を付けないはずはない。英豪資源大手のBHPビリトンは今夏、カナダ肥料大手に約400億ドル(約3兆3500億円)規模の敵対的な株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた。カナダ政府は国益に反するとして国内法に基づきTOBを拒否した。
米国はすでに1990年代後半からリン鉱石の輸出を徐々に止め始めた。資源の囲い込みを図る「資源ナショナリズム」がうごめく。
■日本商社、権益確保へ
日本は、リン酸もカリウムも原料をすべて輸入に頼る。08年の肥料暴騰以降、農林水産省も価格動向に神経をとがらせ、経済産業省では備蓄論もささやかれたといわれる。
対応し始めたのが商社だ。三井物産は今年4月、ペルーのリン鉱山の権益を、ブラジル資源大手バーレから取得すると発表。日本企業としては初めて、肥料資源の権益確保に乗り出した。肥料資源事業室の小島洋之室長は「原料で寡占が進めば、値上げを突きつけられた時にのまざるをえない。日本向けに安定確保するためにも、新興国に供給して事業をするためにも、権益を確保した」と話す。
住友商事など他の商社もカリウムの権益確保を探っている。肥料メーカーに目を移すと、構造改革が遅れ、非効率が温存されたままになっている。日本には肥料メーカーが約30社あるとされる。統廃合が進まず、国際競争力のあるメーカーも育ってこなかったとの指摘は多い。「原料を買う力が落ちれば、日本はいずれ、高いものしか買えなくなる。農業経営が難しくなってくる」(商社関係者)事態も予想される。(神谷毅)