北朝鮮砲撃:「戦争が起きる」と脅す太陽主義支持者

 先月23日、北朝鮮が延坪島に無差別砲撃を加えたというニュースが伝わると、市民は「今回は北朝鮮に必ず制裁を加えるべきだ」と憤りながらも、一方では「このままでは戦争になるのではないか」と動揺した。

 公務員のキム・ジンホンさん(47)は「なぜいつもやられてばかりなのか。北朝鮮が100発撃てば、1000発撃ってこらしめるべきだ」と怒りを爆発させた。しかし、主婦のイ・ヨンスクさん(64)は「このままでは本当に戦争が起きるのではないか」と不安に震えた。

 民間人まで無差別に殺傷した北朝鮮の挑発について、大半の市民は、政府に北朝鮮に対する強硬な軍事的、経済的対抗措置を求めながらも、もしや今回の事態が全面戦争に拡大するのではないかという不安を抱いていることが、民間シンクタンクの調査で分かった。

 峨山政策研究院がこのほど行った世論調査によると、国民の80.3%は今回の延坪島砲撃当時、「韓国軍がもっと強硬な軍事対応をすべきだった」と答えた。しかし、北朝鮮の再挑発に対し、「あらゆる軍事力を動員し、軍事的制裁を加えるべきだ」と答えた回答者は25%にすぎなかった。

 野党や親北団体など「太陽主義」(北朝鮮との融和政策)支持者は、こうした世論を巧妙に悪用し、北朝鮮に強硬に対応すべきだという世論が強まるたびに、「戦争危機論」というカードを取り出している。民主党、韓国進歩連帯などは先月30日の記者会見で、「延坪島砲撃事件以降、韓半島(朝鮮半島)に戦争の危機が高まっている。これ以上の武力衝突は戦争を引き起こし、国民の苦痛を拡大させる」と戦争危機論を改めて主張した。

 今年3月の哨戒艦「天安」爆沈事件のときも、国民の10人に6人は政府による対北朝鮮制裁と追加挑発時の「軍事的報復」を含む自衛権発動に賛成した。しかし、太陽主義支持者は「戦争をしようというつもりか」と反発。民主党、民主労働党など野党は6月の統一地方選挙で、「戦争か平和か」「ハンナラ党が勝てば戦争が起きる」などと不安や恐怖をあおる選挙戦略を取り、ハンナラ党は惨敗した。

 これについて、康元沢(カン・ウォンテク)ソウル大教授(政治学)は「北風(北朝鮮の脅威による影響)は戦争の可能性へと拡大解釈され、徴兵対象となる20-30代の不安感が高まり、平和的な政策が支持を得た」と分析した。

 しかし、戦争の恐怖にとらわれ、北朝鮮の挑発に強硬に対応できないのは敗北主義だという指摘もある。洪斗承(ホン・ドゥスン)ソウル大教授(社会学)は「当然、北朝鮮に制裁を加えるべきだと思うが、戦闘拡大リスクのせいでためらう人が一部いる。戦闘拡大を恐れ、適切な措置や報復を行わないことは、行き過ぎた敗北主義だ」と指摘した。

アン・ジュンホ記者

【ニュース特集】北朝鮮砲撃、緊張高まる韓半島

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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