2050-05-03
2010-12-02
観ることは止まることである
観ることは止まることである。これ止観の謂われか。ハイデガーは存在論から時間を捉え直し、過去−現在−未来という固定的な時間観に一撃を与えた。20世紀哲学最大の衝撃といわれた『存在と時間』(1927年)が未完に終わっている事実からも、どれほど巨大なテーマか理解できよう。一方、科学の世界ではアルベルト・アインシュタインが特殊相対性理論をもって、空間と時間が絶対的なものではなく、観測者の位置(速度)によって異なる事実を明らかにした。時速50kmで車に乗っているとしよう。自動車内部からは時速50kmのスピードで風景が後ろへ走り去ってゆく。この時、自分は止まっているのだ。速度を観測できるのは、外で立ち止まっている人に限られる。時速20kmで走っている自転車から見れば、自動車のスピードは30kmとなる。
ここで問題となるのは一念三千と一生成仏との整合性である。なぜなら一生にも相対性があるからだ。3歳で亡くなる子もいれば、100歳で死ぬ人もいる。両者を一生成仏という言葉で括れるはずがないのだ。ここで愚かな連中は『人間革命』第3巻に書かれた和泉さんの体験を引き合いに出すことだろう。お前らは、死ぬまで他人の体験を語りながら自分の人生を置き去りにするがいい。
子が亡くなった事実を親がどう解釈するかということは全くの別問題だ。私は「物語」の話をしているわけではない。
コンピュータの誕生によって学問の分野は飛躍的な前進を遂げた。膨大なデータを収集し、アルゴリズムを加え、演算を施し、情報を処理する。チューリングマシンの概念が発表されたのは1936年のこと。コンピュータの発達によって複雑系という分野も生まれた。
既に因果という概念が揺らいでいるのだ。それにしては危機感を抱いている人が見当たらない(笑)。
一生成仏は日蓮が与える立場で説いた可能性は否定できない。だがそれでは調機調養以下のレベルに堕してしまう。当然、「即」の飛翔性も失われる。
三国四師って眉唾じゃないのか? と思っていたのだが、今調べたところ「顕仏未来記」は真蹟曽存だった。実は個人的に最澄(伝教)が好きじゃないのだ(笑)。
とすると、ブッダ−天台−最澄−日蓮と脱構築が行われてきたという意味になろう。真理は一つであるが表現は異なる。なぜ異なるのか? 社会と時代の様相が変化しているからだ。つまり時代と社会によって、脳の回路が違っているのだ。
日蓮が自らを含めて三国四師を高らかに宣言したのは、流刑地の佐渡においてであった。社会で広く認知され、成功を収めてからのことではない。
観心の本尊を見つけた人っている? 私はまだだ。
提婆達多の真実
通説によれば、釈迦を殺そうとした悪人デーヴァダッタは、最後には、生きながら火焔に包まれて、「無間地獄」へ落ちて行ったとされていますが、釈迦の没後900年頃、経典を求めてインドにおもむいた法顕(340?-420?)が、その見聞録(『法顕伝』)の中で、調達(デーヴァダッタ)派の仏教僧団がネパール地方にあったと述べており、また、玄奘(600-664)も、その著『大唐西域記』の中で、ベンガル地方に提婆達多派の仏教僧団があったと述べていますから、釈迦の没後の後継者争いに敗れたデーヴァダッタが、彼の僧団をひきいて辺境の地に逃れ、バラモン階級出身者の手にその主導権がにぎられた中央の『正統派仏教僧団』からの激しい迫害と常に闘いながら、かなり長年月の間、生きながらえて、強烈な感化を及ぼしたことも、充分に考えられるのであります。そして、この釈迦の正統な後継者と称する中央の仏教僧団への反抗が、釈迦への反感や軽侮を産み出したようであり、大乗仏教で、釈迦の在世中に直接釈迦から説教を聞いた弟子たちが「声聞」(sravaka シュラヴァカ)――釈迦の声を聞いた者――と軽侮されて、最下位に置かれ、誰の声も聞かずに、独自の方法でさとった者たちが「独覚」(pratyekabuddha プライエティカブッダ)と呼ばれて、その上に位置し、更に、その上に、仏陀の声を聞いてさとりを求める者としての「菩薩」が置かれているのもそのためであると推定されます。
2010-12-01
あからさまな金持ち優遇税制
かつて19区分、最高税率で75%もあった所得税の累進課税の仕組みは、1980年代半ばから緩和され続け、99年からの8年間はわずか4区分、最高税率37%という状況に至った。年間所得が100億円の人と1800万円の人の税率は同じであり、1000万円に満たない人ともあまり変わらないという、あからさまな金持ち優遇税制だ。
表には含まれていないが、この間には住民税の累進課税も大幅に緩和された。14区分だったものが89年までに3区分(5%、10%、13%)となり、2007年にはこれも廃止されて一律10%の完全フラット化。年間所得100億円の人も100万円そこそこの人も、課される税率は同じだというのが現状なのである。
かくて所得税の所得再分配機能は消失し、1991年度のピーク時には26兆7000億円あった税収も2009年度は12兆8000億円へと半減した。偶然ではもちろんない。
財界の主導で進められた規制緩和、構造改革の、これも一環だった。
【『消費税のカラクリ』斎藤貴男(講談社現代新書、2010年)】
2010-11-28
精神は信念によって自分自身を欺く傾向がある
人は当然ながらすべての信念を疑うべきである。なぜなら精神は、とりわけ信念によって自分自身を欺く傾向があるからである。事実、精神の欺瞞への能力はとてつもないのである。人間は、その飽くことなき心理的安定の追及において神格を発明し、それらに不死という属性を付与したとき、もっともおのれ自身を欺いた。同様にして、人間はその肥沃な想像の土壌に霊魂の概念を育み、そして彼はおのれの発明に永遠性を与えることによって、ただちにそれを防御した。
2010-11-27
認知バイアス
ある仮説や考えを好むことによって、私たちが考慮する情報の質ばかりか、量にまで影響が及ぶことがふつうである。ある好みの仮説を持っているとき、初めに手にした情報がその仮説に合致していれば、私たちはそれで満足してしまい、それ以上の情報を求めようとしないものである。ところが、初めに仮説に反するような情報に出会った場合には、より都合の良い情報を求めて情報収集を続けることになる。あるいは、初めの情報が間違っていることがわかるようなさらなる情報が求められる。「好きなところで情報収集を打ち切る」というこうした都合のいい方法を用いることにより、私たちは自分がそうであって欲しいと考えることに対する満足のいく情報を捜し出す機会を飛躍的に高めることができるのである。
【『人間この信じやすきもの 迷信・誤信はどうして生まれるか』トーマス・ギロビッチ/守一雄、守秀子訳(新曜社、1993年)】