滋賀県米原市で交際相手の会社員、小川典子さん(当時28歳)を雑排水槽に落とし殺害したとして殺人罪に問われた会社員、森田繁成被告(41)の裁判員裁判は22日、大津地裁(坪井祐子裁判長)で論告求刑公判があり、検察側は「非道極まる犯行。被害者を冒〓(ぼうとく)するうそを重ね、罪を免れようとしている」として無期懲役を求刑した。弁護側は無罪を主張し、結審した。被告の自白調書はなく、裁判員は有罪か無罪かの難しい判断を迫られる。判決は来月2日。
検察側は論告で、被告が不倫相手の小川さんとトラブルを抱え、不倫を暴露されることを恐れて強い殺意を持ったと指摘。殺害時間帯に小川さんと会った▽被告の車に小川さんの血痕が付着▽殺害現場近くで似た車が目撃された▽事件後、車の洗浄を頼み、フロアマットも隠した▽携帯電話のデータを削除--などの状況証拠を挙げ、「犯人であることは明らか」と主張した。
弁護人は最終弁論で、大阪地検特捜部による証拠改ざん・隠ぺい事件などを挙げ、「無罪推定の原則を考えて評議してほしい」と裁判員に語りかけた。
その上で、交際は順調で殺害の動機がない▽失踪(しっそう)当夜に会ったが、小川さんは被告の車を運転して1人で走り去った▽車内の血痕は小川さんの鼻血--などと反論。森田被告は「真犯人に怒りと憎しみが込み上げてくる。私を家族のもとに帰してください」と訴えた。
論告によると、被告は昨年6月10日午後9時~11日午前1時ごろ、米原市伊吹の雑排水槽付近で、小川さんの頭を鈍器で多数回殴るなどして重傷を負わせ、雑排水槽に落とし汚泥吸引により窒息死させた、とされる。【加藤明子】
毎日新聞 2010年11月23日 大阪朝刊