一緒に飲んだグループのリーダーが、海老蔵に顔を殴られ全治約2週間のけが−。この証言が事実で、示談が成立せずリーダーが被害届を出すなどすると、被害者だった海老蔵は一転“加害者”として捜査対象となる。
日大名誉教授(刑法)の板倉宏氏(76)は「当然ながら傷害容疑に問われる。ただ、負傷程度が重くなく、逃走したり証拠隠滅したりする恐れもないので、逮捕には至らない」と指摘。「書類送検されて略式起訴、罰金30万円程度に処せられるのでは」とみる。
罰金刑とはいえ、刑事事件として摘発されることに変わりはない。この場合、歌舞伎界への悪影響は計り知れない。
海老蔵が座頭を務める来年1月公演「初春花形歌舞伎」(東京・ル テアトル銀座、1月3〜25日)は、現時点では予定通り上演される。公演主催の松竹は海老蔵が殴っていた場合の興行について、「そのような報告を受けていないのでコメントできない」と慎重に回答。ただ、演劇関係者は「一般的に考えても、舞台に上げるわけにはいかない。謹慎処分は免れないだろう」と指摘する。
05年1月に歌舞伎俳優の中村七之助(27)がタクシー料金を巡るトラブルで警官を殴り、公務執行妨害で逮捕(起訴猶予処分)された。七之助は2カ月謹慎、同3月に上演された父の中村勘三郎(55)の襲名公演に出演できなかった例がある。
経済的損失も大きい。1月公演は成田屋のお家芸「歌舞伎十八番」を披露する、いわば海老蔵のための公演。公演自体が中止になれば「数億円の損害」(同関係者)が出る。仮に海老蔵の休演が決まると、海老蔵目当ての客が多いため、キャンセルは増えそうだ。
さらに、海老蔵が出演する伊藤園「お〜いお茶」、ヤマキ「めんつゆ」、ピップ「ピップエレキバンZ」のCMが中止となれば、その損害は5億円といわれる。他に撮影済みの主演映画の公開時期などにも影響が広がることも予想される。海老蔵に与えるダメージは計り知れない。