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【社会】

あなたの感動、みんなで共有 「コレクター」街頭で活動中

2010年12月1日 夕刊

帰宅途中の高校生から話を聞く臼井さん=名古屋市熱田区の金山総合駅南口で

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◆ネットも活用、100万話目標

 道行く人から感動したエピソードを聞いて回る一風変わった男性が、名古屋市のJR・名鉄金山総合駅前にいる。自称「感動コレクター」。話を聞かせてもらう代わりに、他人の感動話をプレゼントする。「誰かの感動をみんなで共有すれば、世界中が幸せになるはず」と信じて。

 夕方の同駅南口の広場で、家路へと急ぐ人を男性が呼び止める。「何か感動した話を聞かせてくれませんか。お礼にほかの人の感動した話をまとめた冊子をお渡ししますから」

 男性は臼井良介さん(29)=愛知県常滑市。昼は高校で英語の非常勤講師をしている。仕事の後や休日を利用して週1〜3回、駅前に繰り出す。

 活動のきっかけは、大学時代に自己啓発セミナーに参加したこと。「寄生虫」とあだ名を付けられていじめられ、カッターナイフを左手首に当てるまで追い詰められた中学時代を思い返し、「生きているのは当たり前のことじゃない。感動すべきことなんだ」と気付いたという。学生時代からギターでの路上ライブを続けていたこともあり、駅前で感動と感動を交換する取り組みを思いついた。

 昨年8月に活動を始め、これまでに約2100人から話を聞いた。臼井さんの当面の目標は、100万人の感動話を集めること。路上だけでは難しいため、インターネット上のコミュニティーサイト「ミクシィ」や「マイスペース」を活用し、海外からの書き込みも募る。

 「誰かの感動がほかの人を感動させる。そんな幸せのサイクルを築いていければ」

 これまでに聞いた話と、今後の路上での活動予定はネット上に公開している。「感動コレクター」で検索。

 (多園尚樹)

◆集めた感動話の一部

 中学3年の卒業式の前日、おじいちゃんが亡くなった。直前に病院に会いに行ったけど、しゃべれる状態じゃなくて。数日後、手紙が届いた。差出人はおじいちゃん。生前、病室で書いたみたい。「受験、頑張りなさい。大丈夫」。私は暗くて沈んでいたけど、おじいちゃんに元気をもらえた。

    ◇

 高校球児だった。夏の県大会の準決勝で、後に甲子園出場を決めた高校に負け、悔しくてマウンドで泣いた。でも、その後、おふくろが僕の胸ですごい泣いてて。その時に気付いた。僕が流した涙は、自分のためだけのものだったけど、おふくろは人のことを思って泣いてる。すごいなって思った。それまで近くにいたのに大切にしていないことに気付き、これからは大切にしようって決めた。

    ◇

 中学の同級生にKといういじめられっ子がいた。一緒に遊んでいたおれだけが友達だった。高校時代に大げんかした。おれが悪かったのに、めちゃくちゃひどいこと言って、携帯電話のアドレスを消して連絡を取らなくなった。

 ある日、家に帰ったら母親が「K君が亡くなったそうよ」。けんかの直後に病気になり、亡くなったという。本当に後悔した。葬式に行ったらKが入院中に書いた手紙があった。「僕は友達が少なかったけど、1人だけとても仲の良い友達がいて、本当に楽しかった」。けんかのことは何も書いてなかった。棺おけのKの顔を見て、号泣した。「もう一度会わせてほしい。もう一度、一緒に遊ぼう。お願いだから、また顔を見せてくれ」

 

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