結婚・出産後に復帰した船山弓枝(左)、小笠原歩(中)と若いメンバーの吉田知那美が新チームの設立を11月上旬に発表。北海道銀行が全面バックアップするという

チーム設立ラッシュの女子カーリング。
なのに……ソチ五輪出場がピンチに!!

生島淳 = 文 ⇒この著者の記事一覧

text by Jun Ikushima

photograph by NIKKAN SPORTS/AFLO

チーム設立ラッシュの女子カーリング。なのに……ソチ五輪出場がピンチに!!

関連アスリート・チーム:

チーム・選手名
小笠原 歩
船山 弓枝
本橋 麻里

躍進著しい中国のなりふり構わぬ強化策。

 アジアの情勢を見ると、中国はバンクーバー・オリンピックで銅メダルを獲得しており、すでに世界のトップレベルの実力を示している。実は中国チームの面々は、ショートトラックで国家代表になれなかった選手たちをカーリングに転向させ、長いキャリアが必要とされるこの競技で10年足らずの間に世界選手権で優勝するまでに育て上げているのである。その背景には徹底したカナダでの合宿生活など、国家のスポーツに対する非常に手厚いバックアップがある。だからこそ中国は短期間で世界でもトップクラスのタイトルを手にすることが出来たのだ。

 中国のカーリングは他競技のアスリートを転向させたものであり、草の根に土台を置くカーリングではない。事実、中国では一般の人たちがオリンピックを見てカーリングを始めようとしても場所がない。それは韓国も同じで、メダル獲得戦略上、トップダウンでカーリングの強化が進められてきたのである。

 実はこうした動きを快く思わない欧米の論調もある。カーリングの強豪国であるカナダやヨーロッパの選手たちを見ると、多くの選手たちがフルタイムの職業を持っているのである。バンクーバー・オリンピックで金メダルを獲得したノルベリ(スウェーデン)は、保険会社のリスク算定士であり(いかにもカーリングのスキップらしい!)、私が世界でいちばん好きなスキップ、カナダのジェニファー・ジョーンズは弁護士だ。

 欧米のカーリング界では、中国や韓国のようなメダル至上主義は馴染まないのである。

来年パシフィック選手権で確実に2位以上になれるのか?

 では、日本の状況をどう考えたらいいのだろう? 

 今回のパシフィック選手権に関して言えば、中国と韓国相手には1勝もあげることができなかった。

 今年の日本選手権に優勝し、パシフィック選手権の出場権を得ていたチーム青森から、中心選手だったスキップの目黒萌絵、サードの本橋が抜けた状態でアジアのライバルと伍するのはむずかしかったと思う(同チーム内で3人のメンバーが残っていれば権利は保持されるので大会には出場できたのだが……)。スキップとサードが抜けたチームというのは、まったく別のチームと言ってもいいくらいだ。

 現状、日本では様々なチームが出来たことで、力が分散してしまった印象がある。国内で活性化していることは間違いないのだが、国際的な視点に立つと日本の代表チームは弱体化している。

<次ページへ続く>

【次ページ】 五輪に出られなくなると途端に人気が冷める可能性も。

筆者プロフィール

生島淳

生島淳

1967年気仙沼生まれ。早大卒。NBAやMLBなど海外ものから、国内のラグビー、駅伝、野球など、全ジャンルでスポーツを追うジャーナリスト。小林信彦とD・ハルバースタムを愛する米国大統領マニアにして、カーリングが趣味(最近は歌舞伎に夢中)。

著書に『慶応ラグビー「百年の歓喜」』(文藝春秋)、『大国アメリカはスポーツで動く』(新潮社)、『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)など。『BSベストスポーツ』(NHK・BS1毎週日曜21:10~)、『生島淳のアクティブスタイル』(TBSラジオ毎週日曜正午~)にも出演中。


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