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【揺らぐ巨大組織 山口組壊滅作戦(上)】狙い通りトップ3人不在

 ようやく空が明るくなり始めた1日午前6時32分、大阪府豊中市。閑静な住宅街に構えた自宅で捜査員から令状を示された男は、淡々とした様子で逮捕に応じた。指定暴力団山口組のナンバー3である総本部長、入江禎(ただし)(65)。「逮捕しようと思えば、もっと早くできた」(大阪府警幹部)。時機をうかがい続けてきたターゲットを、大阪府警がついに捕らえた瞬間だった。

ナンバー3・入江容疑者逮捕

 これに先立つ11月18日早朝、新神戸駅近くの住宅街の一角を異様な緊張感が覆っていた。1軒の住宅を、京都府警を中核とした捜査員約140人が取り囲む。やがて数人が屋内に踏み込むと、山口組ナンバー2の若頭、高山清司(63)は配下の組員がぐるりと周囲を固める中央にじっと座っていた。みかじめ料名目で4千万円を脅し取ったとする恐喝容疑の逮捕状が読み上げられると、ただ一言、「そんなの関係ない」と答えたという。

 神戸市を本拠地とする山口組では代々、関西を地盤とする最高幹部が運営の実権を握ってきた。しかし、平成17年7月に6代目組長となった篠田建市(68)=通称・司忍=は、自身の出身母体で名古屋市が本拠である弘道会会長の高山を若頭に登用。「非関西」ということだけでなく、同一組織の出身者がナンバー1、2を占めたのも山口組の歴史で初めてだった。しかもこの年の末、篠田は銃刀法違反罪による懲役6年の刑が確定、収監されトップ不在となる。

 だが高山は異例づくしの状況に、強引ともいえる手法で臨んだ。不満分子とみられた直系組長らを相次いで絶縁。篠田の代理として巨大組織を取り仕切ってきた。

 一方の入江は高山の若頭就任と同時期に総本部長に就任。弘道会が勢力を急速に伸長させていく中、「関西代表」として他の直系組長らとの間の緩衝材としての役割も担ってきた。

 高山の逮捕後は幹部の間に広がる動揺を収拾。高山に代わって山口組を切り盛りしていくとみられていた。その矢先の逮捕について、冒頭の大阪府警幹部は言う。

 「京都府警が高山を逮捕するのをずっと待っていた。入江を逮捕するなら、実質トップになってからの方がはるかに組織に与えるダメージは大きいやろう」

   ◇

 来年4月に迫る篠田の出所を前に山口組の弱体化を目指す警察当局は、トップの3人を不在にする状況に追い込んだ。両者の攻防を追う。=呼称略(山口組取材班)

9年間で報奨金2400万円

 山口組ナンバー3の宅見組組長、入江禎容疑者(65)=暴力団対策法違反容疑で逮捕=らが抗争事件で服役中の傘下組員(60)に報奨金を渡していた事件で、この組員が受けとっていた報奨金は、服役が始まった平成12年12月からの約9年半で計2435万円に上ることが1日、大阪府警捜査4課への取材で分かった。組員は抗争事件後、傘下組織の副組長に昇格しており、「ヒットマン」への手厚い功労体制が明らかになった。

 20年8月に施行された改正暴対法は、抗争事件で刑を受けた組員を賞揚するために組長らが金品などを渡す行為を禁止しているが、宅見組側が施行前の同年5月、服役中の複数の組員に計約9200万円を一斉に送金していたことも判明。府警は摘発逃れのため、駆け込み的に報奨金を与えたとみて調べる。

 また、府警は1日、暴対法違反容疑で、宅見組幹部、柳沢昌行(43)と宅見組傘下組織組長、玄正吉(57)の両容疑者も逮捕。逮捕状を取っている別の2人の行方を追っている。

 府警によると、入江容疑者ら逮捕された3人は「金を渡していたのは知らない」と否認している。

 逮捕容疑は、20年10月、府公安委員会から服役中の組員に金品などを渡すことを禁じる命令が出されたにもかかわらず、20年11月~22年4月、組員側に計390万円を供与したとしている。
 

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