北“無慈悲”ソウル焦土化作戦! 日本も射程「ムスダン」始動

2010.11.25


ついに日本が射程県内に入る新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」が動き出した=先月10日の軍事パレード(共同)【拡大】

 北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島の砲撃事件で、北はあえて命中精度の低い海岸砲や野戦砲を短時間で大量に放ち、島全体を焦土化する計画だった可能性が濃厚になってきた。米韓の合同軍事演習を控え、朝鮮半島の緊張状態は最高潮に達しており、北の標的は首都・ソウルにも向けられている。さらに北は、日本全土が射程に入る中距離弾道ミサイル「ムスダン」(射程約3000キロ)の発射実験を近く行うことも判明。局地的な砲撃戦から、周辺国を巻き込んだ大事変を起こす恐怖のもくろみが見えてきた。

 今月28日から黄海では米原子力空母ジョージ・ワシントンを含む米海軍第7艦隊と韓国海軍の合同軍事演習が始まる。北はこの動きに敏感に反応。24日の外務省報道官談話で韓国を「敵」と表現したうえで、「われわれは現在、超人間的な自制力を発揮しているが、わが軍隊の砲門は依然として開いている状態だ」と警告し、一触即発の姿勢を崩していない。

 そんななか、北が「ムスダン」の発射実験を数カ月以内に実施する準備を進めていることが判明した。先月の軍事パレードにも登場した「ムスダン」は核弾頭を搭載可能で、在日米軍基地が集中する沖縄まで射程に収める。車両可搬型のため、偵察衛星での事前把握が難しく、今回の延坪島の砲撃と同様にゲリラ的な発射となれば、日米韓の防衛ラインを突破する可能性もある。

 北の攻撃が恐ろしいのは、朝鮮人民軍最高司令部が明言しているように「無慈悲な軍事的打撃」を展開してくる点だ。延坪島では軍施設の工事現場から民間人2人の遺体が見つかり、韓国内では「戦闘機で北の砲撃陣地を爆破すべきだった」といった強硬な意見も飛び出している。その背景には、今回の砲撃が明らかに一般市民を巻き添えにすることを織り込み済みで発射した疑いが強いことがある。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「通常は初弾の着弾地点をヘリや航空機を使って確認し、修正した位置を連絡して新たに砲撃を加えて目標を叩く。観測手がいない攻撃は異例だ」と語る。

 延坪島への攻撃ではまず、第一撃(約12分間)で150発が撃ち込まれた。北の砲撃は約170発で、うち90発が海上に落ち、約80発が島に着弾した。野戦砲の命中精度は遠いほどずれる。住宅地や軍用地といった大まかな狙いこそ付けたが、あとはやみくもに一斉砲撃するという、残虐な焦土化作戦を実行したわけだ。

 「わざと海上に外した可能性もあるが、全体的に命中精度が低かったものと思われる。韓国軍も一撃目で北の発射地点を把握し、反撃で北の砲兵陣地を沈黙させる能力があるはずだが、北からの砲撃は続いた。全面戦争を避けるためなのか、韓国軍が北の陣地をわざと照準から外した可能性もある」(同)

 野戦砲の威力は大きく、「短い射程のもので、着弾点の半径50メートル以内にある物体は消滅する。北の領土からソウルまで届く長距離型の砲もあり、脅しの常套句である『ソウルを火の海にする』というのも現実に可能」と世良氏。弾道ミサイルのように予測や迎撃は不可能で、今回同様に無差別に飛んでくるとなると、ソウルが焦土と化す可能性さえある。

 それにしても、本来なら金剛山観光などで外貨や食料援助をもたらしてくれる韓国を恐怖のどん底に陥れて、北に何の得があるのか。

 ある消息筋は「金正日総書記(69)の三男、正恩氏(27)の後継者内定で浮かばれない一派が起こした反乱に近い動き」と強い口調で訴える。「韓国への攻撃は、北内部では『愛国心に満ちた勇気ある行動』と評価される。一部軍人の独断だったとしても、金総書記と正恩氏は行動そのものを否定できないはず」(同)という見方だ。

 北の内部情報に精通したニュースサイト「デイリーNK」日本支局長の高英起氏は「やはり最終的には2人の承認が必要だろう。G20(20カ国・地域首脳会議)期間中に行動を起こすという観測はあったが、米中がプレッシャーをかけて起こさせなかった。正恩氏の誕生日(1月8日)に向けた功績固めにはぎりぎりの時期だった」と指摘する。

 ■食料危機、国内の不安そらす狙い

 高氏は続けて「後継作業は想像以上に早い。昨年末に通貨改革を行い、今年3月には韓国の哨戒艦沈没事件を起こした。そして、今回の砲撃。行動を起こして沈静化させるサイクルが早まっている」と語る。そのうえで、「自国を『強盛大国』にするという2012年まで、実質的に1年しかない。金総書記の健康問題も影響しているようだ」と分析する。

 その金総書記だが、「最近、食料関係の視察が目立っている」と語るのは、北の経済に詳しい山梨学院大経営情報学部の宮塚利雄教授。たしかに、ここ1、2カ月の動静報道を見ると平壌冷麺の名店「玉流館」にできたスッポンとチョウザメ料理の新食堂を現地指導したのをはじめ、正恩氏も引き連れて食品工場や養魚場を訪問。化学工場でもわざわざ食堂に顔を出すなど、やけに食べ物に執着している。

 宮塚教授は「こうした食堂や食料で腹が膨れるのは幹部だけで、ほとんどの国民は飢えに苦しんでいる。春先に韓国から肥料援助がもらえなかったうえ、夏の水害で穀倉地帯のコメやトウモロコシは大打撃を受けた。国内の不安をそらすため、外で緊張状態を作り上げているのではないか」と推測している。

 

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