【東京】日本最大の朝鮮学校、「東京朝鮮中高級学校」の入り口へと続く門――セメントでできた2本の門柱にはそれぞれ、日本語と朝鮮語の校名が刻まれている。戸外のスピーカーからは伝統的な北朝鮮の民族音楽が鳴り響き、サッカー場でドリブルをする生徒は学校関係者に元気よくあいさつする。
いたって平穏な学校風景だが、そこには在日朝鮮学校と日本政府の緊張が隠されている。北朝鮮による韓国延坪島砲撃を受けて、日本政府は先週、朝鮮学校への支援を見直す方針を示唆。これを受け、北朝鮮を支持する在日朝鮮人社会に注目が集まっている。
日本の植民地統治下、朝鮮半島から約60万人が日本に連行されるか、移り住んだ。このため日本には、世界で(北朝鮮を除く)最も数多くの朝鮮学校がある。朝鮮学校では、朝鮮語で授業が行われ、教室の壁には金正日総書記の肖像画が飾られている。
日本政府は、1年にわたり高校無償化制度の対象に朝鮮学校を含めることについて検討を重ねており、その議論は大詰めを迎えている。
この制度は、与党民主党が2009年の選挙マニフェストの目玉政策のひとつで、公立高校の授業料は免除、私立高校には生徒1人あたり最大で年間23万7600円の補助金が支給される。
4月1日の制度発足とともに日本の公立・私立高校への支給は始まったものの、支援を求める朝鮮学校10校は除外され、審査プロセスが義務付けられた。
高木義明文科相は先週、菅直人首相との会談後、最終判断に政治は影響しないとの方針を撤回、北朝鮮による砲撃を受けてこのプロセスを停止すべきとの見方を示唆した。
朝鮮学校関係者は、北朝鮮の砲撃は生徒と関係はない、と主張している。
全国朝鮮高級学校校長会の愼吉雄氏は25日の記者会見で、いかなる状況においても、生徒は朝鮮半島情勢と何ら関わりがないと強調。朝鮮半島の緊張を理由に無償化プロセスを停止するのは不当だと訴えた。シン氏が話している間も建物の外では日本の右翼団体が旗を振りかざし、拡声器で抗議活動を行っており、在日朝鮮学校が置かれた微妙な状況を浮き彫りにしていた。
現在、在日韓国・朝鮮人は約60万人。その多くが日本の植民地統治下に連行あるいは移住した人々の子孫にあたる三世と四世だ。
専門家によると、在日韓国・朝鮮人の90%以上が朝鮮半島南部出身だ。しかし、第二次世界大戦後、朝鮮関連の授業を行う学校への支援を日本政府が拒否した際、北朝鮮が支援に動いた。北朝鮮は1950年代、朝鮮の言語、文化、歴史の授業が行われる教育施設の建設・維持費用を援助した。
支援金の最盛期は1970年代で、その額は30億円にも上ったとの推定もある。しかし、北朝鮮経済の悪化に伴い、支援金は急速に落ち込んでいった。
在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、北朝鮮による過去50年の支援金は460億円に達する、としている。また朝鮮総連の資料によると、現在1万人が日本にある北朝鮮系の学校140校(幼稚園、高等学校、大学を含む)に通っている。
現在の朝鮮学校のカリキュラムには、近代史、世界史のほか北朝鮮史も盛り込まれている。東京にある4つの朝鮮系の高校では、3年生は北朝鮮史の授業を最大で3時間、朝鮮語の授業を5時間学ぶ。3年生には楽しみなことがある。平壌への2週間の修学旅行だ。多くの生徒にとって、これが北朝鮮を訪れる初めての旅となる。
3年生のコー・ヨンジャエ君は、旅行について「日本のメディアで見るのとは大違いだった。もっと発展していて、みんな親切だった。とても感じの良い国だ」と話す。
コー君は、「北朝鮮人として日本に生まれ育ち、複雑な感情がまったくないという訳ではない」とも話してくれた。
コー君は4月から北朝鮮の大学に通う予定だ。朝鮮半島の問題については、友人と早く解決するといいねと話している。コー君は言う。「確かに北朝鮮は攻撃した。でも、砲撃だけで北朝鮮をそういう国だと決めつけるのは正しくない」