2010年11月30日10時49分
■「演出に制限も」
だが、当事者からは不満や懸念の声が上がる。
日本舞台音響家協会の常任理事、松木哲志さんは「お金で解決できない問題がある」と指摘する。
「数十本のマイクへの電波の割り振り、会場の癖を踏まえたアンテナの位置など、長年かけて蓄積してきた、いい音を届けるノウハウが周波数帯が変わると一からやり直しになる」。また、障害物があっても届きやすい現在の帯域は舞台装置の陰でも歌えるが、「今より電波が届きにくい短い波長を割り当てられると、演出に制限が増えるかもしれない」と心配する。
さらに「移転先の候補であるホワイトスペースは、地域で空いている周波数が違う。最悪の場合、ツアーの行き先々で機械を取り換える必要もでてくる」。
デジタルマイクについては「たとえ性能のいい物ができたとしても、劇場の機構全体の中でうまく生かすには時間がかかり、すぐ使うのは難しい。文化や芸術は効率だけで考えられないものなのです」と話している。
日本民間放送連盟も周波数帯を動かすのは「現状では困難」としている。
原口前総務相の指示で始まった周波数再編は、作業部会が5月に初会合を開き、11月に最終報告という短期間の議論だった。「ユーザーへの周知や意見聴取が不十分」(劇団四季の田中浩一・総合プロデューサー)との不満も根強い。作業部会の結論は30日に上部組織に報告され、その後、政務3役らが検討する。劇場関係者は、改めて改善を求めてゆくという。(山口宏子)