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第一回【FC岐阜】今西和男が広島でやり残したこと

木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
photo by Yamada Kazuhito/Kaz Photography

倉田安治監督(左)と浮氣コーチ(右)。

 広島でやりきれなかったという地域貢献。それを今西は岐阜で開花させつつある。2009年のホームタウン活動において岐阜はJリーグで一位という評価を得た。地域活動に延べ851人の選手が参加した。ひとり当たりの平均活動時間が48時間、全クラブの平均が17,3時間ということからもその多さが分かる。今年からコーチとなった浮氣哲郎(前FC刈谷監督)が言う。

「岐阜の全市町村を対象にしてやっています。選手は練習が終わると必ずどこかの町に行って活動しています。オフの日も必ずトークショーかサインをやっていますね。正直、Jリーガーといっても余暇の過ごし方を無為に使っている人も多い。社会との接点の無いままに現役を辞める人もいる。でも地域で活動することで社会性も身につくと思うんですね。自分たちの給料はこういう人たちから出ているのかと思うことで選手も地元の人との距離も近くなっていく。せっかくのオフにイベントに出る不満ですか? 僕も思ったんですが、自分たちがたまたまプロサッカー選手ということで、そういうことができる立場にあるということに気がつくんですよ。イベントに出るということ、それはありがたいことなんです。FC岐阜は地域に今は根を張っている時期ですが、これから幹を伸ばしたいですね」

結果的にこの地域貢献が岐阜の価値を高め、存続に向けての大きな力になったといえよう。
商圏エリアとしては名古屋グランパスや中日ドラゴンズとシンクロする地域でありながら、岐阜のオンリーワンとしてのその存在感は徐々に大きくなりつつある。

経営難を乗り越え、一歩一歩、クラブは前進を続ける。

今西は「予算が組めないので大量の選手を放出した後に、まずは新卒の選手を引っ張ってきた。彼らはある意味でどこからも声のかからなかった選手たちです。だから、モチベーションが高かった。高校野球のようにとにかくひたむきに走りきることを目標にしたら、それに感動したというサポーターが増えたんです。60代のご夫婦がゴール裏で必死に応援してくださるようになった。ピッチの外の活動でも県や市との連携を深めて雇用促進も図っています。スポーツの立場からの食育も提言したり、グッズも地産地消(笑)。地域貢献で地方のお金の無いクラブのひとつのモデルになるように今は努力しているところですね」

公式試合安定基金を借りている間は500万円以上の決裁権は全てJリーグにゆだねられる。これを返済したことで、自治権が再びクラブに戻った。百戦錬磨の今西の辣腕はこれからまた発揮されるだろう。

広島生まれ、広島育ちの今西が、岐阜で「最後の仕事」を成し遂げたとき、地方クラブ再生の雛形をそこに見るような気がする。

8月2日には、Jリーグ初となる語学講座「FC岐阜英会話スクール」までスタートするに至った。

今西は開講の挨拶で自らマイクを握り、「私も41歳から英会話を始めました」と語り、後に外国を渡り歩いて有能な監督や選手と折衝を重ねることが出来た経験からコミュニケーションの大切さを説いた。岐阜から世界に向けて羽ばたく人材育成のためにフットボールクラブが尽力するという試みは画期的である。

Writer Profile

木村元彦 Kimura Yukihiko

1962年愛知県生まれ。中央大学文学部卒。
ノンフィクション・ライター。ビデオジャーナリスト。
スポーツ人物論、アジアや東欧ほかの民族問題などの取材を続けている。
主な著書に『オシムの言葉−フィールドの向こうに人生が見える』(集英社文庫)
『誇り−ドラガン・ストイコビッチの軌跡』(集英社文庫)
『悪者見参−ユーゴスラビアサッカー戦記』(集英社文庫)
『終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ』(集英社新書)など。

著:木村 元彦

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