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米原殺人 あす判決

2010年12月01日

【犯人か?市民どう判断】

 米原市の汚水槽殺人事件の裁判員裁判で、殺人罪に問われた森田繁成被告(41)に対する判決公判が2日、大津地裁(坪井祐子裁判長)である。被告は捜査段階から一貫して無実を主張。犯行に結びつく決定的な証拠がない中、検察側は状況証拠を積み重ね無期懲役を求刑した。争点は被告が犯人であるか否か。市民から選ばれた裁判員は、どう判断するのか。(堀川勝元、大西英正)

 検察側は、森田被告は殺害された小川典子さん(当時28)と交際しており、互いの浮気を疑って深刻なトラブルを抱えていたと指摘。小川さんに対し殺意を抱きかねない状況だったと主張した。

 「あほぬかせ 明けても暮れても女女女」「人間やぞ お前のメール読み返してみろ」(昨年5月の被告から小川さんへのメール)など複数のメールのやりとりを示し、「被告は我慢の限界を超えていた」と説明。一方の小川さんも「(被告の)暴力を止められない。このままやと殺されるかもしれない」と友人に相談していたことなどを挙げ、「被告の暴力に身の危険を感じていた」とした。

 小川さんが消息を絶った昨年6月10日、トラブルは最も激しくなり、小川さんは同日朝、約40分間のうちに被告を罵(ののし)るメールを13回送信したと指摘した。

 これに対し、被告は小川さんに対する暴力を否定。弁護側は「被告は小川さんに振り回されたが愛情は失っていない。事件直前のメールも痴話げんかで、日常的ないさかいの範囲だ」と、トラブルを否定し、「被告には殺害する動機がない」と主張している。

〈森田被告の起訴内容〉 昨年6月10日午後9時ごろから11日午前1時ごろにかけて、米原市伊吹の汚水槽付近で、小川典子さんの頭などを鈍器のようなもので何度も殴って瀕死(ひん・し)の重傷を負わせ、汚水槽に落として窒息死させた。

■動機

【検察側 深刻なトラブルあった/弁護側 日常的いさかいの範囲】

 検察側は、森田被告は殺害された小川典子さん(当時28)と交際しており、互いの浮気を疑って深刻なトラブルを抱えていたと指摘。小川さんに対し殺意を抱きかねない状況だったと主張した。

 「あほぬかせ 明けても暮れても女女女」「人間やぞ お前のメール読み返してみろ」(昨年5月の被告から小川さんへのメール)など複数のメールのやりとりを示し、「被告は我慢の限界を超えていた」と説明。一方の小川さんも「(被告の)暴力を止められない。このままやと殺されるかもしれない」と友人に相談していたことなどを挙げ、「被告の暴力に身の危険を感じていた」とした。

 小川さんが消息を絶った昨年6月10日、トラブルは最も激しくなり、小川さんは同日朝、約40分間のうちに被告を罵(ののし)るメールを13回送信したと指摘した。

 これに対し、被告は小川さんに対する暴力を否定。弁護側は「被告は小川さんに振り回されたが愛情は失っていない。事件直前のメールも痴話げんかで、日常的ないさかいの範囲だ」と、トラブルを否定し、「被告には殺害する動機がない」と主張している。

■犯行時間帯

【検察側 行動裏付けなくウソ/弁護側 被害者を捜して帰宅】

 小川さんが殺害されたとされる10日夜から11日未明にかけてアリバイのない被告の行動についても、双方の主張は真っ向から対立している。

 10日午後8時43分ごろ、車で外出中の被告に小川さんからメールが届き、直後に2人は長浜市のJR高月駅付近で落ち合った。その後、小川さんの生存は確認されておらず、12日早朝、約15キロ離れた米原市の汚水槽の中から遺体で発見された。

 被告は、小川さんとは10日夜に会ったが、小川さんは「トイレ(に行く)」と言って、1人で被告の車を運転し走り去ったと主張。約1時間歩いて行方を捜し、元の場所で車だけがエンジンのかかった状態で見つかり、いったん帰宅。深夜に再び車で捜しに出て、未明に帰宅したと説明している。一方、検察側は「妻が被告の帰宅を確認した午前3時ごろまでの被告の行動に裏付けがない」として、被告の説明は「うそ」と論難した。

 検察側は、翌11日以降の被告の行動についても、「犯人でなければ説明がつかない行動を繰り返している」と主張している。

 被告は10日までの3日間で1日数十回のメールを小川さんに送信したが、11日は2回に激減し、検察側は「小川さんの殺害を知らなかったと装うカムフラージュ」と指摘。また、小川さんの安否を問う母親からの電話に「最後に会ったのは10日午前」と事実と異なる説明をしていたことも明かした。

 対して弁護側は、メールの激減について「小川さんがすねていると思い連絡しなかった」と反論。母親に事実を告げなかったことも「小川さんとの浮気を知られたくなかった」としている。

■車の血痕

【検察側 めった打ちして付いた/弁護側 タイヤ交換の時にケガ】

 検察側は被告の犯人性を立証する有力な物証として、被告の車に付着した小川さんのDNA型と一致する複数の血痕を挙げる。

 車内では助手席のシートなど4カ所から検出。車外でも左後輪のブレーキドラムの2カ所に付着していた。ブレーキドラムの血液は、鑑定人の「横から飛んできて付いたもの」との証言から、車近くで小川さんがめった打ちされた際のものと指摘した。

 さらに、小川さんの血がついたものを含む車のフロアマット5枚が、被告の自宅庭にあったタイヤラックのカバー下から見つかったことも明かし、「血痕の付着を意識したためマットを隠したとしか考えられない」と主張している。

 これに対し、弁護側は「ブレーキドラムの血は、小川さんがタイヤ交換してくれたときにけがをしてついた可能性がある」「マットは小川さんとおそろいを買う約束をしたため事件前に取り外した」などと反論している。

【「試金石」検察側】

 状況証拠をいくつも積み重ねて「被告以外に犯人はいない」と主張する検察側に対し、「疑わしきは被告人の有利に。決して冤罪(えん・ざい)を生んではいけない」とする弁護人。

 被告の犯人性を争う重大事件のこの裁判を、検察側は「裁判員裁判の試金石」と位置づけてきた。ある法曹関係者は「プロの裁判官が裁けば、有罪となる可能性が高いと思うが、市民がどう判断するかは、わからない」と言う。

 裁判員は裁判員裁判で過去最長の10日間の審理と5日間の評議を重ねて、判決に臨む。

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