【社説】目の前で逃した韓国人初のノーベル化学賞

 世界的な科学雑誌『ネイチャー』が最近、電子版に米国コロンビア大物理学科のキム・フィリップ教授が今年ノーベル物理学賞を共同受賞すべきだったという、科学界の主張を掲載した。ノーベル賞委員会は、炭素原子層1層に配列されている「グラフィン」という物質を初めて作り出した英国マンチェスター大のガイム教授とノボシェルロフ博士を、今年の物理学賞受賞者に決めた。

 同誌によると、米国ジョージア工大のドゥー・ヒア教授がノーベル賞委員会に送った公開書簡を通じ、「受賞者と同じ学術誌の同じ号に類似した研究論文を発表したキム教授の業績を過小評価した」として、受賞者選定の問題点を指摘したという。受賞者のガイム教授は同誌の記事で、「キム教授が重要な貢献をしており、彼と賞を分かち合うことに同意する」と主張した。

 グラフィンは、炭素原子層1層分の厚みを持つ薄い物質ながら、鋼鉄に比べ200倍強く、銅に比べ100倍以上の速さで電流を伝えるという特性を持っており、曲がるディスプレーや次世代半導体などに使用できる新素材だ。黒鉛からグラフィンを分離することではキム教授がガイム教授チームに出遅れたが、グラフィンの特性究明を含む、後続研究では進んでいたという評価を受けている。

 ノーベル賞は、主に最初の発見者が受けるが、最初の発見者と後続研究者が共に受賞する場合も少なくない。今年の化学賞も、新しい化学反応法を発見した米国の科学者と、これをさらに発展させた日本の科学者の二人が共に受賞した。そのため、キム教授個人的にはもちろん、国家的にも、ノーベル化学賞初受賞の機会を逃したことを残念に思う。

 しかし、残念なことだけではない。キム教授が世界の科学界が認める業績を残してもノーベル賞を受賞できなかったことついては、国家的な支援体制が不足していたせいもある。ノーベル賞の選定は業績も重要だが、国力も作用するためだ。少なくとも今回、韓国の科学界がノーベル賞にかなり近づいたという事実は確認できたという点で、今後、基礎科学研究にさらに多くの投資を行っていくためのきっかけとすべきだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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