北アルプス・立山連峰の雄山(標高3003メートル)の東側斜面にある万年雪(氷体)が、国内では未発見の「氷河」だとする調査結果を、富山県の「立山カルデラ砂防博物館」が30日、発表した。ロシア・カムチャツカ半島以南の東アジアに氷河は現存しないとする定説を覆したことになる。
博物館は、立山のカルデラ地形の歴史や自然を砂防目的で調査している県出資の財団法人。氷河の存在は東京都内であった「極域気水圏シンポジウム」で発表した。
氷河は、厚さ約30メートルを超す雪や氷塊が重力で流動し続けるものをいい、山岳地の斜面を覆う雪などの重みで圧縮され形成される。立山連峰には1万年以上前に氷河の侵食でできた地形があり、1970年代、山形・秋田県境の鳥海山(標高2236メートル)の万年雪が氷河ではないかとして調査された。しかし流動が確認できず、長年、日本に氷河はないとされてきた。
しかし、南極観測隊員として南極の氷河の調査経験もある福井幸太郎・同館学芸員らが、今年8月から雄山の斜面にある「御前沢雪渓」の氷体(長さ約700~800メートル、幅200~300メートル、厚さ約30メートル)を調査。11カ所に長さ約3メートルのポールを埋め、その動きをGPS(全地球測位システム)で追跡した。
その結果、氷体の斜面下側4カ所で1カ月に約30~6センチ動いているのを確認した。他の地点でも5センチ以内の動きが観測されたが、「誤差の範囲内」として流動データには入れていない。博物館は「かつて大きかった氷河が、縮小しながら流動している」と結論づけた。【岩嶋悟】
藤井理行・国立極地研究所所長(雪氷学、氷河気候学)の話 氷河と確定するには今後1年以上、連続的に流動していることを観測する必要があるが、(観測結果から)氷河である可能性が高い。
毎日新聞 2010年11月30日 23時05分(最終更新 12月1日 1時44分)