TOP > 作品一覧 > ER 緊急救命室 > Features > スペシャル・インタビュー ローラ・イネス

Features

ローラ・イネス

スペシャル・インタビュー ローラ・イネス

ローラ・イネス Laura Innes
1959年8月16日、ミシガン州に6人兄弟の末っ子として生まれる。ノースウェスタン大学で演劇を学び、シカゴとニューヨークで舞台経験を積んだ後、ロサンジェルスへ進出。TV出演のほか、脚本執筆や監督業も精力的に行っており、本作はもちろん、「ザ・ホワイトハウス」も数エピソード演出、エミー賞監督賞にノミネートされている。

第二シーズンから「ER」に出演してきたローラ・イネスは、現在のキャスト・メンバーの中では最古参になる。本国アメリカでは1999年に放映された第5シーズンからは監督も務め、「ER」ではこれまで10エピソードを監督した他、「ザ・ホワイトハウス」でも5つのエピソードを監督している実績の持ち主でもあるゆえ、まずは彼女が監督をすることになった経緯を聞いてみた。
「監督をするつもりなんて全く無かったんだけど、私は舞台出身なので、映画とかテレビの現場の経験が乏しかったの。そこで、いろいろ技術的なことを質問していたら『へえ、監督したいの?』と聞かれたので、『違うわよ』って答えたものの、結局、監督を任されることになっちゃったのよ。『どういうこと?私、監督なんかしたこと無いのに』って言ったんだけど、『大丈夫、大丈夫』なんて言われちゃって...私が初めて監督したのは、病院が停電する事態になる『停電』(第111話 シーズン5)というタイトルの付いたエピソードで、とてもうまくいったんだけど、すごく大変だったわ。俳優だったら、自分の役のことだけ考えていればよいけれど、監督だとキャストやスタッフ全員とやりとりして、すべての事に気を配らなければならないでしょ。1日12時間〜14時間の撮影にどっぷり浸かっている状態で、素晴らしい経験だったけど、終わった時には疲れ果ててしまったわ」
−監督業と俳優業と、どちらが楽しいですか?
「凡庸な答になってしまうけれど、私にはどちらも面白いわ。監督をしている時、俳優たちを見て『私だったら、こういうふうに演じるけどね』と思った翌日、自分で実際に演じてみるととてもむずかしいことが判ったりすると、謙虚な気持ちになるわね。監督と俳優という2つの役割の間を行ったり来たりすることがとても良い勉強になっていると思う」
−「ER」のような長寿番組になると、長い間、同じ人物を演じてきた俳優たちの方が、エピソードごとに替わる監督たちよりも、役に精通していると思いますが、そのあたりは演出上、むずかしいところもあるのではないでしょうか?
「そこがテレビの興味深いところだと思うわ。あなたの言う通り、こういうドラマだとずっと変わっていないのは、その役を演じている俳優だけだから、新しく番組に参加した脚本家が考えたストーリーや台詞に対して、たとえば『ねえ、彼女は恋人が死んだばかりだから、こういうことで冗談は言わない方がいいんじゃないの?』と提案したり、監督の演出について、たとえば『ちょっと、それはオオゲサ過ぎると思うな』と意見を言ったりすることもあるのよ。つまり、私たちがそれだけ自分たちの役に入れ込んでいるということなんだけど。でも、それと同時に、私たちは誰かに、自分の役が留まっている“安全地帯”のようなところから押し出してもらって飛躍しなければいけないということも確かだし。そのあたりのバランスをとることが重要なんだと思う」
−「ER」の他にも「ザ・ホワイトハウス」や、新しい医療ドラマ「HOUSE」などを監督なさっていますが、これから監督してみたい番組などはありますか?
「是非、コメディを監督してみたいわ。たとえば、自分がすごく気に入っている"The Office"とか。アーロン・ソーキン(「ザ・ホワイトハウス」のクリエイター)とも、もう一度、仕事をしたいから"Studio 60 on the Sunset Strip"も手がけてみたいと思っているの」
共演しているゴラン・ヴィシュニックに、もし患者としてERに担ぎこまれたら誰に診てもらいたいかと尋ねた際、ヴィシュニックは、即座にローラ・イネスのDr.ケリー・ウィーバーを選び、その理由として、「自信に満ちあふれているから」と説明していたが、その自信は監督としても実力を発揮しているところに根ざしているのかもしれない。そのことをイネスに伝えると、こんな答が返ってきた。
「あら、嬉しいわ。私だったら、メキー・ファイファーを選ぶけどね。だって、彼を観ていると楽しくなるんだもの」
この余裕、私もDr.ウィーバーに診てもらいたくなった。

【ロサンゼルス(米) 荻原順子 2006年10月】

TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.