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きょうの社説 2010年12月1日
◎国の卸売市場再編 北陸は金沢の拠点化が必要
農林水産省が全国の中央卸売市場から「拠点市場」を指定し、重点支援することを決め
た。取扱量などを重視する基準はハードルが高く、金沢市中央卸売市場も選ばれるのは困難な情勢だが、富山市中央卸売市場が国の指定を外れ、来年度から地方卸売市場に転換することを考えれば、北陸においては金沢市場の拠点化はますます重要である。卸売市場再編の狙いは、規模の大きな市場と中小の市場との間で機能や役割を分担し、 効率的な流通ネットワークを構築することにある。北陸では金沢が中核的な存在といえ、流通機能を分担するにしても、地域のまとまりのなかで考える必要がある。拠点市場指定では機械的に数値を当てはめるだけでなく、地域バランスの配慮を求めたい。 農水省がまとめた第9次卸売市場整備基本方針では、拠点市場という新たな仕組みを通 して市場再編を加速させる方向性が一段と鮮明になった。拠点市場になるには市場側が希望し、取扱数量と他地域への出荷割合の両方が基準を上回る必要がある。全国75カ所の中央卸売市場から十数カ所が選ばれる見通しである。 大型スーパーと産地の直接取引やネット売買など流通形態が多様化し、中央卸売市場の 取扱量は金沢、富山を含め、全国的に減少傾向にある。地方公設市場に転換し、より自由度の高い経営環境で生き残りを模索する動きも広がるなかで、富山市も市議会12月定例会に条例改正案を提出し、来年4月から地方市場として再スタートを切る。 地方では、卸売市場は第一次産業を支える重要な流通インフラである。市場外流通の拡 大は時代の流れとはいえ、生産、小売側にとって、それぞれ安定的な販路、調達先であることには変わりない。 金沢市中央卸売市場では、生産量が少なく市場に出回らなかった奥能登の特色ある山菜 や野菜などを集荷し、県内全域に流通させるシステムが軌道に乗ってきた。食材の発掘やブランド化、地産地消の推進も重要な役割である。そうした積極的な取り組みを通して、地域における市場の存在意義を国に強力にアピールしていきたい。
◎温室効果ガス削減 京都議定書の延長拒否を
メキシコ・カンクンで始まった気候変動枠組み条約の第16回締約国会議(COP16
)で、政府に求めたいのは、京都議定書の単純延長に「ノー」を貫くことである。決裂すれば、京都議定書に定めのない2013年以降、地球温暖化対策が「空白期間」に入ることになるが、米国や中国、インドなどに削減義務のない京都議定書は、現実の温室効果ガス削減にはあまり役立たない。すべての主要排出国が参加する新たな国際ルールをつくる必要がある。京都議定書の延長を求めているのは、「地球温暖化は先進国の責任」と主張する途上国 であり、中国である。排出権取引で利益を得たい欧州連合(EU)も延長論に傾き始めているとみられる。単純延長は日本だけが貧乏くじを引くことになりかねない。 京都議定書は、日本が中心になって取りまとめを行い、「京都」の地名が付いている。 人類が初めて温室効果ガスを削減する目標を掲げたという点で、特筆すべき国際協定だが、日本は愚直に取り組んだために、結果として過大な負担を押し付けられてしまった。 そればかりか、鳩山由紀夫前首相が昨年秋の国連会合で、「主要国が意欲的な目標に合 意した場合」との条件付きながら、2020年までに1990年比25%削減というとんでもない中期目標を示し、国民をあきれさせた。 国の長期エネルギー需給見通しによれば、2020年に1990年比で3%削減するだ けで52兆円、1世帯当たりにして105万円の負担になる。25%削減は非現実的な数字であり、民主党政権は削減の道筋を示せないでいる。 日本は世界有数の低炭素社会である。国内総生産(GDP)あたりの二酸化炭素排出量 は、日本の0・24に対し、ロシアは約20倍、中国は約10倍である。韓国の0・71、米国の0・51、EU27カ国の0・42と比べても突出して少ない。この実績が一切評価されず、一律で90年基準に基づく削減目標を負わされるのは、どう考えてもおかしい。孤立を恐れず、主要排出国がすべて参加する新たな枠組みを目指すべきだ。
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