2010年11月18日

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

 バルセロナのスタメンは、バルデス、マクスウェル、アビダル、プジョル、アウベス、ブスケツ、シャビ、イニエスタ、メッシ、ペドロ、ビジャ。ビジャをなじませる最適解を探し続けるバルセロナ。でも、そろそろその答えは見つかりそうな雰囲気。WOWOWのシステム予想で、メッシがとうとう中央に配置されるようになった。累積のため、ピケが出場停止。クラシコに向けて、テンションを上げていきたい所。

 ビジャレアルのスタメンは、ディエゴ・ロペス、カプテビラ、ムサッキオ、マルチェナ、アンヘル、ブルーノ、ボルハ・バレーロ、カニ、カソルラ、ロッシ、ニウマール。CBの怪我以外はほぼベストメンバーになるのだろう。ペジェ時代だったら、正面衝突によって、ポゼッションでバルサを超える試合もあった。結果もそれなりに出ていた気がする。新生ビジャレアルはどうするのだろう。

 ■張り巡らされた防壁

 ビジャレアルのシステムは4-4-2。守備の役割分担が非常に興味深い形であった。なので、最初はその部分から。バルサはブスケツを下げることで3バックポゼを行った。3バックポゼの長所は、相手のプレスのかけどころを曖昧にすることで、数的優位で行われるビルドアップの精度を高められる所にある。この試合で言えば、ロッシたちにブスケツのマークも俺たちがやるのかなと感じさせることが出来れば、3バックポゼの勝ちである。

 で、この部分にビジャレアルは迷いがなかった。ブスケツを見るのはバレーロ。ロッシたちはプジョルたちの注意をしていればいいと。なので、迷いが生じないビジャレアルのFWコンビ。バレーロは走りまくってブスケツを見るようにしていた。なので、3バックでも数的優位にならないバルセロナ。ビルドアップの前提でもある数的優位を壊された瞬間であった。なお、シャビにはブルーノがついていて、そんなボール運びを手伝おうとしたシャビもなかなか苦しそうであった。

 でもさ、DFラインの前のスペースを埋めないといけないバレーロたちがそんなに前に行って、後方は大丈夫なのかよと。メッシやイニエスタはどうするんだよという疑問が浮かび上がるところで。この危険な部分については、CBが前に出てきたり、SHが中央に絞って対応する場面が見られた。理想としては、相手の最終ラインにマンツー気味に選手をぶつけることで、ボールを運ばせない、つまり、ボールを運べないのだから、メッシたちのマークはしなくてもいいよねみたいな。実際は上記のように対応していたけれど。

 そんなビジャレアルの果敢な超攻撃的な守備。もちろん、穴はある。バレーロたちが相手陣地深くまで侵入するので、中央の守備の気を使うのはSH。なので、サイドの守備が空く場面が見られた。つまり、マクスウェルとアウベスはフリーであった。それでも、ビルドアップの出発点に猛烈なプレスをかければ問題ないという机上の空論は、もうちょっとで機能しそうだった。バルサはバルデスを使ってビルドアップをすることで状況打破に成功する。バルデスがボールを持つ→近くのパスコースを潰しまくる→バルデスがサイドにロングボールを蹴るで、バルサの攻撃が始まるようになっていった。こうして、前プレを交わされるビジャレアルは、プランBに移行である。

 試合前から、バルデス利用&サイドを使って前プレがかわされてしまうことは想定していたかのようなビジャレアル。ボールを運ばれてしまったときの守備への切り替えが猛烈に速かった。なので、DFたちがバルサの攻撃を遅らせる→前線の選手が戻ってきてボールホルダーを囲い込む場面が何度も見られた。なので、ボールを運べて一難去ってもまた一難のバルセロナ。で、そこを乗り越えて、相手の陣地でボールを持てても、まだ壁があるのだからビジャレアルも凄いところで。

 色々と罠を仕掛けるビジャレアルだが、それらを突破された場合は4-4で守備を固める布陣。サイドは捨て気味で、中央をあつく固めていた。ロッシとニウマールはカウンター要員で前線に控えていた。ここで4-1-4で守備を固める作戦を取らないところは、ビジャレアルらしい。カニやカソルラが中央のバレーロたちと相手を囲い込むことで、バルサからボールを奪う場面が多く見られた。それだったら、サイドからの仕掛けだと行きたいところだが、右サイドはクロス、左サイドはビジャの仕掛け一辺倒で、なかなか分厚い攻撃ができないバルサ。それでも、メッシのヘディングはびっくりした。

 まとめると、高い位置から人数をかけたプレスでビルドアップの邪魔をすること&突破されてもすばやい撤退で相手を中盤で挟み撃ちにすること&それでも無理だったら4-4で自陣深くに撤退することで、バルサに抵抗するビジャレアルであった。普通だったら、4-4で自陣に撤退を選択するところを、やれることはやろう。高い位置でボールを奪って勝ちにいこうとする姿勢に畏怖である。なので、ガリード監督はなかなか面白いなと感じた。なお、ビジャレアルの攻撃は特急コンビを走らせるロングボールが中心となった。

 ■復活したプレス

 バルサのシステムは4-3-1-2。個人的には4-2-2-2のほうがしっくり来る。イニエスタの位置が高いってよりは、ブスケツとシャビの位置が低いので。FWはビジャとペドロで、WGとしての仕事が求められている。ツートップをWGとして働かせるやり方は、クーマンがやっていた記憶がある。ゼロトップ気味で相手のマークを混乱させること&相手のSBの攻撃参加を牽制するメリットがあるやり方である。ただし、ゴール前に誰もいない現象がデメリット。イブラでこりたのか、CFをなくすことで問題を解決するってのは面白い発想である。適任者がいないから、システムを変更ってのは王道だけれども。

 ビジャレアルの攻撃的な守備をバルデスで交わすバルセロナ。しかし、いびつなシステムの代償を受ける。安定的にサイドを崩すことができそうでできない。途中からマクスウェルがビジャを追い越して、サイドを突破する場面が見られたが、最近のバルサはそのようなプレーが少ない。個人技ごり押しや、普通のクロスで攻撃が完結するような。懐かしいのはロナウジーニョを追い越しまくっていたジオである。ただし、クロスをあげてもゼロトップ気味&高さに強い選手がいないので、今日のメッシがヘディングしたような場面はレアである。

 そんなわけで、相手を圧倒しているようで、本当に圧倒しているのかという禅問答に苦しむバルセロナ。しかも、アウベスの裏に走るはロッシではちょっと不安が残るのも無理はない。しかし、今日のバルセロナは違った。いつのまにかカンテラ軍団&残されたのは献身的な選手ばかりということで、この試合は攻守の切り替えが尋常でないスピードで行われた。ボールを奪われたら、すぐに相手へ襲い掛かることで、バルサは攻撃のターンをビジャレアルになかなか渡さなかった。

 イブラがいる時代は守備がうまく機能しないので、4-4-1-1で引いて守ることも選択肢に入れていたバルセロナである。でも、この試合は違った。エトーを思い起こさせるようなペドロのプレスやアウベスのきついプレッシャーに、ボール運びに定評のあるビジャレアルは完膚なきまでに叩きのめされることとなる。なので、ロングボールでロッシたちにすべてを託すこととなったビジャレアルであった。ポゼッション&すばやい攻守の切り替えを復活させたバルセロナはちょっと強い。

 すばやい攻守の切り替えによって、バルサが手に入れるには攻撃のターンだけではない。一番おいしいのは、ショートカウンターの機会である。引いて守備を固める相手はバルサの攻撃に対して、準備万端で構えている。その状態が延々と続けば、守備側の集中力がゾーンに突入することもある。そんな彼らに一瞬の隙が生まれるのが、さあ攻撃だって場面。その隙でボールを奪い、速攻を仕掛けることが出来れば、バルサは強さを取り戻すだろうと。

 この試合の先制点も相手のボールを奪い返す→すばやい縦への展開によるものだった。今日のビジャのようなゴールが継続して生まれるようになると、バルサはイブラを出したメリットを享受できていると言えるようになる。なお、その直後にもスルーパスから追加点のチャンスを得たが、無常のオフサイド判定になくこととなった。

 で、この直後に失点してしまう。リプレーのせいで、状況が良く把握できなかったが、ロングボールを受けたニウマールが個人技で持ち込んで同点ゴールを決める。昨年のニウマールはビジャレアルのボール運びに上手く関わることが出来なかったので、あまり良い印象はなかった。しかし、2年目を迎えたことで、本人もリーガの空気に慣れたのかもしれない。ロッシとのコンビも上々なので、今後も期待が持てそうである。

 ■4-4-1-1

 後半のビジャレアルは攻撃的な守備をやめる流れになっていった。高い位置までプレスをかける→後方に撤退を繰り返せば、どんなにスタミナがあってももたないのは当然の理である。なので、前半に比べると、バルサはビルドアップで苦労する場面はなくなっていく。ただし、守備を待ち構えるビジャレアルなので、試合のペースは握っているが、なかなかチャンスは生まれないなという展開。

 前線がちびっ子&繋ぐことを信条としているためか、後半のビジャレアルは強烈に自分たちを試合で表現するようになっていく。特にゴールキックを愚直に繋いで運ぼうとする姿に、彼らのこだわりみたいなものを感じた。バルサのハードワークのレベルは世界最高峰のものだったが、それらを意地で交わしていくビジャレアルは凄いなと。そりゃ、途中で止められちゃうのだけど。特にバレーロは集中的に狙われていた。チームの中心だからしょうがない。

 で、追加点が生まれたのが58分。試合がファウルで止まった隙を見逃さなかったバルセロナ。すばやいリスタートで試合を再開すると、メッシとペドロが見事なワンツーで相手を破壊し、最後はメッシが相手のGKを冷静にかわすシュートでカンプノウに歓喜をもたらした。ちなみに、そんなメッシ君ですが、守備はめちゃくちゃ熱心ではありません。なので、シャビがゾーンを越える場面がちょこちょこ見られた。

 70分くらいにビジャ→ケイタ。ビジャも惜しい場面があったので、何で下げるのかなと疑問が頭をよぎったが、システムを見て解決。バルサは4-4-1-1にシステムを変更した。ちなみに、前線はシャビとメッシで、中盤の中央はケイタとブスケツである。このときのバルサはいつもよりも後方で相手を待ち構えて、カウンターを狙う作戦である。4-4でブロックを形成するメンバーにビジャを組み込むのはリスキーだもんねと。ペドロが重宝される理由はここだったり。

 試合をクローズしにかかったバルセロナ。ちゃんと追加点を入れるおまけつきで、難敵ビジャレアルを良い内容で凌駕した。4-3-3にこだわらない監督らしさも出てきていて、バルサの変化を追う追うのも楽しそうな雰囲気である。でも、個人的に印象に残ったのはビジャレアルの戦術。明らかに当たりなので、長く続けてもらいたいなと。たぶん、国内の評価も高いのだろうな。

 ■独り言

 クラシコに向けて、かなり調子が上がってきている印象のバルセロナ。それにしても、メッシはこの時期が一番調子がいい気がする。印象としては、初年度のグアルディオラ×バルサに近い。ただし、苦節して手に入れたメッシの中央も組み込んだ上なので、今までの経験を自分のものにしているところがえげつない。いつまでバルサの監督をやるんだろうね。そして、絶好調のイニエスタが見逃せない。間延びすれば、ドリブルでボールを運べるイニエスタの出番は増えるだろうな。今日みたいに。

posted by らいかーると |21:31 | バルセロナ/1011 | コメント(7) | トラックバック(0)
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バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : ELG00020552

こんにちは。
いつも拝見させてもらってます。

素人の僕は無情のオフサイド判定直後の相手リスタートでそのまま得点されて以降、前半残りをそれまでとは違って中々組み立てられなくなったバルサを見て、感情を制御出来る出来ないでプロでもプレーの質が変わるモノなんだなという点が面白かったです。
溢れてしまった感情の矛先はジャッジに向ったと思うのですが、見てる僕自身、ジャッジの基準がぶれているのでは?と疑いのまなざしで観ていたので、果たしてジャッジがプレーの質を変えたのか定かではありません。そもそも、プレーの質が変化してないのかもしれませんが。

そしてらいかーるとさんの批評、目からウロコです。
観戦していても気付けないシステム変更の攻防があった事を文章としてダイナミックに書かれていらしたので読んでて楽しかったです。

刻々と近づくクラシコに向け、両軍共に上向きな調子が否が応にもテンションを高まらせます。
怪我が無い事を祈るばかりです。

posted by 下手の横好きウォッチャー | 2010-11-19 00:12

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : OOH00018176

こんなにハードワークを続けられるバルサを久々に見た気がします。チーム全体のコンディションが上がってきてるのを凄く感じました。
ポゼッション型のチームが真っ向からぶつかるとこうなりますよという見本のような試合で楽しめました。惜しむらくはあのミスジャッジがなければもっといいものが見れたかなってとこですね。
たまたま現地でこの試合を観戦したあまりサッカーに興味のない友人が興奮して楽しかったと電話してきたんですが、イニエスタ凄いを連呼してました(笑)

あとバルサの試合を見ていつも思うのはバルデスのフィードがもう少し上手くなればバルサの強さってワンランク上がるような気がするのに、全く上手くならないなって事です。
ただこれはバルデスに限った事ではなくチェフやカシージャスといった世界最高峰のGKにも同じ様なことを感じます。
GKのフィード能力は練習で身につけるのは難しいんでしょうか?それともあまり練習しないのかな。

posted by bg1992 | 2010-11-19 13:45

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : OOH00020577

 こんにちわ いつも楽しく拝見させて頂いています。素人ですが今季のバルさについてちょっと気になることがあるのでお聞きしたいと思います。

 今回批評なさっているバルサですが、ビジャは3トップの左にいてることが多いように感じられます。確かにバレンシア時代でも左サイドにいることはいましたが、スタート時は中央だったように思います。バルサでの動きを見ていると、ボールを受ける前によく動いているように感じますが、ボールを受けて、ドリブル突破!とは中々できていないように感じます。ざっとした感想ですがあまりWGとして機能していないような気がするのです。どっちかっていうと一瞬の動き出してゴールをゲットするCFのような印象をもっていたので。まあ、バルサの3トップはチビッコ3人衆なので、コテコテの3トップとはかなり違うのでしょうけど。
 
 しかし、ビジャは中央の方が機能しやすいんじゃないかなー?と思っています。管理人さんはどうお考えでしょうか?

posted by かっか | 2010-11-19 16:40

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : NID00017514

バルサの鬼プレスに意地でもボールを繋ごうとするビジャレアルは面白かったですね。そこまでするかと。
ビジャレアルの試合は見てなかったのですが興味が湧きました。

posted by マドリディスタ | 2010-11-19 17:28

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : OOH00003601

もうちょっとボール持てるだろうと踏んでましたが、あのバルサのプレスはきつい。。。
久々に見ましたね、パスコースのないビジャレアルを。

ガリード監督は頑張ってくれています。ペジェグリーニ時代と比べるとほんと固くなったです。

posted by Nari | 2010-11-19 20:25

Re:バルセロナ対ビジャレアル 〜正面衝突!?〜

コメント投稿者ID : pablo

久々にあれだけのプレスを見ました。これはコンディションとの兼ね合いで大一番限定になりそうですが。
これだとペドロも替えが利かないところまで行ってしまうのかも。
ところでビジャの守備は上達すると思われますか?ただプレスかけるだけなら何とかなるのでしょうが、ポジショニングやらコース限定させたりとかは簡単では無い感じがします。

仰る通りビジャレアルは我慢を強いられても継続するべきですね。皆さんと同じく良い監督だと思います。

posted by pablo | 2010-11-19 20:54

バルセロナ対ビジャレアル ~正面衝突!?~

コメント投稿者ID : ELG00004025

こんばんは。

両チームとも、ディフェンスラインが高く、
これが現代的なサッカーなんだろうなと感じました。

その一方で、ビジャレアルの選手たちは、
バルサの選手にプレスをかけられても、パスコースを探すのではなく、
自らドリブルで突破しようとする場面が多かったので、
前へ行く意識の高さを感じました。

現代的なシステムと、
昔も今も未来も変わらないはずの、前へ行く意識の高さを、
両方とも堪能できる試合でした。

posted by anton54 | 2010-11-28 21:26

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