また、仕事になじめず、メンタルを病む若手記者がいることも事実である。朝日の中堅幹部によれば、「平均して、10人前後の総局に一人はメンタルヘルスに問題を抱えている記者がいる」というから深刻だ。
次に紹介するのは、大手紙のある支局での話だが、耳を疑うに違いない。その支局では、デスクが特定の記者を指しているとわかる形で、その記者を誹謗中傷するようなメールを、支局員全員に一斉送信したという。「被害」にあった若手記者はこう話す。
「私は時間をかけて人脈を作り、他紙が書かないような掘り下げた記事を書きたいと考えています。県庁の発表モノを引き伸ばして書けと指示を受け、それを拒否したところ、無視されるようになった。その挙げ句に、デスクは『日頃取材を優先してきた人も、たまには原稿を書いてください』という内容のメールを全員に送る。こんな会社は新聞社と言えるのでしょうか」
ちなみに、この記者の評価を取材先に聞くと、「できる奴」ということだった。しかし、社内評価では最低ランク。彼は「会社がいやになりつつあります。辞めようかと思い悩んだこともある」と打ち明けた。
こうした地方の「地盤沈下」を見かねたのか、朝日では、デスクの負担を軽減して、若い記者の指導に力が振り向けられるように「サブデスク制」を設けた。読売新聞も「メンター制度」を新設し、本社の中堅記者が地方の若手記者の悩みや相談を聞くようにしている。
本来、新聞記者はコミュニケーション能力を生かして、取材先から情報を得てくるのが仕事なのに、社内コミュニケーションのために、こんな制度を作らなければならないことが、深刻さを物語っている。
社内言論の自由すらない
人間関係が希薄になっているのは本社でも同様だ。地方紙から朝日に転職してきたベテラン記者は、社内のあまりの静けさに「ここは無人工場ですか」と驚いたという。かつてはデスクを中心に、記者たちが口々に自分の意見を主張し、議論するのが当たり前の光景だった。
それが一つの出来事を多面的に見る訓練にもなったし、紙面の深みにもつながっていた。そういう光景がなくなったのは各社とも似たり寄ったりの状況のようで、議論がなくなった代わりに陰口が増えたと語る記者もいた。
「会社に対する不満が外部に漏れないように『ツイッター禁止令』を出したところもある。残念ながら、言論の自由どころか、社内言論の自由すら、いまの新聞社にはなくなりつつあるんです」(大手紙の30代記者)
かつて新聞記者は、その高給もあって花形職業だった。それもいまや昔だ。たとえば、朝日新聞では今年9月末、68人が希望退職で社を去った。このうち編集部門は23人。デスクや編集局長補佐経験者もいた。ある朝日OBは解説する。
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