銀誓館襲撃〜天竜頭蓋:古き良き時代に捧げる供物


<オープニング>


 古都鎌倉――。紅葉に彩られたこの町を風流人がそぞろあるくこの季節。都会の喧騒とは異なるゆったりとした時間が流れるこの町。だが今は風流も雅もいっぺんで吹き飛ばされてしまったかの如く。
「野郎どもぉ! テキは目の前だ。用意はいいかぁ!」
 高々と掲げられる鉄パイプ。陽の光をギラリと跳ね返す鉄のチェーンにはどす黒い染み。爆音をとどろかせるバイクの一行が大路を走り去れば、丘の上の校舎を目指して長ラン、ボンタンの少年達が駆け上って行く。その数雲霞のごとし――とは、ガンをつけられた老人の言葉であるが、これだけのいわゆる『不良』が一体どこから湧いたのか……。
「長ランなんてとっくの昔に廃れたと思ってたのに……」
 昔学校が荒れていた時代を思い出すねと中年の主婦が怯えたように、身をひそめれば、
「しっ、銀誓館とかいうマンモス校の制服だってそうじゃないの」
 お茶を飲みに来ていた隣の主婦も声を低める。
「じゃあ、何? あれ、長ラン連合同士の喧嘩なの?」
「だから、しーっ。変なこと言って絡まれたらどうすんの」
 そんな彼女達の声はどうやら彼らの耳には届かなかったらしい。あっという間に家の前を走り去って行った黒い集団の背中を、おそるおそる目で追っていた2人の主婦の背中には季節に合わない汗がじっとりと滲んでいた。 

「さて、皆さん。ゆゆしき事態が出来しました」
 今岡・治子(運命予報士・bn0054)はいつもの青いファイルを開くことさえせずに、集まった面々を見渡した。
「ご覧のように我が学園は狙われております」
 窓の外の喧騒にちらりと目をやると、治子はすっと眉をひそめた。
「んー、まあ確かに見りゃ判んだけどさ〜」
 何だあいつら……片岡・友明(高校生竜虎・bn0125)も呆れたように問い返す。事態は確かに一目瞭然。学園の門の外に集まって破壊行為を繰り拡げているのは、どこからどう見ても典型的な『不良』だった。
「ああいうのは70〜80年代で絶滅したかと思っていたんですが……」
 長ランに鉄パイプ、チェーンにカミソリ――そういったアイテムをちらつかせる姿は、確かに彼らの祖父母が思い描く『不良』の図そのものである。
「けれど、彼らはナイトメアビーストの絶大なる影響下にあるのです」
 能力者達の表情に緊張が走る。学園に数々もたらされているナイトメアビーストの報告書。ああいう連中を使う者といえば……。
「『バッドヘッド』の天竜・頭蓋か……」
「ええ、ですから一般生徒や教職員では太刀打ちできないんです」
 元を問えばただの人間とはいえ、ナイトメアビーストの配下とあれば学園の方の被害も尋常ではないものになってしまう。
「幸い、今は結界の力で一般人へのごまかしは効いている状態ですから……」
「…………つまりその間に……」
「そう。蹴散らしてきてください」

「皆さんが対峙することになるグループは……」
 校門を少し入ったレンガ舗装の広場を疾走中である。真っ黒な長ランは金糸銀糸の刺繍入り。チーム名は『疾風迅雷電光怒涛』、人数は集まっているメンバーと同じ9名。
「……なに、そのツギハギ」
 能力者の1人が呆れたように息をつくと、治子もそっと肩をすくめてみせる。シプウジンライデンコウドトウ――語呂も今ひとつ決まらない名乗りではあるが、その文字の表す通り攻撃のスピードは天下一品らしい。そしてその攻撃手段も今は遠い昭和の香り高いものだとか……。
「彼らの武器は伸縮自在のチェーンとナイフ、そしてその長い裾です」
 彼らはナイトメア適合者ではないし、その武器は無論詠唱兵器ではないのだが、天竜・頭蓋の影響下にある限りにおいてはこちらの武器と同等のダメージを与えることが可能となっている。
「長ランは詠唱マントのようなものとイメージしてもらえればわかりやすいでしょうか」
 つまり彼らは近づけば刃物のようなマントで切りはらい、遠ければチェーンを使い、更には身体能力にものを言わせて、ナイフで自在に切りつけていくという訳だ。
「するってーと、要は力押し?」
 友明の唇は微かに笑みの形を作っている。正統派の不良という表現も奇妙なものだが、向こうが正面切って乗り込んでくるというのなら、条件は実に単純なものになる。
「ええ、まあ。ただチェーンに巻かれれば動きを封じられてしまいますし……」
 第一、パワーに素早さを備えているとなればその強さはゴースト並みといってもいい。

「で、なぜ今この時にナイトメアビーストが?」
 的戦力の説明が終わるのを待ち構えたように質問が飛ぶと、治子は再び軽く眉間にしわを寄せた。実際のところなぜ今、と問われると、天竜・頭蓋に聞いてくれというのが正直な気持ちだ。
「……狙いは恐らく『ティンカーベル』でしょう」
 配下の不良達を消しかけて、その間にメガリスを強奪する――それが天竜・頭蓋の描いている青写真。
「ですから、今回の不良達の後ろにはかなりの力を得た御当人自身がやって来ているはずです」
 つまり不良達との戦いは天竜・頭蓋との決着の前哨戦のようなものなのだ。であるからには失敗は許されない。彼の手足となっている不良達を排除し、ティンカーベルを守り抜くこと。ひとまずはこちらの地歩を確保しなければならないのだ。
「加えて学園には一般生徒がいます」
 無論彼らには一切の事情が知らされない。故に一般生徒の目の届かないところで闘うか、何らかのごまかしができれば上々だ。
「ごまかしっつってもさ〜」
 ぶつぶつ言う友明を周囲のもの達はまあまあとなだめる。自主映画のロケとか武道系クラブの他流試合とか、理屈と膏薬はどこにでもつくものだから……と。
「ともあれ、こちらに乗り込んできたからには、ね……」
「ん〜、わーった! 売られたケンカは買わなきゃ男じゃねぇ!」
「よろしい」
 勢い込んで立ち上がる友明に治子は嫣然と笑うと、音もなく教壇を降りた。そしてにこやかに能力者達に一礼する。
「嵐だろうと雷だろうと、飛んで火にいる何とやら……」
 ナイトメアビーストに思い知らせてやってくださいね――そんな声に送られて能力者達は駆けだしていった。

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参加者
蜜月・杏奈(あんみつ姫・b00657)
神室・光(蓮葉・b03118)
アリシア・マリンスフィア(星屑の鉄槌・b22046)
桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)
上尾・亜衣(アイから始まる名前・b25928)
ネフティス・ヘリオポリス(屍人の花嫁・b31266)
山崎・ましろ(雪風桜の小命婦・b45247)
夜咫・晶(獅子の思いを映す銀鏡・b53016)
NPC:片岡・友明(高校生竜虎・bn0125)




<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

蜜月・杏奈(あんみつ姫・b00657)
苗字+君、さん
保育系短大在学中

◆心情
卒業以来、本格的なゴーストの討伐とかからは離れていて、状況はよくわからないのだけれど…
やっぱり母校の一大事となると、じっとしていられないの

不良…
こんな事をしていて大丈夫なのかな…?
今の時期、勉強しないと大変なのに…

あの子たち、将来こんな風になって欲しくないな…(実習先の園児を思い出し)

◆一般人
攻撃から庇う
仲間と口裏を合わせて、避難を促す

◆戦闘
特に前衛後衛の拘りなく行動
主にHPの低い使役使いや、ダメージの深い仲間の近くにポジショニング

まずは魔弾の射手で術式を強化
凌駕後等で効果が切れたら都度使用

ヤドリギの祝福の回復効率を上げるため、弱った仲間を庇う等で適度にダメージを引き受けつつ…
ダメージが回復量より多い仲間の中から、残りHPが低い物を優先に回復
序盤なら神秘強化をより活かせる者も優先

回復の必要がない時は…
まずは頭数を減らすよう、近くの狙い易い敵・よりダメージの深い敵を優先し攻撃
半数程に減ってきた頃にリーダーを叩く
術式・神秘のどちらが有効かを見極め、相手に合った方で攻撃
エンチャントのかかった厄介な相手や、集中攻撃を受けている仲間の援護には雷の魔弾

ただし雷の魔弾はリーダー攻撃用に1撃は温存


◆天竜・頭蓋との戦闘準備
倒した人から、本陣の戦力とか罠とか能力を聞き出すとかかな?
まさかこの戦いが陽動だったりしないよね?

念の為、射手1回とヤドリギを4回程温存
敗北に関わる場合撤廃

神室・光(蓮葉・b03118)
■心情
こういうノリの奴等は嫌いじゃねぇが、
学園荒らされんのは勘弁だしなぁ。つか、古くせぇし。
いっちょ派手に返り討ちしてやっか!

■一般生徒対策
大がかりな撮影と偽る。
片岡の王者の風の後、協力頼むなー等と声をかける。

■戦闘
前衛担当
桐嶋先輩、マリンスフィア、片岡、セト

ライカンスロープで強化後、クレセントファング奥義を使用。
確実にダメージ与えてくかね。
回復役の密月や夜咫に攻撃がいきそうな場合、
グラインドアッパーで吹き飛ばしを試みんぜ。

【攻撃の優先順位】
・リーダー各を除いた8人中4人を倒すまで
→前衛組を中心に、範囲攻撃でダメージを負った者を優先
・4人以上倒した後
→深手を負った者>リーダー

人数を早く減らしていくことを念頭にやってくぜ。
向こうに回復手段がない分、
どいつに攻撃が当たったとか注意深く見て攻撃してく。
早く気付けた場合はメンバーに大声で伝える。

体力が半分切り、回復役のアビ残数が半分を
切っていた場合はライカンスロープで自己回復

■撤退
半数以上が戦闘不能かつ回復アビ残数ほぼ無し
更に敵に余力がある場合

■天竜戦準備
リーダー各辺りなら有力な情報知ってそうだし、
聞き出してみっか。
まあ簡単には言わねぇだろうから、
「そのバイク、ばらしてもいいんだな」なんて脅す。

自分たちの準備としては、体力回復と敵本陣に対しての警戒。
それと、今回以上の一般生徒への根回しか。
これから本格的な撮影に入るから、とか言ってみっかな。

アリシア・マリンスフィア(星屑の鉄槌・b22046)
心情
運命予報にも引っかからず、ここまで銀誓館に肉薄するとはな
やはり奴らは油断の出来ない相手だ。
「ふん、ここが銀誓館のシマと知ってカチ込んでくるとは良い度胸だ…」
「…ん?こういう時はこう言うのがお約束と聞いたのだが。違うのか?」

戦闘前
戦場に向かう時、一般生徒達に
「自主映画の撮影なのでカメラに映らないよう離れてもらえないか」
と声を掛け、退避を促す
カメラはアクセサリ装備の物を見せる
ついでに高校男子生徒がいたら上着を借り受けたい
長ランを羽織って行けば不良同士の抗争に見えるだろう。
偽装の為だからな?決してノリノリなんかじゃないぞ、うん。

戦闘
「止まれ……ここから先へ進みたければ我々を倒していくのだな」
前衛/積極攻勢
イニシアチブで仲間を牽引し、相手の出鼻をくじくことを狙う
初手は相手に接近して近接攻撃
次でラジカルフォーミュラ
後はクレセントファングを積極使用
「速さと鋭さで、負ける訳にはいかんのだ!」
攻撃優先度は
近くに居る>負傷している>他
取り巻きを半分減らした時点でリーダーを狙うべきか、そのまま取り巻きを殲滅するか判断
判断基準は敵味方の負傷度、残りアビ等
相手の集中攻撃を受けている仲間がいないか気を配り
間に割り込む等でフォローする

※戦闘に影響しない範囲で、あまり超常的な立ち回らないように気を付ける

勝利後
倒した不良達に意識があれば、敵本陣の戦力や天竜頭蓋の様子などを尋ねる

桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)
疾風迅雷、電、電……。めんどくせぇ、こいつら。長ランでいいや。
母校荒らされて、センセーや後輩にまで手ぇ出されるとかさぁ。
……卒業生的にはカチンとくんだよなぁ、オイ。


前衛で、黒影剣奥義で近接攻撃を。
初手で接敵可能ならすぐに攻撃を。不可能なら旋剣の構えで強化後に攻撃開始。
序盤は「前に出てくる者、中でもより負傷が激しい者」を優先し、可能なら後衛に行かせない様に足止め。
孤立しない様に敵1〜2人を前衛仲間と連携して相手したい。
『荒らしまくってくれた分、全部返すぜ。遠慮しねぇし、させねぇ』

手が空いた時、近くで仲間が孤立していたら、すぐに加勢して攻撃で援護する等のフォローを。

始めに4人倒した後は、近くにリーダーがいればそちらを優先、
距離が届かなければ近くの深手を負った者を優先して攻撃。
黒影剣奥義が切れたら気魄攻撃で続行。
HPが防具分を下回り、味方からの回復が期待できない場合には旋剣で回復。
『……まだまだだっつーの。こっからだろうが』

戦闘後は不良たちに天竜の居場所を吐かせてみる。
『おい。お前らの総大将……天竜って奴の居場所、教えろ』

【NPCへの指示】
王者の風を使い、一般生徒や教師達に
『自主映画の取り直しが難しいシーンを撮影するから、屋内の安全な場所に移動してくれ』
と指示を。

前衛で虎紋覚醒での強化や自己回復、龍顎拳奥義(回数切れたら気魄攻撃)での攻撃を。
近くの人との連携や、孤立した人のフォローもお願いしたい。

上尾・亜衣(アイから始まる名前・b25928)
白昼堂々とんでもないの…!
怖い人ばっかりだけど…銀誓館に手出しはさせないもん!

●一般人対策
近くにいる人達には、大掛かりな撮影で危ないから近付かないで、って説明
別の角度からもカメラが回ってるから、絶対に映らない場所まで急いで離れてね
途中こっちに来る人がいたら、ついでにそう伝えてもらえると助かるの

それから、念の為ぴーぴ(モーラット)には猫耳と尻尾を装備しておいてもらうの
これで万が一見られても、何処からどう見ても立派な…
…猫…?

●戦闘
倒す優先順は、まずは手下さんから4人を目安に削って、それからリーダー、最後に残った人達、の順を基本に
ただし、4人倒した時点で他にすぐ倒せそうな人がいたら、そっちを先に倒しちゃうね

私は後衛から雑霊弾
受けてるダメージが大きい人を皆で集中攻撃するよ
ぴーぴのHPが半分を切ったら、ゴースト治癒で応急処置

ぴーぴには中衛からペロペロなめるで皆の回復を手伝ってもらうね
私が超麻痺になっちゃったら、祈りを捧げるもお願い
もしも前衛の手が足りない時には、前に出てパチパチ火花で攻撃に回ってね

●戦闘後
天竜頭蓋の居る本陣の場所と、規模と戦力と……知ってる事、全部話して!
疾風迅雷…えぇと、不良の人達から情報を聞き出せたら、一先ず休憩を取って体力を回復しておくよ
陽動の可能性も考えて、こっちも体勢を立て直したら構内を警戒しに行きたいな

●撤退条件
戦闘不能者が半数以上で、押し切れる見込みがない時

ネフティス・ヘリオポリス(屍人の花嫁・b31266)
…能力者でない方まで巻き込もうとは…許せませんね…
(でもチーム名がちょっとかっこいいなあと外人的センスで思いつつ)
…意味は、わかりませんが…

◆事前
映画撮影と言って人払いをしておく
使役の名前はセト

◆戦闘
・2人共通
序盤は前衛の近接範囲内でよりダメージを負っている者を狙う
敵を4体倒したら、深手を負っている者>リーダー>その他の順で優先的に攻撃

・ネフティス
後衛
序盤は敵前衛を狙い
なるべく後方の敵の射撃が届かない位置へ

初手でゴーストガントレット
…パワーも見た目も、負けません…セト、行きましょう…

以降は穢れの弾丸での攻撃
セトのHPが600前後になったら回復

ゴーストアーマーを優先的に使用
ブレイクされたらゴーストガントレット

ナイフを構える敵の動きに留意
前衛より後ろの者にナイフ攻撃が及びそうな場合はセトに庇うよう指示
セト、お願い…!

・セト
前衛、壁となり敵の侵攻を防ぐ

初手でファイナルキャノン
以降は敵が7人以上でファイナルキャノン、
それ未満ならパワーナックルを撃つ
封術時は気魄攻撃
…鉄拳制裁です…!

ネフティスがマヒし、舞でも回復しない場合に限り祈りを捧げる

◆撤退条件
半数が戦闘不能かつ他メンバーの回復残数が尽きかけ
まだ敵に余力があると判断した場合

◆事後
可能ならリーダーから頭蓋の居場所、戦法、狙い等、情報を聞き出しておく
…あとはカシラを討つのみ、ですね…

◆補足
表情の変化に乏しい
セトには対等に接し命令口調は使わない

山崎・ましろ(雪風桜の小命婦・b45247)
「うわー、うわー、再放送のドラマみたいです!見比べると最近の不良さんはすたいりっしゅなのです」

・戦闘
位置は後衛
リーダーへの攻撃はまず4人倒してからです
初手から吹雪の竜巻を使って魔氷の重ねでの全体へのダメージ蓄積を狙いますです
集中攻撃は前衛の届く近接からになるので、全員を範囲に含める事で集中対象になっていない後衛への蓄積を少しでも大きくするです
近接全周でこちらの多数へのダメージが重なるようなら、十絶陣での攻撃を兼ねた回復を
雪達磨はエンチャントより回復として使って、少しでもこちらの攻撃の手数を増やせるように
「凍てつき果てよ、来たれ六花の風!」

向こうからの集中攻撃に備えて、相手の攻撃時にはできれば回避やガードできるように身構えておきますです

・一般人
そこはカメラに入っちゃうですー!…と先輩の王者の風に合わせて撤退をうながします
できれば建物の中にいてくれた方が安全なのです

・天竜頭蓋
何時何処からくるかわからないですから、まず回復を
封神十絶陣を不良たちを対象に入れず、回復としてのみ使いますです
それから周辺の様子を警戒することで、さらなる奇襲を警戒しますです
リーダーから聞き出す間にも近づいてくるかもです

・撤退条件
半数が戦闘不能
その場合、一般人を庇うように移動しますです
できれば、そんな事にならないように気合を入れなきゃ…!

夜咫・晶(獅子の思いを映す銀鏡・b53016)
学園の人に、迷惑掛けるの、駄目、です。
絶対、止めて、みせます。
「(珍しく、しっかり、前を見て)……守りましょう、絶対に……」
……ところで、相手の方々、なんと言う名前でしたっけ……?
(心配そうに相手を見て)舌、噛みませんか?

映画の準備の言い訳の時は、ADさんみたいに、小道具に見えるものを、持っておきます。

戦闘になれば、最後衛の位置で、皆さんの、回復を中心に行います。
優先順位は、下の通り、です
あと一撃で倒れそうなくらい傷が深い人への祖霊降臨>超マヒの回復>やや軽めの傷の回復
「皆さんを、守ります」
「支えは、任せて、ください」

デルタくんは、相手の範囲攻撃に、巻き込まれないよう、味方に近付き過ぎずに、最初は、中衛的な位置に、居てもらいます。
集中攻撃中の相手を含めて、出来るだけ、多くの相手を巻き込めるよう、アイアンチャージを、使ってもらいます。
また、前衛を抜けて、後衛に向かう、相手が居るようなら、そちらに向かって、連爪撃などで妨害をお願いします。
私を含めた数名が、超マヒの場合、最優先で、私に祈りをささげて、貰います。
「デルタくん、あの人を、お願いします」
「悪い子は、ガブリと、お仕置き、です」

戦闘後は、相手の人たちに、天竜さんの、目的と、今何をやっているかを尋ねたいです。
目的が、何にせよ、力押しだけで、叶えられるとは、思っていないでしょうし、今回が陽動ならば、対応は、早い方が、いいでしょうし。

片岡・友明(高校生竜虎・bn0125)(NPC)
 このキャラクターはNPC(マスターのキャラクター)です。プレイングはありません。




<リプレイ>

●最も平和であるべき場所で
 古都鎌倉に紅葉散り敷く昼下がり。文人墨客が愛したはずの歴史の町にこだまする無粋などら声。人知れず世の平和と結界の秩序を守る銀誓館学園は今十重二十重に囲まれている。
「わかってんな、てめーら!」
「おー、我らが天竜・頭蓋さんのために!」
 じゃらりと鳴るチェーンの音、ギラリと光を跳ね返すナイフ。とりどりに染められた髪は叩けば音がしそうなリーゼントであったり、モヒカンだったり――。
「うわー、うわー、再放送のドラマみたいです!」
 そのまま空へ飛んで行ってしまいそうな勢いで山崎・ましろ(雪風桜の小命婦・b45247)はぴょんぴょんととび上がる。
「見比べると最近の不良さんはすたいりっしゅなのです」
 闘いに赴く能力者達の肩越しに見える『不良』達は確かにスタイルと個性という点では確かに群を抜いているかもしれないが……。
「……すたいりっしゅ、なあ」
 毒気を抜かれたように呟いたのは片岡・友明(高校生竜虎・bn0125)。落ちかけたその肩を神室・光(蓮葉・b03118)がポンと叩く。
「こういうノリの奴等は嫌いじゃねぇが、学園荒らされんのは勘弁だしなぁ。つか、古くせぇし」
「……卒業生的にはカチンとくんだよなぁ、オイ」
 母校荒らされて、センセーや後輩にまで手ぇ出されるとかさぁ……校門めがけて駆けていく桐嶋・宗司(深黒晦冥・b25663)の足もどんどん早くなって行く。
「ふん、ここが銀誓館のシマと知ってカチ込んでくるとは良い度胸だ……」
 アリシア・マリンスフィア(星屑の鉄槌・b22046)の笑いも不敵そのもの。自主映画の撮影用にと一般生徒から借りてきた高校男子の制服を肩にかけたその姿は、向かい来る敵――不良達を相手にとっても堂々たるものだ。ことここに至るまで予報士に察知もできなかったとは敵もさるもの。油断のならない相手であることは百も承知であるけれど、自分達の本拠地に飛び込んでくる愚かさを教えてやるにはいい機会といえなくもない。
「いっちょ派手に返り討ちしてやっか!」
 光がにっと笑えば宗司も友明も勢いよく頷いて。
「うっしゃ!! 首洗ってまってろよ!」

 校庭の付近にいた一般生徒達は既に避難を促してある。今を去ること数分前、能力者達はそれぞれの言葉で一般生徒達を現場から遠ざける。
「……能力者でない方まで巻き込もうとは……許せませんからね」
 そんなネフティス・ヘリオポリス(屍人の花嫁・b31266)の呟きを受けて、宗司はにこやかに女子生徒の一行に声をかける。
「自主映画の取り直しが難しいシーンを撮影するから、屋内の安全な場所に移動してくれ」
「カメラに映らないよう離れてもらえないか」
 とはアリシアの言。蜜月・杏奈(あんみつ姫・b00657)が歩調を合わせて説得に回ったところを、ダメ押しに友明が王者の風を――これならば多少のことがあっても何とかごまかしがきくだろう。
「白昼堂々とんでもないの……!」
 だがいくら怖い人ばかりでもここに手だしなどさせない――決意も新たに上尾・亜衣(アイから始まる名前・b25928)が武装を整えれば、
「……守りましょう、絶対に……」
 懸命に前を見据えて、夜咫・晶(獅子の思いを映す銀鏡・b53016)も真ケルベロスのデルタの金色の背中を押した。

●疾風怒涛の如く 
「疾風迅雷電光怒涛!! 見参!」
 彼方ではずらりと並んだ長ラン軍団が、しきりと怒声をあげている。『舌、噛みませんか?』と小さく問うた晶の声などあっさりとかき消して。
(「でもチーム名がちょっとかっこいいなあ……意味は、わかりませんが」)
 口々に叫ばれるチーム名。難しい字面の漢字が並ぶイメージは外国生まれのネフティスには興味深い。もっともそんなことを云々している間もなく、両者はあいまみえようとしていた。

 疾風、迅雷、そして電光――全ては駆け抜けていく速さを誇るもの。だがマントにも似た長ランをはためかせる怒涛の軍団よりも、アリシアはさらに早かった。
「止まれ……ここから先へ進みたければ我々を倒していくのだな」
 接近戦を仕掛けるにはやや距離があるその位置で、アリシアは果てない演算プログラムを自らの瞳に宿す。そんな彼女の背中にぴたりと付いていったのは宗司と杏奈。
「こんな事をしていて大丈夫なのかな……?」
 今の時期、勉強しないと大変なのに……言わずもがなの呟きに、魔法陣の輝きが重なる。保育士を目指している杏奈にしてみれば迫りくる長ランの集団も心配の対象となるものなのか。だが無論不良達がそれに深甚なる感謝の意を示すことなどあるはずもなく、古式ゆかしく名乗り等上げ始め。
「今、ここにィ、正義の鉄槌を――」
「下さんとする、われら疾風迅雷電光――」
 古き良き時代の不良には様式美というものが確かに存在していたのかもしれない。
「……めんどくせぇ、こいつら。長ランでいいや」
 無敵の構えを取りながら吐き捨てるように断言する宗司に、ネフティスはくすりと笑みを零す。だがやはりそれもほんの一瞬のこと。
「……パワーも見た目も、負けません……セト、行きましょう」
 傍らの真フランケンシュタインFWの腕にはネフティスが作り上げた闘気のパーツ。そのセトの向かう先には宗司、アリシアら前衛陣の背中が見える。そしてすぐ後ろにはそれぞれに狼虎の気を纏う2青年。
「支えは、任せて、ください」 
 中衛を張る亜衣の傍らにデルタをそっと向かわせて、晶は声を張った。

「速さと鋭さで、負ける訳にはいかんのだ!」
 銀色の月がトウモロコシ色の髪の男の上に輝く。自分に何が起こったのか果たして彼は理解することができただろうか。長い裾がふわりと天へと翻った。神速の蹴りに大きくのけぞったのだと知ったのは数瞬のち。その時には既に宗司の踵の刃が真っ黒な闇で覆われ、金色の獣が肉薄していた。
「!?」
 それまで一方的に痛めつけるだけだった不良達の目に困惑に近い色が浮かんだ。3人の攻撃を浴びたトウモロコシ頭は防戦に回らざるを得なかった自分が信じられないとでも言いたげに身を起こし――。
「……」
 だがその時にはネフティスの漆黒の弾丸がぴたりと狙いをつけ、セトのキャノンが火を吹いていた。
「「な、なにーーっ」」
 不良達の驚愕の声が秋空に響く。だが季節はましろの吹雪によってあっという間に進んでしまう。雪は全ての敵を巻き込んで、この世のものならぬ氷でその体を覆う。尋常ならざる事態にパニックを起こしかける連中をよそに、光は高速の蹴りを、亜衣は雑霊達の弾丸を――。勝利の女神は一気に能力者達に微笑むかに見えた。

●迅雷の走るがごとく
 能力者の壮麗な技で幕を開けた闘い。しかし相手は腐ってもナイトメアビーストの手先である。一時の劣勢からの立ち直りは常の人にはあり得ぬものであった。
「げっ」
 避ける間もなく友明の右腕に錆の浮いたチェーンが絡む。鎖の主を確かめるべく顔をあげればそこにはみごとなスキンヘッド。ボスかと思う時間すら与えられずに少年の体は自由を失う。後を追うようにアリシア、宗司にもチェーンの麻痺が襲いかかり……。いきなり3名もの戦力を封じられてしまったことに、晶は血の気が一気に引くような思いを覚えた。だが窮地はそれだけでは終わらない。動けぬ友明に別のナイフが襲い、長ランの裾が刃と化して件の3人を薙ぎ払い、更には光、セトまでがとらわれるに及んでは、先手を取った余裕などないも同然になってしまう。
「回復を……!」
 杏奈は唇をかむ。自分の技では仲間を麻痺から救うことはできない。ならばせめて傷だけでも……癒しの力のこもる祝福は動いた後には使えない。杏奈はすぐにでも駆けよりたい衝動を抑え、友明に力を宿し、ネフティスはセトの腕に新たなガントレットを取りつけた。
「すぐに……助けます……」
 晶もすぐに呼吸を整えて常緑の枝を一振り、二振り。年に似合わぬ優雅な舞いは光の自由を取り戻し、自力で麻痺を振り払ったアリシアと共に前線の防衛に奔走する。亜衣の真モーラットピュアぴーぴもぱちぱちと火花を爆ぜて、前線が崩れるのを防ぎにかかる。
「まずは……1体」
 銀色の三日月が細く消えていくのを目の端に眺めつつ、アリシアはほっと息を吐く。チェーンがもたらす麻痺の恐ろしさは身を以って知った。確かにあれに絡め取られれば戦線などあっという間に崩壊してしまう。だが、個人個人の力を見れば決してこちらが劣る訳ではないように思う。
「なら、少しでも早く削るのです!」
 その数も、体力も――ましろの吹雪は使い手の意思のままに不良達を取り囲み、亜衣は最も傷深き者を穿つべく雑霊達を呼び集める。こちらが数を減らすのが早いか、敵がこちらを食いつくすのが早いか、勝負はこれからが佳境。
「ふははは……。何度でもやってやる! 覚悟しやがれ」
 ばさりと大きく長ランはがはためく。前を守る者達の頬に赤い血が飛び散り、別の1人のチェーンがさらに友明に麻痺をかける。銀色のナイフはぴーぴを狙って空を切り、最後の1人が再び大きく長ランの裾を揺らした。確かにこれは楽ではなかった。
「けど、覚悟しやがれってのは、こっちの科白だろ?!」
 再び麻痺に囚われる寸前に友明は叫んだ。もちろんと光の足が流麗なステップを踏む。傷ついた者により大きな傷を――その蹴りは鮮やかな弧を描き、銀色の軌跡を残す。2人目の不良はその光の下に力尽きていった。
「荒らしまくってくれた分、全部返すぜ」
 遠慮しねぇし、させねぇ……宗司の刃は罪人の首をはねるもの。それが漆黒の闇を帯びるとき、彼は冷酷無比な処刑人の顔になる。力を封じ込められていた反動を一気に載せて、漆黒の剣戟が3人目の男を切り裂きにかかる。仲間を救うべく舞いつづけていた晶の目には、それは天の断罪のように映った。
「すごい……」
 範囲攻撃で削られていたとはいえ、敵を一気に死の淵に追い詰めてしまった腕前にはただただ感嘆するほかはない。自分にはああいう強靭さはないけれど……だが強さにも様々あることを晶は知っていた。ものを砕くのも強さなら、何度でも立ち上がる力を与えることもまた強さ――晶の舞いはそれを証明するかのように、残る仲間の麻痺を全て霧散させていった。

●古き時代を封じよ
「……セト……鉄拳制裁です……!」
 自由を取り戻した広くたくましい背中に、ネフティスの静かな声が通った。闘いの場とは思えない程の穏やかさには仲間を安堵させるものがあったが、その指輪から生まれる弾丸は真っ黒な穢れに満ちみちて。チェーンを再び振り回そうとしていた1人に吸い込まれるように消えた弾丸は深々と黒い穴を穿つ。傷口からじわりと広がって行く紫が強い毒がまわっていることを教えてくれた。追い打ちを……前衛陣の目に強い光が宿る。だが次の瞬間、彼らが手を下す必要はなくなっていた。セトの強力な打撃が気持ち良いくらいの勢いで不良の体に吸い込まれていったのだ。
「……そろそろか?」
 4人目が片付くのが時間の問題だとしった前衛陣の間で素早く視線が交わされる。取り巻きが半減したら余力のあるうちにボス格へ。作戦の転回点がいまやってこようとしているのだ。
「行こう!」
 光の声が全てを決定した。その瞬間、ましろの吹雪が銀誓館の庭先に吹き荒れる。ホワイトアウト――全てを覆いかくす冬の白はこの時も残る5体を極寒の地へと落とし込む。吹雪の音色は終焉への前奏曲。杏奈はヤドリギ使いの祝福をぴーぴに与え、来るべき時に備えた。
「俺を倒そうなんぞ、百年早いわ!」
 一騎当千の俺が蹴散らしてくれる……向かってくる能力者達にボス格の男はマントを翻す。鋭利な刃物と化した裾は容赦なく前衛陣を切りつけたが、それは彼らも覚悟のうち。
「百年っていや、長いもんだけど」
 全身に虎の紋様を浮かび上がらせた友明がいえば、ましろもふわりと笑んだ。
「あの人の百年目が、今来たのです」
 もうおしまいなのです……その呟きに重なるのは漆黒の剣戟、光の神速の蹴り。後に残された光跡は夜明けの空を飾る逆の三日月のような――。
「うん、銀誓館に手だしはさせないって、言ったよね?」
 掌にふわりと丸く集まる雑霊達。亜衣の気弾もまた迷うことを知らずにボス格へ。ここには大切な人がいて、そして大切な思い出があるのだから。
「見届けてやるよ……」
 お前達の無謀さと愚かさを――。アリシアの足が大地を蹴った。それに引かれるようにして光の足も空を飛ぶ。二筋走る三日月が銀色の弧を描くのに、宗司は闇を纏った一撃を合わせた。一瞬の夜に輝く刹那の月。それは目を見惚れる程に美しく、ネフティスは我知らず感嘆の吐息を洩らしていた。
「……セト」
 静かな声が遭い方を呼ぶ。真フランケンシュタインFWが声でそれに応えることはない。だが、貫く漆黒の弾丸にセトはその拳でもって忠実に応えた。
「……なぜだ! なぜ、俺がァ……」
 長ランの裾が重たげに大地を打った。がくりとついた膝、もはや2本の腕では満身創痍の体をさせることはできない。レンガの道にうつぶせたスキンヘッド。その後頭部に黒々と残る一騎当千の文字。もう何の意味も持たないその文字をましろは色なき吹雪で覆い隠す。
「凍てつき果てよ、来たれ六花の風!」
 核を失った不良達にもそれは容赦なく降り注ぐ。支えの無くなった不良チームは疾風怒涛の勢いとも電光石火の激しさとも無縁だった。そして――能力者達の攻撃はとどまるところをしらない。
 友明の拳が右側の男に吸い込まれれば、亜衣の操る雑霊達が止めをさし、反対側ではアリシアの蹴りと宗司の剣戟とが鮮やかな連携を見せている。
「デルタくん、あの人を、お願いします」
 息をつく暇を与えないように――デルタは主の願いに完璧に応えた。幾度も幾度も走る獅子の爪。どさりと倒れたその体に走った傷の数は数えることさえ無駄に思えた。
 1人、また1人。倒れて行くのは不良達のみ。終わってみれば始めの苦労が嘘のように能力者達は完全な勝利を収めていたのだった。

「……まさかこの戦いが陽動だったりしないよね?」
 天竜・頭蓋本人が来ているともきいているけど……累々と倒れたままの不良達を見つめながら杏奈は呟く。
「こいつら、起こして聞いてみるか?」
 アリシアがボス格を引き起こせば、宗司が頬を叩いて覚醒させる。
「おい。お前らの総大将……天竜って奴の居場所、教えろ」
 だがスキンヘッドの男はまだ答える気力すら取り戻していない。他の不良達もどうやら似たり寄ったりの状況らしく、一向にらちがあかない。
「こうしている間にも……」
 敵は近付いて来ているのかもしれないです。ましろは十絶陣を皆に施し、全身で敵の気配を探る――。と遠くで大きな声が上がった。それが新たなる襲撃の幕開けであることを彼らが知るのは、後ほんの少し未来のこと。戦闘が終わった安堵とは程遠い何かが、ひたひたと能力者達の心を打ち始めている……。


マスター:矢野梓 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2010/11/30
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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