「ギャグ2本行くぞ!!」(アスベル) 「お~!」(ソフィ)
作者:夕月 白夜 | 初掲載日:10/11/28 18:40 | 最終更新日:10/11/29 00:00
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- テイルズオブグレイセス[テイルズ] [タグ編集]
I LOVE KANITAMA
「リチャードは、カニタマ好き?」
リチャードと一緒にお茶を飲んでいたソフィが突然そう尋ねた。
「……急にどうしたんだい?」
久しぶりに会った小さな友人の言葉に、リチャードは心のそこから不思議そうな顔をしている。
「あのね、アスベルはカレーが好きで、シェリアは焼き鳥丼が好きなんだよ」
「そうだね」
「ヒューバートもパスカルも教官も、好きな食べ物、カニタマじゃないの。
しかもね、ラムダはチョコレートプリンが好きなんだよ」
「まぁ、人それぞれの好みがあるからね(ラムダにも好みがあったのか……)」
いまだにソフィが何を言いたいのか分からないリチャードは、内心首をかしげながら相槌をうつ。
「だからね、私、カニタマが好きな人探しているの」
「へぇ……」
「一緒にね、カニタマについていっぱいお話しするの」
「……」
ソフィの目が輝いている。
もしかしたら仲間達と一緒にいる時よりも、輝いているかもしれないと思うほど。
「それでね、いっぱいカニタマ友達を増やして、カニタマの祝日を作るの!」
「…………」
リチャードはティーカップを持った体制のまま固まった。
「カニタマ友達をいっぱい増やしたら、きっとカニタマの祝日も作れると思うの!」
「……………」
「ううん、カニタマ友達がいなくても、そろそろカニタマの祝日を作ってもいいと思うの!」
「………………」
きらきらきらきら。
ソフィの目が非常に輝いている。
これはいったい自分にどうして欲しいと言っているのだろうか?
自分もカニタマが好きだと言えばいいのだろうか?
だからカニタマについてたくさん話をしてやればいいのだろうか?
むしろ、自分の権力を使ってカニタマの祝日を作れと言っているのだろうか?
きらきら輝いたソフィの顔を見ていると、思わず「よし、作ろう!!」と言いたくなる。
が、待て。
とりあえず落ち着こう。
でなければ、とても一国の王としてかなり曲がったいや、ひいきな判断をしてしまいそうな気がする。
ソフィのような純粋で優しいな子が、計算して自分に言っているはずがない。
必ず裏で糸を引いている奴がいるはずだ。
「……ソフィ」
「なに、リチャード?」
「その話、他の人とかにもした?」
「うん。この間ね、教官が遊びにきた時にお話したよ」
ほんわかした笑顔を浮かべながら嬉しそうに報告するソフィ。
「……マリクか」
逆にリチャードはなんとなく原因が分かってきた。
「彼は何て言ったんだい?」
「あのね、その話をリチャード陛下にもしてみろって。リチャードなら王様だからカニタマの祝日なんて簡単にできるぞって言ってた」
「へぇ……」
……あのやろう。
次にバロニアに来た時が最後だと思え。
リチャードの背後が、ラムダに寄生されていた時のように真っ黒に染まる。
事実空気は一瞬で黒に染まった。
だがソフィはそんなことには気づかず笑顔で続けた。
「リチャード、カニタマの祝日、作れる?」
作ってくれると信じて疑わない笑顔。
「うっ……」
すごくいいよって言ってしまいたい。
こんな無垢な笑顔を浮かべる子に、駄目なんて言いたくない。
「ソフィ、リチャード?ここにいたのか」
内心押し問答をしながら優雅にお茶を飲んでいたリチャードに、天の助けが来た。
「あ、アスベル!」
満面の笑みを浮かべて、部屋に入ってきたアスベルに駆け寄るソフィ。
そんなソフィの頭をぽんぽんと撫でながら、アスベルはリチャードに近づくと不思議そうに声をかけた。
「リチャード。ソフィと何話してたんだ?」
「ああ、いや……」
「あのね、リチャードとカニタマについてお話してたの」
言いよどむリチャードに代わって、声を上げるソフィ。
「カニタマ?」
「うん、カニタマの祝日を作ってもらおうと思って」
また純粋無垢な笑顔でリチャードを見るソフィと、困ったように苦笑を浮かべるリチャードを見て、アスベルはため息をついた。
「ソフィ。その話は諦めろって言っただろ」
「でも、教官はリチャードに言えばいいって言ったよ?」
「その後、シェリアとリチャードには言わないって約束しただろ」
「あ、そうだった……」
カニタマの事となると熱くなってしまい、すっかり忘れていたらしい。
「ごめんね、リチャード……」
しょぼん……とした様子で頭を下げるソフィ。
まるで犬が耳を垂らして落ち込んでしまったようだ。
「いいんだよ、ソフィ。ソフィが悪いんじゃないんだから」
そう、全ての元凶はあのじじぃなんだから。
今すぐにでもフェンデルに行って、心臓を突いてしまいたい。
再び背後を真っ黒に染めながら物騒なことを考えるリチャードを、何を考えているのか分からない笑顔で見ていたアスベルは親友の耳元で静かに囁いた。
「シェリアがな、救護のついでに戦闘の訓練もしたいと言ってフェンデルに行ったんだ」
「シェリアさんが?」
「ああ、百花繚乱の練習をしたいらしい」
「……」
どうやらシェリアは、溺愛しているソフィに余計なことばかりを吹き込むマリクに対して制裁をしに行ったらしい。
威力的には仲間内でも最強かもしれない秘奥義を連発しに。
一刺しで終わらせようと考えていたリチャードだが、シェリアは文字通りマリクを蜂の巣にするようだ。
そしてアスベルは知っていながら笑顔でシェリアを送り出した。
つまり、アスベル(一様弟子)も非常に怒っているということ。
先ほどまで殺意しか抱かなかったマリクに対して、リチャードは心の底から同情と微かな満足感を抱いて遠いフェンデルに視線を投げた。
遠い空からマリクの絶叫が聞こえた気がした。
だが、聞かなかったことにしよう。
後日
「アスベル。リチャードと何話したの?」
いつものように首をかしげるソフィ。
「ん?ああ、シェリアがフェンデルに行ったって教えたんだ」
「シェリア……今度はいつ帰ってくるかな。また何ヶ月も会えないのかな……」
「シェリアなら(教官殺ったら)きっとすぐに帰ってくるよ」
(今、小声で何か言わなかったか、アスベル?)
聞きたくて仕方がないリチャード。
「ほんと?シェリア、すぐ帰ってきてくれる?」
「ああ。だからいい子で待っていような」
「うん!今度シェリア帰ってきたら、カニタマいっぱい作ってくれえるかな?」
「ソフィがリチャードに無理言わなかったら好きなだけ作ってくれるぞ。
泳げるぐらいかもな」
「好きなだけ……。それに泳げる……」
「そのためにカニだっていつでもたくさん密輸しているんだし」
(最近フェンデルからの輸入品にカニが多いのはそのためか……。
いや待ってくれ。今密輸って言わなかったかい?
ラント中心に各国と貿易しているし、ある意味これは職権乱用になるのでは……?
ま、いいか。アスベルだし……。←陛下、しっかり!byデール)
「シェリアが帰ってきたらカニタマ祭りでもするか」
「うん!!」
(というか、それなら別にカニタマの祝日なんていらないんじゃ……。
何のために僕は悩んだんだ!?)
二人の会話を聞きながらリチャードはとても突っ込みたい気持ちで一杯だったが、懸命な彼はもちろん口に出して言うことはなかった。
言ったら殺される、そう思ったのも隠しておこう。
マリク、安らかに眠ってくれ。
「ちょっと待って下さい、陛下。俺は死んでません!!」
「全治6っヶ月ですけどね」
そのつぶやきは果たしてとどいただろうか……。
お前の髪は俺(私)達が守る!!!!
ある晴れた日の事だった。
決戦前という事で羽休めにラントに来ていたアスベル一行。
「兄さん……。無駄遣いはしないで下さい。
前にも言いましたよね?」
「い、いや。ついデュアルライズにはまって……」
後ろにくっついているソフィ。
どうやら二人でやっていたらしい。
毎度毎度の事ながらヒューバートも大変よね……。
心の中で深いため息をつくシェリア。
その様子を見ていたパスカルと教官がこの騒動の始まりとなる一言を言ってしまった。
「弟君も若いのに大変だよね」
「ああ、あのままではハゲてハゲて終いには……、無くなってしまうだろうな」
ソフィとアスベルの体に電撃が走ったように震える。
ヒューバートは気づかずに説教を続けていたが。
この説教が終わった後、事件は起きた。
「アスベル、どうしよう……。ヒューバートが、ヒューバートが……」
「そうだよね。このままだとあいつの髪が……」
執務室に呼ばれたと思ったらこんな相談をしていた。
まさか、本気になってたなんて……。
「二人ともしっかりして。ヒューバートは大丈夫よ」
「シェリア……」
「何?」
「俺、ようやく分かったよ……」
何が分かったの?
まさか私の今までのアプローチに気づいてくれた?
「ヒューバートのおでこは生え際だったんだな……」
「絶対ちがーう!!!!!!」
何でそうなるの!!!
パスカルと教官には後で言っとかないと。
「と言う事でリラックス作戦がしたいんだ。何か無いかな?」
びし!と手を上げたのはソフィ。
その気迫で花瓶が震えたのは見なかった事にしよう。
「お花の冠は?」
「いいな、それだったら生え際は守れるぞ。さすがだソフィ」
それでいいのかしら……。
突っ込む事も出来ず立ち尽くす。
「うん。じゃあお花畑に行こう」
「ああ、シェリア。この事ヒューバートに内緒だぞ」
ばたばたとドアを開け出て聞く二人。
そして、
「兄さん、廊下は走らないで下さい!!」
あ、また雷が落ちてる……。
ホントにこれで良いのかしら……。
数時間後
「ヒューバート、これプレゼント」
ソフィが一生懸命背伸びして花の冠をかけて上げようとするのでアスベルが少し手伝って乗せる。お飯事をみているみたいでほほえましかった。
「どうしたんですか?それ」
分かっていながらも聞いた方が良いと思い聞いてみる。
「何かストレスたまってるみたいだから、ソフィと何とかリラックスさせようと思って……」
「でね、失敗しながら頑張ったんだよ!!」
さっき慌てて出て行ったのはそういうことだったのですか……。
それならそうといってくれればいいのに……。
内心そう思う。
頬が緩みそうになるが何とか押さえる。
「それにこれで安心だ?」
「何が安心なんですか?」
「これでお前の生え際は守ったぞ!」
は、生え際!?
なぜいきなりそんな言葉が出るんですか!!
「あのね、ヒューバートがハゲるって教官達が……」
「そうですか。僕の事をハゲとでも言ったんですか?」
パスカルさんとマリク教官が後ずさりし始めている。
きっと僕の顔は今冷たい笑みを浮かべているに違いない。
「ヒューバート、隠せてよかったな!!」
きっと悪気はないんだろう。
でも今だけは許せなかった。
「兄さん、ちょっと良いですか?」
「ああ」
仲間達からの視線をよそにヒューバートについて行ってしまうアスベル。
ソフィと教官が無意識に敬礼していたのはこれから起こる事が分かったからだろう。
だが、もう遅い。
「―――派手に踊れええええっ!!!」
数秒後そんな声が聞こえてきた。
アスベルの絶叫と一緒に……。
「リチャードは、カニタマ好き?」
リチャードと一緒にお茶を飲んでいたソフィが突然そう尋ねた。
「……急にどうしたんだい?」
久しぶりに会った小さな友人の言葉に、リチャードは心のそこから不思議そうな顔をしている。
「あのね、アスベルはカレーが好きで、シェリアは焼き鳥丼が好きなんだよ」
「そうだね」
「ヒューバートもパスカルも教官も、好きな食べ物、カニタマじゃないの。
しかもね、ラムダはチョコレートプリンが好きなんだよ」
「まぁ、人それぞれの好みがあるからね(ラムダにも好みがあったのか……)」
いまだにソフィが何を言いたいのか分からないリチャードは、内心首をかしげながら相槌をうつ。
「だからね、私、カニタマが好きな人探しているの」
「へぇ……」
「一緒にね、カニタマについていっぱいお話しするの」
「……」
ソフィの目が輝いている。
もしかしたら仲間達と一緒にいる時よりも、輝いているかもしれないと思うほど。
「それでね、いっぱいカニタマ友達を増やして、カニタマの祝日を作るの!」
「…………」
リチャードはティーカップを持った体制のまま固まった。
「カニタマ友達をいっぱい増やしたら、きっとカニタマの祝日も作れると思うの!」
「……………」
「ううん、カニタマ友達がいなくても、そろそろカニタマの祝日を作ってもいいと思うの!」
「………………」
きらきらきらきら。
ソフィの目が非常に輝いている。
これはいったい自分にどうして欲しいと言っているのだろうか?
自分もカニタマが好きだと言えばいいのだろうか?
だからカニタマについてたくさん話をしてやればいいのだろうか?
むしろ、自分の権力を使ってカニタマの祝日を作れと言っているのだろうか?
きらきら輝いたソフィの顔を見ていると、思わず「よし、作ろう!!」と言いたくなる。
が、待て。
とりあえず落ち着こう。
でなければ、とても一国の王としてかなり曲がったいや、ひいきな判断をしてしまいそうな気がする。
ソフィのような純粋で優しいな子が、計算して自分に言っているはずがない。
必ず裏で糸を引いている奴がいるはずだ。
「……ソフィ」
「なに、リチャード?」
「その話、他の人とかにもした?」
「うん。この間ね、教官が遊びにきた時にお話したよ」
ほんわかした笑顔を浮かべながら嬉しそうに報告するソフィ。
「……マリクか」
逆にリチャードはなんとなく原因が分かってきた。
「彼は何て言ったんだい?」
「あのね、その話をリチャード陛下にもしてみろって。リチャードなら王様だからカニタマの祝日なんて簡単にできるぞって言ってた」
「へぇ……」
……あのやろう。
次にバロニアに来た時が最後だと思え。
リチャードの背後が、ラムダに寄生されていた時のように真っ黒に染まる。
事実空気は一瞬で黒に染まった。
だがソフィはそんなことには気づかず笑顔で続けた。
「リチャード、カニタマの祝日、作れる?」
作ってくれると信じて疑わない笑顔。
「うっ……」
すごくいいよって言ってしまいたい。
こんな無垢な笑顔を浮かべる子に、駄目なんて言いたくない。
「ソフィ、リチャード?ここにいたのか」
内心押し問答をしながら優雅にお茶を飲んでいたリチャードに、天の助けが来た。
「あ、アスベル!」
満面の笑みを浮かべて、部屋に入ってきたアスベルに駆け寄るソフィ。
そんなソフィの頭をぽんぽんと撫でながら、アスベルはリチャードに近づくと不思議そうに声をかけた。
「リチャード。ソフィと何話してたんだ?」
「ああ、いや……」
「あのね、リチャードとカニタマについてお話してたの」
言いよどむリチャードに代わって、声を上げるソフィ。
「カニタマ?」
「うん、カニタマの祝日を作ってもらおうと思って」
また純粋無垢な笑顔でリチャードを見るソフィと、困ったように苦笑を浮かべるリチャードを見て、アスベルはため息をついた。
「ソフィ。その話は諦めろって言っただろ」
「でも、教官はリチャードに言えばいいって言ったよ?」
「その後、シェリアとリチャードには言わないって約束しただろ」
「あ、そうだった……」
カニタマの事となると熱くなってしまい、すっかり忘れていたらしい。
「ごめんね、リチャード……」
しょぼん……とした様子で頭を下げるソフィ。
まるで犬が耳を垂らして落ち込んでしまったようだ。
「いいんだよ、ソフィ。ソフィが悪いんじゃないんだから」
そう、全ての元凶はあのじじぃなんだから。
今すぐにでもフェンデルに行って、心臓を突いてしまいたい。
再び背後を真っ黒に染めながら物騒なことを考えるリチャードを、何を考えているのか分からない笑顔で見ていたアスベルは親友の耳元で静かに囁いた。
「シェリアがな、救護のついでに戦闘の訓練もしたいと言ってフェンデルに行ったんだ」
「シェリアさんが?」
「ああ、百花繚乱の練習をしたいらしい」
「……」
どうやらシェリアは、溺愛しているソフィに余計なことばかりを吹き込むマリクに対して制裁をしに行ったらしい。
威力的には仲間内でも最強かもしれない秘奥義を連発しに。
一刺しで終わらせようと考えていたリチャードだが、シェリアは文字通りマリクを蜂の巣にするようだ。
そしてアスベルは知っていながら笑顔でシェリアを送り出した。
つまり、アスベル(一様弟子)も非常に怒っているということ。
先ほどまで殺意しか抱かなかったマリクに対して、リチャードは心の底から同情と微かな満足感を抱いて遠いフェンデルに視線を投げた。
遠い空からマリクの絶叫が聞こえた気がした。
だが、聞かなかったことにしよう。
後日
「アスベル。リチャードと何話したの?」
いつものように首をかしげるソフィ。
「ん?ああ、シェリアがフェンデルに行ったって教えたんだ」
「シェリア……今度はいつ帰ってくるかな。また何ヶ月も会えないのかな……」
「シェリアなら(教官殺ったら)きっとすぐに帰ってくるよ」
(今、小声で何か言わなかったか、アスベル?)
聞きたくて仕方がないリチャード。
「ほんと?シェリア、すぐ帰ってきてくれる?」
「ああ。だからいい子で待っていような」
「うん!今度シェリア帰ってきたら、カニタマいっぱい作ってくれえるかな?」
「ソフィがリチャードに無理言わなかったら好きなだけ作ってくれるぞ。
泳げるぐらいかもな」
「好きなだけ……。それに泳げる……」
「そのためにカニだっていつでもたくさん密輸しているんだし」
(最近フェンデルからの輸入品にカニが多いのはそのためか……。
いや待ってくれ。今密輸って言わなかったかい?
ラント中心に各国と貿易しているし、ある意味これは職権乱用になるのでは……?
ま、いいか。アスベルだし……。←陛下、しっかり!byデール)
「シェリアが帰ってきたらカニタマ祭りでもするか」
「うん!!」
(というか、それなら別にカニタマの祝日なんていらないんじゃ……。
何のために僕は悩んだんだ!?)
二人の会話を聞きながらリチャードはとても突っ込みたい気持ちで一杯だったが、懸命な彼はもちろん口に出して言うことはなかった。
言ったら殺される、そう思ったのも隠しておこう。
マリク、安らかに眠ってくれ。
「ちょっと待って下さい、陛下。俺は死んでません!!」
「全治6っヶ月ですけどね」
そのつぶやきは果たしてとどいただろうか……。
お前の髪は俺(私)達が守る!!!!
ある晴れた日の事だった。
決戦前という事で羽休めにラントに来ていたアスベル一行。
「兄さん……。無駄遣いはしないで下さい。
前にも言いましたよね?」
「い、いや。ついデュアルライズにはまって……」
後ろにくっついているソフィ。
どうやら二人でやっていたらしい。
毎度毎度の事ながらヒューバートも大変よね……。
心の中で深いため息をつくシェリア。
その様子を見ていたパスカルと教官がこの騒動の始まりとなる一言を言ってしまった。
「弟君も若いのに大変だよね」
「ああ、あのままではハゲてハゲて終いには……、無くなってしまうだろうな」
ソフィとアスベルの体に電撃が走ったように震える。
ヒューバートは気づかずに説教を続けていたが。
この説教が終わった後、事件は起きた。
「アスベル、どうしよう……。ヒューバートが、ヒューバートが……」
「そうだよね。このままだとあいつの髪が……」
執務室に呼ばれたと思ったらこんな相談をしていた。
まさか、本気になってたなんて……。
「二人ともしっかりして。ヒューバートは大丈夫よ」
「シェリア……」
「何?」
「俺、ようやく分かったよ……」
何が分かったの?
まさか私の今までのアプローチに気づいてくれた?
「ヒューバートのおでこは生え際だったんだな……」
「絶対ちがーう!!!!!!」
何でそうなるの!!!
パスカルと教官には後で言っとかないと。
「と言う事でリラックス作戦がしたいんだ。何か無いかな?」
びし!と手を上げたのはソフィ。
その気迫で花瓶が震えたのは見なかった事にしよう。
「お花の冠は?」
「いいな、それだったら生え際は守れるぞ。さすがだソフィ」
それでいいのかしら……。
突っ込む事も出来ず立ち尽くす。
「うん。じゃあお花畑に行こう」
「ああ、シェリア。この事ヒューバートに内緒だぞ」
ばたばたとドアを開け出て聞く二人。
そして、
「兄さん、廊下は走らないで下さい!!」
あ、また雷が落ちてる……。
ホントにこれで良いのかしら……。
数時間後
「ヒューバート、これプレゼント」
ソフィが一生懸命背伸びして花の冠をかけて上げようとするのでアスベルが少し手伝って乗せる。お飯事をみているみたいでほほえましかった。
「どうしたんですか?それ」
分かっていながらも聞いた方が良いと思い聞いてみる。
「何かストレスたまってるみたいだから、ソフィと何とかリラックスさせようと思って……」
「でね、失敗しながら頑張ったんだよ!!」
さっき慌てて出て行ったのはそういうことだったのですか……。
それならそうといってくれればいいのに……。
内心そう思う。
頬が緩みそうになるが何とか押さえる。
「それにこれで安心だ?」
「何が安心なんですか?」
「これでお前の生え際は守ったぞ!」
は、生え際!?
なぜいきなりそんな言葉が出るんですか!!
「あのね、ヒューバートがハゲるって教官達が……」
「そうですか。僕の事をハゲとでも言ったんですか?」
パスカルさんとマリク教官が後ずさりし始めている。
きっと僕の顔は今冷たい笑みを浮かべているに違いない。
「ヒューバート、隠せてよかったな!!」
きっと悪気はないんだろう。
でも今だけは許せなかった。
「兄さん、ちょっと良いですか?」
「ああ」
仲間達からの視線をよそにヒューバートについて行ってしまうアスベル。
ソフィと教官が無意識に敬礼していたのはこれから起こる事が分かったからだろう。
だが、もう遅い。
「―――派手に踊れええええっ!!!」
数秒後そんな声が聞こえてきた。
アスベルの絶叫と一緒に……。
- 作者 夕月 白夜 より:
- カニタマ……。
最初は歌まで作ろうか迷いました。
生え際はお父さんからヒントをもらいました。
コメントで聞いてきた人がいたので一様書いておきます。
僕が書いていますので。
作者:夕月 白夜 | 初掲載日:10/11/28 18:40 | 最終更新日:10/11/29 00:00
投票
作品に対するコメント 最新100件
- 廓 [40005] 10/11/30 13:09
- >「I LOVE KANITAMA」
これとまったく同じ作品をほかのサイト様で見つけたのですが……。
無断転載ではないんですか?
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