ソフトバンク孫社長が仕掛ける
「NTTの構造分離」への疑問
原口総務相の「光の道」構想を礼賛

2010年04月27日(火) 町田 徹
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 話は前後するが、タスクフォースのメンバーある筆者はヒアリングの質疑応答で、光ファイバー網の維持費を質したが、孫社長は回答を用意していなかった。「後ほど根拠を示す」と述べて、その場をしのいだのである。

 翌日、事務局経由で筆者に届いた資料に盛り込まれた数値は、その出典が示されていないばかりか、「検証中の数値であり、今後修正の可能性がある」というものに過ぎなかった。「コンフィデンシャル」(秘密)のスタンプがベタベタ押してあり、ここで詳細な内容を一般に公開し、検証して貰えないのは残念でならない。

冷静かつ論理的な議論を

 孫社長は、ソフトバンクの創業者経営者で、大株主だ。これまでは、乱暴な経営をして窮地に陥っても、投資先の企業の株が値上がりするという強運にも恵まれて、破綻を免れてきたとの評価も少なくない。

 そうした立場にあれば、ソフトバンクの経営において、今なら、多少乱暴な投資をしても、株主たちが大目に見てくれるのかもしれない。

 また、孫社長が主張したように、NTTグループが分離されて市場競争がこれまで以上に活発化し、光ファイバー網が廉価で利用できるようになれば、ソフトバンクも含めて、様々な企業や利用者が恩典を受けられるのは事実だろう。

 しかし、だからと言って、公式な政府の会議の場で、今回のように出典を明示できず、検証も不十分な数値を持ち出して、ライバルの企業分割を迫ったり、政府に国家戦略の構築を要求したりするのは、賢明な行為とは言えない。むしろ、招致した原口大臣だけでなく、国民の信頼や期待を裏切る行為である。 

 孫社長はもっと冷静かつ論理的な議論を展開すべきだった。猛省を促したい。

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