現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

Astandなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2010年11月30日(火)付

印刷

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

朝鮮半島―米中が対話の環境作りを

「対話と協力を通じて努力し、人道支援も惜しまなかったのに、返ってきたのは、核開発と哨戒艦爆沈に続いて島への砲撃だった」韓国の李明博大統領が昨日、国民向け演説でそう憤った[記事全文]

COP16―「規制の空白期」が心配だ

地球温暖化対策の国際交渉が停滞期を迎えている。メキシコでの気候変動枠組み条約の会議(COP16)も、難航が懸念される。現在の対策の大枠となっている京都議定書には大きな問[記事全文]

朝鮮半島―米中が対話の環境作りを

 「対話と協力を通じて努力し、人道支援も惜しまなかったのに、返ってきたのは、核開発と哨戒艦爆沈に続いて島への砲撃だった」

 韓国の李明博大統領が昨日、国民向け演説でそう憤ったのも無理ない。

 哨戒艦事件で兵士46人が犠牲になった。今回の砲撃は民間人を含む4人の命を奪い、多くの民家を焼いた。

 いま最も大切なのは、更なる衝突を回避し、緊張を和らげることだ。当事者はむろん、関係国はそのための知恵を絞らねばならない。

 中国政府が、6者協議の代表による緊急の会合を呼びかけた。

 6者協議は本来、南北朝鮮と日米中ロが参加し、北朝鮮の非核化、米朝や日朝の関係正常化をめざすものだ。中国が提案したのは、核問題を扱う正式な協議ではない。「最近、半島情勢に複雑な要素が現れている」といい、6者で意見を交換したいという。

 北朝鮮に影響力を及ぼすよう求められている中国が、真剣に動いていることを世界に示す。対話を提案しているとき、北朝鮮は新たな挑発をしづらくなるだろう――。6者協議の議長国である中国が、そう期待しての提案かもしれない。

 事態好転の糸口を探ろうという狙いはわかる。だが、今いきなり6者代表が集まって、現実的な成果をあげられようか。

 韓国は「まだその時期ではない」と反応している。米国も、北朝鮮が「態度の変化」をはっきり示すことが先決だとする立場を明らかにした。

 日本もそれに同調している。北朝鮮は行為の責任を認めるなど、先にすべきことがある、という姿勢だ。

 北朝鮮は、韓国の挑発が砲撃の原因だと反論している。新たな核開発につながるウラン濃縮施設の公表や軽水炉の建設のほか、核実験の準備ととられかねない動きも見せている。

 これでは、6者が顔を合わせたところで平行線に終わる。だが、何もしないままでは、緊張と膠着(こうちゃく)状態が続く。北朝鮮の核をどうするかも、いずれ本格的に打開する必要がある。

 局面を転換させる大きな力を持っているのは、やはり米国と中国だ。

 一昨日、クリントン米国務長官と、中国外交を統括する戴秉国国務委員が電話で話し合った。戴氏は「重要なときに中米が建設的役割を積極的に果たさねばならない」と語った。

 その通りである。両国が対話の環境づくりに協力して努めてもらいたい。

 米国は日韓との外相会談を開く意向だ。中国は近く高官を訪朝させると観測されている。北朝鮮を説得し、各国を調整する。米中のそんな取り組みがあってこそ、6者が会える素地ができる。この戦略にそって日本も、朝鮮半島の緊張緩和に貢献すべきである。

検索フォーム

COP16―「規制の空白期」が心配だ

 地球温暖化対策の国際交渉が停滞期を迎えている。メキシコでの気候変動枠組み条約の会議(COP16)も、難航が懸念される。

 現在の対策の大枠となっている京都議定書には大きな問題がある。2012年までの第1期は先進国だけが削減義務を負うが、最大の排出国である中国も、議定書を離脱した米国も削減義務を負っていない。

 昨年、この大問題が解決しそうだった。米国で温暖化対策に積極的なオバマ民主党政権が誕生し、温暖化の国際交渉に復帰した。そして「京都議定書とは別の仕組み」をつくって米国や中国などが相応の規制をもつ方向に議論が進んでいたのである。

 しかし、頓挫した。まず昨年末のコペンハーゲン会議(COP15)で、前向きの合意ができなかった。

 オバマ政権は今年、米国内で野心的な排出量取引法の成立をめざしたが失敗し、中間選挙で共和党に負けた。これで米国と世界の熱気が消えた。

 背景には世界的な経済危機がある。削減義務を課されることに否定的な中国など途上国は「議定書の延長で先進国はさらに削減を」と唱え、日本やロシア、カナダは「自分たちだけが義務を負う延長には反対」である。

 欧州連合(EU)は「米中が入る仕組みができるのなら議定書延長も検討する」との構えだ。米国は「議定書には絶対に戻らない」と繰り返す。

 こんなバラバラな状況では13年以降、国際的な削減義務がない「空白期」が生まれることになる。

 こうした中で日本が果たすべき役割は小さくない。COP16での政府方針は「議定書の第2期の設定に反対」「米中など主要排出国が参加する単一の規制の仕組みをつくる」だ。

 たしかに、日本やEUだけが新たな規制数値を受け入れるのでは、地球温暖化阻止の展望が開けない。米中がなんらかの形で削減の義務を担う仕組みをつくり出すために、各国が知恵を絞らねばならない。

 日本は自国の利益を守りつつも世界の規制を進める立場に、しっかりと立つべきだ。COP16では「次の会議での大きな成果」につながる決定を生み出すよう力を尽くす必要がある。

 そして国内では、環境税と国内排出量取引、自然エネルギー買い取り制度の3点セットの具体化を進めたい。

 振り返れば今の状況は01年、米ブッシュ政権が議定書を離脱した後に似ている。「議定書は死んだ」といわれ、日本では政府や産業界に「議定書の批准に反対」の声が広がった。

 しかし、世界は米国抜きで議定書を発効させた。これによって省エネや自然エネルギーの推進、低炭素型社会をめざす今の潮流が生まれた。

 将来を見すえた国際協調が必要だ。

検索フォーム

PR情報