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『国家の品格』と『ウェブ進化論』
このところなぜか、この2冊のベストセラーについてのTBが多い。グーグルで書名を検索してみると、私の『国家の品格』についての記事は21位、『ウェブ進化論』の記事は6位に出てくるので、TBを飛ばして「おまえのコメントは見当違いだ」といいたいのだろうか。そこで、私の書評をアマゾン風に書いてみた。
国家の品格 新潮新書
おすすめ度:★☆☆☆☆ 冗談としてはおもしろいが・・・ 2006/4/3
社会科学の専門家でもない著者が、「民主主義」や「市場原理」を罵倒して「武士道」を賞賛する本。しかも、その論法たるや、民主主義の元祖がジョン・ロックだという話から、ロックの思想は「カルヴァンと同じである」と断じ、ゆえに民主主義は「キリスト教原理主義」のイデオロギーだから、「自由も平等もフィクションだ」という結論に飛躍する。最初は、おもしろい冗談だと思って読んだが、その後も新聞やテレビで著者が同じ話を繰り返しているのをみると、どうやら本気でそう信じているらしい。
民主主義が欠陥の多い制度だということは、だれでも知っている。しかしチャーチルの有名な言葉のように、民主主義は最悪の制度だが、それよりもましな制度は歴史上なかったのである。著者のいう「エリート」による政治というものがかりに可能だとして、そのエリートはだれが選ぶのか。民主主義によらないで、「武士道」で決めるのか。
著者は、「大事なのは、論理ではなく情緒だ」という。たしかに数学の世界では、論理(無矛盾性)だけでは命題の真偽は判定できない。どんな非現実的な仮説からでも、無矛盾な論理は構築できるからだ。しかし実証科学では、仮説から演繹された結論は、実験や観測などのテストを受け、それにあわない仮説は棄却される。民主主義も市場原理も、歴史のテストを受けて成熟してきた制度であり、「情緒」で決めたものではないのである。
著者は「数学のような役に立たない学問の盛んな国は繁栄する」というが、これは逆である。日本は経済的に繁栄したから、著者のような役に立たない数学者でも、公務員として身分が保証されているのだ。彼の給料を稼いでいるのは、「市場原理」のなかで働いている納税者である。彼の本が100万部も売れて、7000万円以上の印税が入るのも、市場原理のおかげだ。そんなに市場原理がきらいなら、印税を捨てて北朝鮮に移住してはどうか。
ウェブ進化論 ちくま新書
おすすめ度:★★☆☆☆ 入門書としては読みやすいが・・・ 2006/4/3
入門書としては読みやすいし、「ブログ」とか「ウィキペディア」って何だろうという、おじさんが知りたい(でも今さら聞くのは恥ずかしい)疑問にとりあえず答えてくれる。しかも四半期の利益が8億ドルのグーグルの時価総額が1000億ドルを超えるのは、それが「あちら側」にいるからで、日本のおじさんたちはみんな「こちら側」だから、アメリカのまねをしてがんばろう、と目標まで決めてくれる。
しかし、こういう話って、どこかで聞いたことがないだろうか。10年前にも、赤字企業のネットスケープ社の時価総額が数十億ドルになったことがあったっけ。そのときも「ビジョナリー」とよばれる人々が、「ドットコムの世界は別なのだ」とかいって、日本でもオン・ザ・エッヂというホームページ制作会社がIPOで数十億円を集めた。
「あちら側」というのは、要するにサイバースペースという意味で、新しい概念ではない。ウェブをOSにしようというのはネットスケープも試みたし、サンのStar Suiteも最初はサンのウェブサイトで使うサービスだった。マイクロソフトでさえ.NETで「ウェブサービス」を試みたが、みんな失敗した。ブログやオープンソースも、ビジネスとして「こちら側」よりも大きくなるとは思えない。
検索エンジンとしては、今やグーグルは断然トップというわけではない。他の検索サイトも、グーグルと同じようなアルゴリズムを採用して精度を上げているし、日本ではヤフーのページビューがグーグルのほぼ2倍だ。グーグルの検索結果は、ノイズが多く日付順ソートもできないので、最近は私はRSSリーダーやテクノラティなどを使うことが多い。グーグルのビジネスモデルも、しょせん(GDPの)1%産業といわれる広告業にすぎないから、限界が見えてくるのは意外に早いだろう。
国家の品格 新潮新書
おすすめ度:★☆☆☆☆ 冗談としてはおもしろいが・・・ 2006/4/3
社会科学の専門家でもない著者が、「民主主義」や「市場原理」を罵倒して「武士道」を賞賛する本。しかも、その論法たるや、民主主義の元祖がジョン・ロックだという話から、ロックの思想は「カルヴァンと同じである」と断じ、ゆえに民主主義は「キリスト教原理主義」のイデオロギーだから、「自由も平等もフィクションだ」という結論に飛躍する。最初は、おもしろい冗談だと思って読んだが、その後も新聞やテレビで著者が同じ話を繰り返しているのをみると、どうやら本気でそう信じているらしい。
民主主義が欠陥の多い制度だということは、だれでも知っている。しかしチャーチルの有名な言葉のように、民主主義は最悪の制度だが、それよりもましな制度は歴史上なかったのである。著者のいう「エリート」による政治というものがかりに可能だとして、そのエリートはだれが選ぶのか。民主主義によらないで、「武士道」で決めるのか。
著者は、「大事なのは、論理ではなく情緒だ」という。たしかに数学の世界では、論理(無矛盾性)だけでは命題の真偽は判定できない。どんな非現実的な仮説からでも、無矛盾な論理は構築できるからだ。しかし実証科学では、仮説から演繹された結論は、実験や観測などのテストを受け、それにあわない仮説は棄却される。民主主義も市場原理も、歴史のテストを受けて成熟してきた制度であり、「情緒」で決めたものではないのである。
著者は「数学のような役に立たない学問の盛んな国は繁栄する」というが、これは逆である。日本は経済的に繁栄したから、著者のような役に立たない数学者でも、公務員として身分が保証されているのだ。彼の給料を稼いでいるのは、「市場原理」のなかで働いている納税者である。彼の本が100万部も売れて、7000万円以上の印税が入るのも、市場原理のおかげだ。そんなに市場原理がきらいなら、印税を捨てて北朝鮮に移住してはどうか。
ウェブ進化論 ちくま新書
おすすめ度:★★☆☆☆ 入門書としては読みやすいが・・・ 2006/4/3
入門書としては読みやすいし、「ブログ」とか「ウィキペディア」って何だろうという、おじさんが知りたい(でも今さら聞くのは恥ずかしい)疑問にとりあえず答えてくれる。しかも四半期の利益が8億ドルのグーグルの時価総額が1000億ドルを超えるのは、それが「あちら側」にいるからで、日本のおじさんたちはみんな「こちら側」だから、アメリカのまねをしてがんばろう、と目標まで決めてくれる。
しかし、こういう話って、どこかで聞いたことがないだろうか。10年前にも、赤字企業のネットスケープ社の時価総額が数十億ドルになったことがあったっけ。そのときも「ビジョナリー」とよばれる人々が、「ドットコムの世界は別なのだ」とかいって、日本でもオン・ザ・エッヂというホームページ制作会社がIPOで数十億円を集めた。
「あちら側」というのは、要するにサイバースペースという意味で、新しい概念ではない。ウェブをOSにしようというのはネットスケープも試みたし、サンのStar Suiteも最初はサンのウェブサイトで使うサービスだった。マイクロソフトでさえ.NETで「ウェブサービス」を試みたが、みんな失敗した。ブログやオープンソースも、ビジネスとして「こちら側」よりも大きくなるとは思えない。
検索エンジンとしては、今やグーグルは断然トップというわけではない。他の検索サイトも、グーグルと同じようなアルゴリズムを採用して精度を上げているし、日本ではヤフーのページビューがグーグルのほぼ2倍だ。グーグルの検索結果は、ノイズが多く日付順ソートもできないので、最近は私はRSSリーダーやテクノラティなどを使うことが多い。グーグルのビジネスモデルも、しょせん(GDPの)1%産業といわれる広告業にすぎないから、限界が見えてくるのは意外に早いだろう。
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同感です。私は弊ブログの
「最近の右系団体やメディアの言動にはがっかりさせられる」
http://blogs.dion.ne.jp/hirokuri/archives/3032350.html
という記事の中で、次のように書きました。
最近の右系団体やメディアの言動にはがっかりさせられます。3月12日の報道2001も酷いものでした。中曽根さんもおかしいが、藤原正彦さん、あれは全くおかしいです。
学生に数学だけ教えていれば良いのに。洗脳されている右に受ける本を書いたら何でもベストセラーです。池田大作や大川隆法と同じ。「つくる会」の人が書いた本が良く売れるのも同じ理由からかも。88万部売れるのもおかしいが、だからといって、それを取り上げる報道2001には失望しました。洗脳されている右向けに時々サービスをしているのでしょうか。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
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