2006-07-02
「鏡の法則」に突っ込んでみる〜1
何か、こんなのがブームらしい。
鏡の法則(ハンカチを用意して読め!)
http://www.arai516.com/blog/2006/07/post_e7bc.html
・・・チェーンメール化してるらしく、元ネタを調べたら、どうやらこの辺が元ネタらしい。
著者のブログ
何か、読んでる人の9割が泣いたとか書いてあるんだけど・・・泣けるのか?
ちと突っ込んでみようとする。
まずはこんな背景があるという。
・息子は苛められてることを否定してる。
・近隣住民が、息子が苛められてることをA子に連絡する。
・A子は、息子が心を開いてくれないのが辛い
・A子、夫に相談する。
・夫曰く、夫の先輩であるB氏に相談しろと。
B氏は、夫が高校時代に通っていた剣道の道場の先輩である。
夫も20年くらい会っていなかったらしいが、夫が最近街を歩いていたら、
久々の再会に盛り上がって喫茶店に入り、2時間も話したらしい。
夫の話では、B氏は心理学にも詳しく、企業や個人の問題解決を得意とし
ているとのこと。
そこで夫が息子のことを少し話したら、「力になれると思うよ。」と言って
名刺を渡してくれたそうだ。
夫は、その日、「お前の方から直接電話してみろよ。話を通しておいてやっ
たから。」と、その名刺を渡してきた。
・・・すげえ疑問なんだが、20年ぐらい会ってない先輩を道で歩いて見かけたとしても先輩だってわかるのだろうか?
俺だって、こないだ高校時代の部活の後輩とばったり会ったけど、「どこかで見たような・・・」って感じだったぜ。
つーか、いじめの事実の有無を、学校に相談するのが先のような気がする。
とにかくA子はB氏に相談するのだが・・・
「もしかして△△君の奥さんですか?」
「はい、そうなんです。」
「あー、そうでしたか。はじめまして。」
「あのー、主人から何か聞かれてますか?」
「はい。ご主人から少し聞きました。息子さんのことで悩まれてるとか。」
「相談に乗っていただいていいのでしょうか?」
「今1時間くらいなら時間がありますので、よかったら、この電話で話を
聞かせてください。」
A子は、自分の息子がいじめられたり、仲間はずれにされていることを簡
単に話した。
そして、前日にあった出来事も。
ひととおり聞いて、B氏は口を開いた。
「それは辛い思いをされてますね。親としては、こんな辛いことはないで
すよね。」
その一言を聞いて、A子の目から涙があふれてきた。
・・・人誑しもといコンサルの基本的手法である「共感」ですね。
コンサルの手法で、まず相手を受け入れるというのがあるんですよ。
A子が泣き始めたのに気づいたB氏は、A子が落ち着くのを待ってから続けた。
「奥さん、もしあなたが、本気でこのことを解決なさりたいなら、それは
おそらく、難しいことじゃありませんよ。」
多分、A子が泣いた時点で半分落ちたようなもんかと。
そして、畳み込むように「問題の矮小化」というメソッドを切り出してます。
確かに、パニックになってる奴に対して一緒にパニックになると不安になるんで、「たいしたことないよ」と言うことで安心感を相手に感じさせます。
これもコンサルの手法ですね。
ただ、相手によって、これが効く場合と効かない場合があります。
A子は、「難しいことじゃない」という言葉が信じられなかった。
自分が何年も悩んで解決できないことだったからだ。
だけど、B氏の言葉が本当であってほしいと願う気持ちもあった。
・・・確かに、いじめの時期については書いてないが。
ただ、何年も息子がいじめられてるんだったら、その間、両親は手を拱いてるだけなんだろうか?
「もし解決できるなら、何だってやります。私は本気です。だけど、何を
やれば解決するんですか?」
・・・断言するのは難しいのだが、あまり自分で考えようとしない人のような気が。その主婦は。
「何だってやります」というところが特に。
ここまでは普通にコーチング、コンサルの手法として使えるのですが、ここから雲行きが怪しくなってきます。
B氏「では、それを探りましょう。まず、はっきりしていることは、あな
たが、誰か身近な人を責めているということです。」
えーと、これはマトモなコンサルだったら絶対使わない技法です。
その名も「明後日の方向で相手の非を認めさせる技法」です。
要するに、全然関係ない方向での相談者の責を問い詰める手法です。
占い師だと、細木のババアあたりがよく使ってるし、霊感商法、カルト宗教の勧誘にはよく使われてますね。
要は、判断を停止させ、こっちのペースに巻き込むための技術です。
A子「えっ?どういうことですか?」
B氏「話が飛躍しすぎてますよね。まず理論的なことをじっくり説明してから話せばいいんでしょうが、それをすると何時間もかかるし、私もそこまでは時間がない。なので、結論から話します。理論的には根拠のある話なんで、後で、参考になる心理学の本など教えます。とりあえず結論から言いすと、あなたが、大事なお子さんを人から責められて悩んでいるということは、あなたが、誰か感謝すべき人に感謝せずに、その人を責めて生きているからなんです。」
理論的なところを割愛するのが確信犯的というか。これは割愛するというより裏づけが無いから話せないというわけですが。
特に、「息子の因果は親の不心得の所為だ」というのは新興宗教の勧誘メソッドに必ずあります。
この場合「その不心得を浄化するためにはうちの宗教云々」という感じに繋がっていくわけですが。
A子「子どもがいじめられるということと、私の個人的なことが、なぜ関
係があるんですか?何か宗教じみた話に聞こえます。」
で、多少でも頭が働く人は、「何か宗教が絡んでるのではないか」と思います。
実際、母の方も疑ってるようですし。
B氏「そう思われるのも、無理もないです。われわれは学校教育で、目に見えるものを対象にした物質科学ばかりを教えられて育ちましたからね。
今、私が話していることは、心理学ではずいぶん前に発見された法則なんです。昔から宗教で言われてきたことと同じようなものだと思ってもらったらわかりやすいと思います。私自身は宗教には入っていませんけどね。」
ますます宗教スメルが強いというか。
ただ、裏づけを出そうとするあたり、B氏、宗教勧誘とか悪質商法始めたら物凄く稼げそうな気が・・・
A子「その心理学の話を教えてください。」
B氏「現実に起きる出来事は、一つの『結果』です。『結果』には必ず『原因』があるのです。つまり、あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出した鏡だと思ってもらうといいと思います。例えば、鏡を見ることで、『あっ、髪型がくずれている!』とか『あれ?今日は私、顔色が悪いな』って気づくことがありますよね。鏡がないと、自分の姿に気づくことができないですよね。人生というものが鏡だと考えてみて下さい。人生という鏡のおかげで、私たちは自分の姿に気づき、自分を変えるきっかけを得ることができるのです。人生は、どこまでも自分を成長させていけるようにできているのです。」
まさに「詭弁のガイドライン」に当てはまりそうな内容というか。
わかりやすいように論説をまとめると
・現実に起きる出来事はひとつの結果である
・・・まあ、結果は全て現実の中にあるわけだし。
・結果には原因がある
ここでミスリードを誘ってます。
原因が不明で結果があるもの/複数原因でひとつの結果になるもの/原因はひとつだけど結果は複数のものがあるので、「原因:結果=多対多 OR 多対1or 1対多」になる場合もあるのですが、あえて原因と結果を1対1に認識させてます。
これが、その後の裏づけの伏線になるのですが・・・
で、鏡と人生を例えるのですが、、鏡は目に見えるもので、人生は目に見えません。
冷静に見ると、この辺で詭弁性を感じるのですが、藁にすがりつく状況では多分見えないでしょう。
ここまでくると、B氏のペースです。
A子「私の悩みは、私の何が映し出されているのですか?」
B氏「あなたに起きている結果は、『自分の大切なお子さんが、人から責められて困っている』ということです。考えられる原因は、あなたが『大切にすべき人を、責めてしまっている』ということです。感謝すべき人、それも身近な人を、あなた自身が責めているのではないですか?一番身近な人といえば、ご主人に対してはどうですか?」
ここで、いじめの原因と結果を強引に結びつけてるわけです。
普通に考えると、息子のいじめの問題に息子の視点がないというのはおかしい話ですが。
つーか、まさに「親の因果が子に報い」という因果関係の結びつけ方は新興宗教スメル漂ってます。
実際、新興宗教もそうやって勧誘してます。真光なんかそうだし。
知り合いの親で真光に嵌ってる奴がいたのですが、息子の引きこもりを親の因果と断定されてそれで嵌ってましたんで。
個人的には「親は関係ねえだろ」って感じですが。
で、B氏も具体的に主人を挙げるというところが、芸が細かいです。
大体、そういうのは旦那か本人の両親を絡めてきますんで。
A子「主人には感謝しています。トラックの運転手として働いてくれてい
るおかげで、家族が食べていけてるのですから。」
B氏「それは何よりです。では、ご主人を大切にしておられますか?尊敬
しておられますか?」
最初に「感謝」を持ち出して「尊敬」という観点で問うところが特にそうで。
これって、「尊敬」を持ち出して「感謝」を持ってくると上手くいかないだろうと。
大体、日本の場合、「尊敬」というと真っ先に親を想定する人が割と多いですので。
旦那を尊敬するという発想ってあまりなさそうだからなあ。
案の定、A子は更に巧妙な罠にはまったわけです。
そんで、相手に更にアドバンテージを与えることに。
A子は、日ごろから夫のことを、どこか軽蔑していたからだ。
A子から見て、楽観的な性格の夫は、「思慮の浅い人」に見えた。
また、「教養のない人」にも見えた。
また、それだけではなく、夫は言葉ががさつで、本も週刊誌くらいし
か読まない。
読書が趣味のA子としては、本も読まない夫を尊敬できなかった。
息子に、「夫のようになってほしくない」という思いがあったのだ。
A子は、そのこともB氏に話した。
この辺の背景を事細かに書いて宣伝するあたりに野口氏の悪意を感じてしまうのですが。
で、一般論メソッドで畳み掛けます。
B氏「『人間の価値は教養や知識や思慮深さで決まる』と思っておられますか?」
A子「いえ、決してそんなふうには思いません。人それぞれ強みや持ち味があると思います」
このA子という人、B氏が壷売りだったら壷を買うのも時間の問題です。
A子「うーーーん・・・。私の中に矛盾があります。」
B氏「ご主人との関係は、どうなんですか?」
A子「主人の言動には、よく腹が立ちます。喧嘩になることもあります。」
B氏「息子さんの件で、ご主人とはどうですか?」
A子「息子がいじめられていることは、いつもグチっぽく主人に言っています。ただ、主人の意見やアドバイスは受け入れられないので、主人にちゃんと相談したことはありません。おそらく、私にとって主人は、一番受け入れられないタイプなんだと思います。」
ここで、洗脳が無理だと悟ったB氏、矛先を切り替えます。
B氏「なるほど。もう一つ根本的な原因がありそうですね。ご主人を受け入れるよりも前に、そっちを解決する必要があります。」
A子「根本的な原因ですか?」
B氏「はい、あなたがご主人を受け入れることができない根本的な原因を探る必要があります。ちょっと伺いますが、ご自分のお父様に感謝しておられますか?」
親メソッドキター!
相当複雑な育ちしてなきゃ、基本的に親に対して尊敬してるパターンが多いですし、この攻め方はかなり有効です。
ただ、俺みたいなパターン(家庭環境が最悪で、親に人生ぶっ壊されかけたことがある人)に対しては、下手すりゃぶん殴られそうになるんですが。
実際、宗教の勧誘で親持ち出したバカがいて、殴ったことありますんで。俺。
さらに、母親じゃなく父親を持ち出したのも巧妙というか。多分、相談者が男だったら母親を持ち出しそうです。
そして、大体にして、親に関する問いを持ちかけられたら戸惑うでしょう。割りと親と良好な関係にある場合は尚更。
A子「えっ?父ですか?そりゃもちろん感謝してますが・・・。」
B氏「お父様に対して『許せない』という思いを、心のどこかに持っておられませんか?」
「許せない」という抽象的な問いを持ちかけるあたりが巧妙というか。
「憎い」という表現を出さないあたりが巧妙です。「憎い」と切り出したら大体ははい・いいえと分かれるんですが、許せないかという問い出されたら、まず「何にたいして許せるか、許せないか」ということを考えますので、一時思考停止に陥ります。
実際、思考停止に陥って、B氏に頷けるような答えを返しましたし。
A子は、この「許せない」という言葉にひっかかった。
たしかに自分は父を許していないかもしれない、そう思った。
親として感謝しているつもりであったが、父のことは好きになれなかった。
結婚して以降も、毎年の盆・正月は、実家に顔を見せに家族で帰っている。
しかし、父とは、ほとんど挨拶ていどの会話しかしていない。
思えば、高校生のころから、父とは他人行儀な付き合いしかしてこなかっ
た。
A子「父を許してないと思います。だけど、父を許すことはできないと思います。」
何に対して許すか許せないかという観点が抜けてるというか。その場合はネガティブな感情のほうが多く出るからこういう答えになります。
そして、B氏ついに切り札を出します。
B氏「そうなんですね。じゃあ、ここまでにしますか?お役に立てなかっ
たとしたら、申し訳ありません。それとも、何かやってみますか?」
半分洗脳状態になってる上で、あえて本人に判断を求めるところがイイです。
そうすることで後々のごたごたが防げますし。
そして、相談者も、相談する時間分の元は取りたいので、その後は予想通りの回答です。
A子「私の悩みの原因が、本当に父や主人に関係しているんでしょうか?」
B氏「それは、やってみたらわかると思いますよ。」
A子「わかりました。何をやったらよいか教えてください。」
・・・何か、霊感商法とか新興宗教の勧誘で人をはめるときの流れっぽくなってきました。
ここでポイントは、「やってみたらわかる」という回答で返したことです。
具体的なことを言わないのがポイントです。
B氏「では、今から教えることをまずやってみてください。お父様に対しての『許せない』という思いを存分に紙に書きなぐって下さい。怒りをぶつけるような文書で。『バカヤロー』とか『コノヤロー』とか『大嫌い!』とか、そんな言葉もOKです。具体的な出来事を思い出したら、その出来事も書いて、『その時、私はこんな気持ちだったんだ』ってことも書いてみてください。恨みつらみをすべて文章にして、容赦なく紙にぶつけてください。気がすむまでやることです。充分に気がすんだら、また電話下さい。携帯の番号も教えておきます。」
・・・これがなかったら霊感商法とか新興宗教の勧誘のような感じだったのですがw
ただ、不満点を洗い出すというのは、確かにコンサルの常套的な手段だよなあ。
現状のシステムの不具合、不満点を洗い出すことでどうすればいいかというソリューションを見出すというか。
A子にとって、そのことが、息子の問題の解決に役立つのかどうかは疑問だった。
しかし、それを疑って何もしないよりも、可能性があるならやってみようと思った。
A子は、「今の悩みを解決できるなら、どんなことでもしよう」と思っていた。
まあ、いわしの頭も信心からというしなあ・・・。
そして、この辺がミソというか。
それに、B氏の話には、根拠はわからないが、不思議な説得力を感じた。
で、B氏の言いなりのとおり洗い出すわけです・・・。
長いので続きます。