北朝鮮による韓国・ヨンピョン島砲撃を受け、政府は、朝鮮学校の授業料無償化の審査手続きを停止することを決めました。
ただ、無償化を決める条件が不透明なこともあり、福岡の朝鮮学校でも波紋が広がっています。
●九州朝鮮高級学校生徒会長・ムン・テソンさん
「自分の胸にぽっかり穴が開いたようです」
●九州朝鮮高級学校生徒会副会長・キム・ミウさん
「自分の国の言葉や歴史を学ぶことが間違っているんでしょうか」
おととい北九州市の九州朝鮮学校で記者会見が開かれました。
学校側は声明文を読み上げ、「生徒と朝鮮半島の事態は関係ない」と訴えました。
北朝鮮が韓国・ヨンピョン島を砲撃。
民家にも命中し、民間人も死傷しました。
北朝鮮の砲撃は朝鮮学校に通う生徒の高校生活をも直撃しました。
政府は朝鮮学校の授業料無償化の審査手続きを停止すると決めたのです。
●仙谷由人官房長官
「現時点では、制裁的意味合いではないが、朝鮮半島が緊張してくる中で、現時点では手続きを停止することが望ましい」
日本の高校にあたる九州朝鮮高級学校には82人が通っています。
民主党政権が今年度から始めた「高校の授業料無償化」。
朝鮮学校は対象から外されていました。
ところが一筋の光が差し込みます。
今月初旬、政府・民主党は朝鮮学校を授業料無償化の対象にすると発表したのです。
その18日後、事件はおきました。
●九州朝鮮高級学校生徒会長・ムンさん
「自分の民族同士が争いをしているのは、やはり心が痛い」
●九州朝鮮高級学校生徒会副会長・キムさん
「境界線をちゃんと定めてなかったから」
北朝鮮による砲撃事件を受け、朝鮮学校の授業無償化問題は暗礁に乗り上げました。
朝鮮高校に授業料無償化を適用するにあたり、政府・民主党は支援金が生徒の授業料に使われたことを証明するなどの条件をつけました。
教育内容に懸念がある場合は、日本の教科書を使うよう促すという努力義務を盛り込んでいますが、審査基準の中で、外交問題は触れられていませんでした。
それでは無償化の手続きを凍結するという措置は、どのような判断で決められたのでしょうか。
●民主党福岡県連・野田国義代表
「慎重にやるべきだと思う。色々問題があるから」
●民主党・緒方林太郎代議士
「教育内容が、日本の国益と大きく外れるということであれば、それについて、日本国民の税金を投入することは許されざることだと思う」
●民主党・城井崇代議士
「一義的に、子供たちのためという部分にきちんと沿っているかどうかを、冷静に見ていくことが大事だと思う」
涙を流して訴えていたキムさんは、会見の後、北九州市内の職業訓練学校へと向かっていました。
イベントで民族舞踊を披露して欲しいと以前から依頼されていたからです。
●九州朝鮮高級学校生徒会副会長・キムさん
「ここの方々が真剣に私たちを見てくれて、拍手もすごくしてくれて、踊って良かったと思ったし、今日ここに来れて良かったと思った」
今回の北朝鮮による韓国への砲撃は許されるものではありません。
ただ、政府・民主党は朝鮮学校の授業料無償化について協議した上で、「教育内容は問わない」「政治は別問題」との見解を示していました。
●自民党・松山政司参議院議員
「ずるずると支給するといいながら、また今度はいかがなものかと言い出した。これについてどうするか、理念も含めて発表しなければならないと思います」
議論してルールを決めるはずの国会で、感情だけが先走りした感は否めない今回の凍結措置。
菅内閣は明確な判断基準をいまだ国民に説明できていません。