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[24600] 【習作】魔法少女リリカルなのは―守護の剣―
Name: 龍咲◆108ecc9e ID:f80f7023
Date: 2010/11/28 00:02
始めまして。龍咲と申します。

こちらに投稿させていただいている『魔法少女リリカルなのは―守護の剣―』は私の処女作です。

小説を書くということ自体がほぼ初めてで、至らない点が多くあると思いますが、温かい目で見守りつつ、気になるところはバンバン指摘していただいて私の文章力向上に協力していただけると嬉しいです。

どうか忌憚なき意見をよろしくお願いいたします。



この作品はリリカルなのはの無印からの再構成、オリジナル主人公モノです。なお、転生モノではありません。無印からといっても無印には直接的にかかわる予定はあまりありません。主人公が魔法関係に積極的にかかわるようになるのはA's以降になる予定です。
オリジナル展開をかけるほどのストーリー構成力がないため、基本的に原作通りですが、ときどき独自設定や独自解釈、ご都合主義レアスキルなどが出てくる可能性があります。

キャラの性格はなるべく変えたくないと思ってはいますが、もしかしたら一部キャラに違和感を抱くかもしれません。

鬱展開は嫌いなのでなるべくそっちにいかないようにしたいですが、私の文章が若干硬いので普通に書いてても暗い感じになる可能性があります。

デバイスは英語力ゼロのためミッド式だろうとベルカ式だろうと日本語でしゃべります。

注意事項はだいたいこんな感じです。

では、お目汚しになるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。



[24600] 第一話
Name: 龍咲◆108ecc9e ID:f80f7023
Date: 2010/11/28 02:53
ピピピピ ピピピピ ピピピピ

「んー…」

布団の中から手を伸ばし、目覚まし時計代わりの携帯電話のアラームを止め、起き上がる。

「あ”ぁぁぁ、変な夢見た」

数ヶ月前から増えた独り言が、誰に聞かせるでもなくまだ少し薄暗い早朝の空気にとける。

「何だあの化け物と戦う少年は。アリサ達とやったRPGの影響か?」

自分が見た夢の感想をつぶやきながら、布団をたたみ、パジャマから動きやすい服装に着替え、テキパキと行動していく。

俺の名前は高原剣。私立聖祥大付属小学校に通う小学3年生。腰まで伸ばした薄い青色の髪とそれなりに端正な顔立ちが自慢の少年である。8歳にしてはそれなりに筋肉質な身体をしており、とある友人の姉から「かたいから抱きしめ心地が悪い」だの「もっとぷにぷにな身体になって」だの言われている。

とある事情から、高級とはいえないまでもそれなりに広いマンションで一人暮らしをしている。

そのマンションを出て、まだ少し肌寒い4月の空気の中、日課のジョギングとトレーニングを1時間ほど行う。
部屋に戻ると新聞を取り込み、シャワーで軽く汗を流し、制服に着替え、昨夜下ごしらえをしていた食材に簡単な調理を加え弁当箱に詰めていく。
少し多め作ったそれは朝食となり、テレビのニュースを聞き流しつつ、新聞を流し読みしつつ、胃に収める。

これが高原剣のいつもと変わらない朝の風景である。










魔法少女リリカルなのは~守護の剣~










俺が通う私立聖祥大学付属小学校は海鳴市にあり、マンションがある遠見市とは少し離れたところにある。
そういう生徒のためにスクールバスが存在するが、俺は最寄りの乗り場では乗らず、友達がいる乗り場までいつもトレーニングがてら走っている。

「あ、剣。おはよー」

「おっす、アリサ」

バス乗り場で待っていた金色の長い髪を揺らす少女はアリサ・バニングス。俺と同じく、聖祥大付属小学校に通う小学3年生であり、特に親しい友達の一人である。約1年前のできごと以降、共に遊ぶようになり、親友と呼べる間柄になった。気が強くて強引な面もあるが、友達思いの優しいやつでもある。

「あんたもいつもいつも朝っぱらから疲れないわね」

「いつものことだし」

俺の住むマンションからアリサとの合流地点まで、今のおれの脚力だとだいたい30分かかる。

「それにこの程度で疲れてたらすずかに勝てん」

「毎度思うんだけど、あんたもすずかも軽く小学生の域を超えてる気がするのはあたしの気のせいかしら…」

軽く話をしながらちょうどやってきたバスに乗り込む俺たち。その最後部の座席には件の少女である月村すずかが座っていた。

「おはよう。アリサちゃん、剣くん」

「「おはよー」」

月村すずか。アリサと同じきっかけで友達になった紺色のすこしウェーブがかかった長い髪の少女。見た目はおしとやかなお嬢様という印象を受け、実際におしとやかなお嬢様なのだが、運動能力は同年代を軽く凌駕している。すずかに対抗できているのは三年生の中では俺くらいなものだ。最も最初は手も足も出なかったが。

「二人とも何の話?」

自身を挟んで座る二人に尋ねるすずか。

「剣とすずかの運動神経がすごいって話」

「昨日のドッヂボールは結局俺とすずかの一騎打ちだったしな」

俺は苦笑とともに前日の体育の授業の様子を思いだす。ものの数分で自分とすずか以外のメンバーは内野からはじき出され、その後授業終了のチャイムが鳴るまで超高速キャッチボールが行われていた。

「あたしにとっては高速で飛び交うボールを見るだけの退屈な時間だったわ…」

「あ、あはは」

「♪~」

若干呆れ顔で主犯の二人を睨むアリサの視線を、すずかは気まずげに笑い、俺は素知らぬふりで口笛を吹く。別にいいだろ。体育の苦手なやつらからは感謝されてるし、アホな男子連中はどっちが勝つか賭けたりしてそれなりに楽しんでるやつら多いぞ?

そうこうしているうちにアリサをリーダーとしたグループの最後の一人が合流する。

「「「なのは(ちゃん)」」」

「あ、おはよーみんな」

アリサとすずかの間に座った栗色の髪の少女の名は高町なのは。アリサとすずかを通じて友達になった子だ。

アリサ、すずか、なのははクラス内で特別に親しい友達だ。去年は俺だけクラスが違ったが、3年進級と同時に4人とも同じクラスになることができた。



彼女たちと友達になった経緯を思いだす。

それは1年前の6月中旬。下校時に偶然アリサとすずかが誘拐されそうな場面を目撃したことから始まる。当時は同じクラスですらなかった二人だが、放っておくこともできず助けようとその現場に飛び込んだ。
結局何をすることもできず、それどころか一緒に連れ去られてしまったわけだが。

そして、俺は誘拐犯の一人に殺されかける。

俺自身にはアリサやすずかを助けるなどできず、最終的には救出に来た恭也さんの戦う姿を、朦朧とした意識の中で見つめることしかできなかった。

その後搬送された病院で丸一日昏睡していたが、目覚めた時に俺の手を握るアリサとすずかの二人を見た時にはすごく安心した。

二人が無事だったことに安心した面もあるが、この時の俺は人の温もりにも飢えていて、握られた手の暖かさに久しぶりの安らかさを覚えていた。
ただ、二人の背後にいる俺の両親から注がれる視線からは暖かさも優しさも感じず、異端のものに対する恐怖がありありと浮かんでいた。

手を握ってくれる二人に怪我がなくてよかったと伝えると、二人は逆に涙目で怒りだして俺の怪我を心配した。だが、心配する必要などない。俺には怪我なんてひとつもなかった●●●●●●●●●●●●●のだから。

こんな優しい子たちは、もう二度とあんな怖いことは体験するべきではないと思った。だからそのとき、二人の手を握り返し「今度は必ず二人を守る」と誓った。アリサは「な、ならあたしに心配させないくらい強くなりなさい!」と若干赤い顔で答え、「でもそんなことは気にしないで友達になってほしいな」と微笑みながらすずかは答えた。

この日、俺たちは友達になった。そして二人を守れるくらい強くなることを誓った。

なのはとは、…まぁなりゆきである。強いて言うならアリサとすずかのおまけ?

「剣くん、何か失礼なこと考えてない?」

「気のせいじゃない?」

勘の鋭いお嬢さんだこと。



スクールバスが校門前に到着し、今日もいつも通り学校が始まる。



------



「将来、かー」

ただ今昼食の時間。屋上でなのはがため息とともにつぶやく。
将来のことを考えてみるように言っていた直前の授業のことを気にしているのだろうか。

「なによなのは。辛気臭い顔して」

「ため息吐いた分だけ婚期が遠のくぞ」

「さっきの授業のことでちょっと考えちゃって―って剣くん、それを言うなら幸せが逃げるだよね!?なんで婚期なの!?」

「いや、なんとなく。ふと結婚より先に子供がいそうなイメージがしただけ」

「何そのイメージ!?」

「まあまあなのはちゃん落ち着いて」

興奮気味のなのはを隣のすずかがなだめる。何故あんな発想をしてしまったのだろうか。並行世界からの電波?

「はいはい、それで将来がどうしたって?」

それた話を軌道修正するアリサ。素知らぬ顔で俺の脚を踏むのをやめてください。なのはをからかったバツですか?

「将来のことって言われるとわからなくて…アリサちゃんは何か考えてるの?」

「あたし?」

なのはの質問に、いったん箸を止めて考え始める。

「うちはお父さんもお母さんも経営者だし、いっぱい勉強してちゃんと後を継がなきゃってくらいだけど。すずかは?」

「わたしは機械系が好きだから、工学系の専門職がいいなと思ってるけど」

「そっか…」

友達の二人が明確のビジョンを持っていることに自分との差を感じているだろうか。

「つーか、お前には喫茶翠屋の二代目ってポジションがあるじゃん」

こないだ作ってたクッキーおいしかったし。それに並べ方も自然に綺麗に並んでた。料理そのものの味ももちろんだけど、見た目にも自然に気を配れるセンスは喫茶店の跡継ぎの資質としては十分だと思うが。

「そうなんだけど、他に何かあるような気がして…。でも私には特技も取柄も得意なこととかすごいところがないし…」

あぁ、なんかいじいじし始めやがった。こいつときどきだけど自己評価が著しく低くなる時があるよな。てか、そんなこと言ってると隣の金髪少女の火山が―

「だあぁぁっ!あたしより理数系の成績がいいくせに、どの口がそんなこと言うかーー!」

「うにゃあああーー!」

ほら噴火した。

「文系が体育がー」と言い訳するなのはの声は、人間の頬の伸縮限界に挑んでいるアリサには届いていない様子。

「それで、剣くんの将来の夢は?」

屋上中の注目を集めてじゃれる二人をすっぱり無視してすごくいい笑顔でお尋ねになるすずかお嬢様。俺はときどきあんたがおそろしいよ…。

「アリサとすずか、というか大切な人を護れるような人間になりたい」

真剣な顔をして答える。すぐそばで「うにゃぁぁぁぁ!」「ほーれほーれどこまで伸びるかしら」なんて声が聞こえるせいでまったく緊張感はないが。

「それってボディーガード?」

「どうだろ?それがいちばん近い気もするけど、よくわからん。とりあえず今は強くなることが必要だと思ってる」

少なくとも、護りたい人よりも弱ければ話にならない。だからすずかよりも強く、アリサよりも成績が良くないといけないと思っている。
"戦い"という面ではわからないので、ここでいう強さはすずかの運動能力が該当する。すずかの運動能力は同年代とくらべてずば抜けて優秀だ。最初のころはまったく歯が立たなかったが、ここ最近はトレーニングのおかげか横に並ぶことはできるようになった。初めて徒競走ですずかの隣に並んだ時はすごい驚いていたのを覚えている。…自分に並べる人などいないと思っていたのだろうか。
成績の面ではアリサと並んでいる。というか、アリサが100点を取る以上追い抜くことはできないわけだが。とりあえずアリサが中学生の範囲の勉強もやっているというのなら、こちらは高校生の範囲まで修めるだけだ。

「最初の時も言ったけど、護る護らないじゃなくて、友達でいてくれるだけでわたしはいいんだよ?」

「それはわかってるけどな。ま、これはオトコノコの意地ってやつだから」

ところで目前のじゃれあいは誰が止めるんだろうか。




------




自分にできること、自分にしかできないこと、か。確かに俺にはそういう力がある。他の誰も持っていないような特殊な力が。

でも、それを活かそうとは思わない。その力の所為で失ったものがある。だから、これ以上失わないために、この異能はなるべく使いたくない。そして、誰にもばれたくはないんだ。そんなことを考えながら歩く帰り道。

「今日のドッヂボールも決着がつかなっかたわねー」

「でもすずかちゃんも剣くんもかっこよかったよ」

「そんなことないよ」

「そういうなのははかっこ悪かったな」

「むー!」

事実を指摘しただけでむくれるなよ。俺が全力で投げるふりをしただけで慌ててこけてたやつが。…こらアリサ。通りすがりの犬に吼えて脅すのやめなさい。

「あ、こっちこっち!ここを通ると塾への近道なのよね」

「そうなの?」

「道はちょっと悪いけどね」

公園のわき道を進んでいく俺たち。昼間でも少し薄暗く、夕方以降には決して近寄りたくない空気を醸し出す場所だが、いつの間にこんな道を見つけたんだろうか。
結構頻繁にこういう抜け道近道を見つけてくるところは、どこかネコっぽい。本人は犬好きだが。

それにしても―

「「うーん」」

「どうしたの?二人して」

「いや、たぶん気のせい」

「にゃはは、わたしも」

「それなら早く行くわよ」

なんか今朝の夢で見た場所に似てる気がする。アリサの呼ぶ声にひかれながら辺りをきょろきょろと見回す。何故かなのはも同じように辺りを見回していた。

そして、少し歩いたところでソレは聞こえてきた

―た…けて―

「「!?」」

俺となのは。驚いて立ち止まる。

「今、なにか聴こえなかった?」

「ああ、なんか声みたいのが聞こえた」

「わたしは聞こえなかったけど…アリサちゃんは?」

「んー、特に何も聞こえなかったわよ?」

気のせいというにはやけに明瞭な声だった気がする。俺となのはは聴こえなかった二人を尻目に辺りを見回して耳を澄ます。

―たすけて!―

「「こっち!」」

今度ははっきり聴こえた。いや、"聴こえた"というより"感じた"といった方が正しい気がする。とにかく声を感じた方に一目散に駆けだす。

結構本気で走っているのに、いつものどんくささはどこへ行ったのかしっかりとついてくるなのはに少々驚く。

「え、ちょっと!待ちなさいよっ」

突然走り出した俺たちに少し遅れてアリサ達が続く。

「「いた!」」

林の中の少し開けた場所の真ん中で、小動物がうずくまっていた。

俺となのはが近づいてしゃがむと、ゆっくりと目を開きなのはを見た後、また目を閉じて気を失った。

―この出会いが、なのはの運命を大きく変えていくことになる―



------



「怪我はそんなに深くないけど、ずいぶん衰弱してるみたいね。きっとずっと一人ぼっちだったんじゃないかな」

すずかの自宅からのナビでたどり着いた牧原動物病院にて、院長の牧原先生が治療を終えて診断結果を教えてくれる。

「牧原先生、ありがとうございます」

「「「ありがとうございます」」」

「いーえ、どういたしまして」

寝台の上に寝た、ところどころ包帯が巻かれた小動物を皆でのぞきこむ。見つけた時よりも落ち着いた呼吸をしているようだ。

「先生、これってフェレットですよね?誰かのペットなんでしょうか」

「フェレット…なのかな?変わった種類だけど」

正直俺にはフェレットだろうがイタチだろうがオコジョだろうが区別はつかん。まあいつまでも小動物と呼ぶわけにはいかないし、便宜上フェレットと呼ぶことにしよう。

「それにこの首輪についるのは宝石、なのかな?」

牧原先生がフェレットの首にぶら下っている赤い宝石らしきものに手を伸ばすとフェレットが目を覚ます。

わずかに体を起こし、きょろきょろ見回す姿にみんな「うわー!」と感激している。そして顔がなのはの前で止まる。

「見られてるわよ。なのは」

「う、うん。えっと…」

すこし迷って、そっと指を伸ばす。

「ちょっ、ネズミ類にそんなことしたら噛まれ―」

ぺろ

「―ないな…。…先生、こいつオスですか」

「ええ」

そんなやり取りをしている間に再び気を失うフェレット。てか、怪我による痛みで意識を失う寸前の行動でやることが、女の子の指を舐めるという行為なのは同じオスとして称賛するべきなのだろうか。こう、"セクハラに命かけてます"みたいな。まあ人間とフェレットでは比べるべくもないはずだが、何故だかそう思った。

「安静にしていたほうが良さそうだから、とりあえず明日まで預かっておこうか?」

「「「「はい!お願いします!」」」」

塾の時間が迫っていたので若干後ろ髪をひかれつつも動物病院を後にする。



------



なんとか遅れず塾に到着し、いつも通りの席につく。並びは左からすずか、なのは、アリサ、俺、が定位置。俺たちが横に並んで座るときはある程度座り方が決まっている。なのはの右にアリサ、なのはの左にはすずか、という風に。俺はだいたいアリサの隣に座っている。そうでなければすずかの隣だ。

なのはは俺たちの中心にいる。俺たちのグループのリーダーはアリサだ。だけど、核になっているのはなのはだと思う。それはアリサとすずかを結びつけて友達になったのが関係しているのかもしれない。なのはという星を中心に、輝く太陽のようなアリサと静かな月のようなすずかが絶妙のバランスを持って周っている。そして俺はその外側で周っている小さな流星。俺はそんなイメージを持っている。
俺はいずれ、なのはを中心とした周回軌道から外れていってしまう気がする。大人になっていくほどに、性別が違う俺はきっと皆に近づきにくくなっていく。中学からは男女で別々になる。だから、このポジションに居られるのはどんなに長くても小学生までなんじゃないかと思っている。

『どうしたの?暗い顔して』

アリサからルーズリーフの一枚が渡される。先のことを考えていたらすこし顔に出ていたようだ。

『なんでもない。ところであのフェレットはどうする?ちなみにうちのマンションは室内含みペット禁止だが』胸に感じた一抹の寂しさをごまかしアリサへ

『うちには庭にも部屋にも犬がいるしなー』なのはを飛ばしすずかへ

『うちにもネコがいるから』なのはへ

『うちは食べ物商売だからペットの飼育はあまり…』アリサを飛ばし俺へ

『別に翠屋に置いとくわけでもあるまいし、高町の家ならかまわないんじゃないのか?』アリサを飛ばしなのはへ

なのははすぐに書き込むことはせずすこし悩んでいるようだ。

「はい、じゃあこの問題の答えを…29番高町さん」

「あ、はい!」

どうやら考え事に集中してどこまで進んだか追い切れていないようだ。ふむ、ならば

(47ページの問4だ)

(あ、こら!)

おや、アリサさんどうかされましたか?その間にもなのはは「えーとえーと」と計算中。

「なのは待っ「21分の4です!」あちゃー…」

「違いますよ高町さん。…それは問4の答えですね。授業はちゃんと聞くように」

「ご、ごめんなさいー」

しゅんとして席に着くなのはにいい笑顔でサムズアップしてみる。

(このばかちん!)

(あだっ!)

隣のアリサに思いっきり足を踏まれ、なのはに「むー」っと睨まれ、すずかには「めっ」とたしなめられる。
ちぇー、ちょっとしたお茶目なのに。

その後のルーズリーフのやり取りで

『とりあえず帰ってみんなに相談してみる』

と、なのはが宣言したところでその後は終わるまで授業に集中した。



------



買い物袋をぶら下げマンションへと向かう。俺は海鳴市ではなく隣の遠見市に住んでいるため、塾のある日はバニングス家のリムジンで送ってもらうことが多い。今日は夕飯の材料がきれていたので、少し離れたスーパーで下してもらったが。

マンションの玄関口に近づいた時、見慣れない赤味がかったオレンジ色の長髪の女性がマンションを見上げていた。大学生くらいだろうか?黒のTシャツに短パン、腰にアクセサリーのチェーンを巻いていて、ワイルドな印象を受ける。

「このマンションがどうかされました?」

なんとなく気になったので思わず使い慣れない敬語で話しかけてしまった。

「あー、怪しいもんじゃないよ。しばらくこっちに滞在することになったからいい物件を探してんだ」

一瞬話しかけられた事に驚いた様子だったが、苦笑しつつ答えてくれた。

「そうですか」

なんとなく、お互い見つめあったまま無言になる。額に赤い宝石のようなものが付いているが、これもアクセサリーだろうか?

「ここの上層階は見晴らしがいいかい?」

俺から視線をそらし、また上を見上げる女性。一応表情は笑っているが、なにかうかない感じがする。

「そうですね…満月の夜に部屋の電気を消してカーテンを全開にして町を見渡すと、絶景とは言わないまでもそれなりに心奪われる夜景が見られますよ」

淡い街の明かりと、遠くに見える海に反射して映る月。夜の静寂の中で、心を鎮めてくれる。―――同時に独りの寂しさもより際立ってしまうが。

「そうかい。いやね、連れの子にすこしは気晴らしをさせてあげたくてさ。せめて住むところくらいは、と思ってね」

言葉の端に、その『連れの子』とやらに対する深い愛情と、少しのやるせなさを感じる。何やら厄介なものを抱えているっぽい。

「それで、こちらの印象は?」

「第一候補って感じ、だね。他にもいくつか回ってみる予定だけど、多分ここになるよ」

「そうですか。そのときはよろしくお願いします」

「ああ。ま、滞在期間は短いはずだから迷惑はかけないさ。それじゃ」

そう言うと、もうこちらを振り向くことなく去っていく。
なるべく上の階を望むなら、おそらく最上階の空室を望むだろう。俺の部屋の隣だ。

何やら訳ありっぽい隣人が越してきそうだ。ま、滞在期間が短いらしいし、必要以上にかかわらなければ大丈夫だろう。



そして、帰宅してから夕食の準備、翌日の弁当の下ごしらえ、宿題、予習復習、トレーニング、入浴を経てベッドに入った。まどろみの中、何か声が聞こえた気がしたがそのまま眠った。

―――俺と、その日生まれた"魔法少女"とのお互いの顔を見合わせての邂逅は、クリスマスの夜まで果されることはなかった―――











------あとがき------

まずは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
たったこれだけの第一話の執筆に2週間をかけてしまいました。別に仕事が忙しかったというわけではなく、単純に私の力不足の所為です。
ああ、「キャラクターが勝手に動いてくれる」とか言ってみたい。台詞一つ、行動一つがなかなかうまく書き表せず、何度も書いては消し、書いては消しを繰り返しました。
そのくせ、迷ったらアニメの台詞をそのまま代用する始末。
精進します。

さて、この話の最後にあるように主人公の高原剣は無印では基本的に魔法の事件にかかわりません。アリサとすずかとともになるべく"日常"を中心に書きたいと思っています。
私の力ではうまくいくかはわかりませんが…。
最後のアルフとの邂逅は本来予定にはなかったのですが、本日見たなのはのBDのキャラクターコメンタリーで、ジュエルシード探しの拠点はアルフがフェイトのために探した、という事を聞いたので、急きょ物件探しのアルフが登場と相成りました。…こんな風に思いつきでイベントを増やすからなかなか進まないんだよね…。結局途中で詰まって全削除とかよくあるし…。

それでは、次回をお待ちください。



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