2010年11月29日21時10分
警視庁公安部などの内部資料とみられる国際テロ関係の情報がインターネット上に流出した問題で、個人を特定できる流出情報をそのまま掲載した書籍「流出『公安テロ情報』全データ」を出版した「第三書館」(東京都新宿区)に対し、東京地裁(田代雅彦裁判長)は29日、本の販売を差し止める仮処分命令を出した。
申立人側代理人の弁護士によると、個人情報を掲載されたイスラム教徒数人が28日、プライバシー侵害や名誉棄損を訴えて仮処分を申し立てていた。地裁は、29日に第三書館側から事情を聴く審尋を予定していたが、出席しなかったという。申立人側は、書籍の取り次ぎ各社や書店にも販売の自粛を文書で要請した。
申立人の一人は「被害者の傷口を広げ、一般市民の不幸をあざ笑うかのように、流出データを何の配慮もなくそのまま出版して利益を得ようとする行為は、言語道断だ」とするコメントを寄せた。
弁護士は内部資料について「捜査に協力したつもりが、悪意を持って容疑者扱いして書かれている」と指摘。第三書館側は警察の情報管理のずさんさを問題提起するために出版したと主張しているが、「一般人の情報を一切加工せずに書店に並べることにはつながらない」と批判した。
イスラム教徒らは、書籍が発行された翌26日に弁護士を訪ねて相談。地裁は、28日の日曜日に申し立てを受け、翌日、決定を出した。書籍には、捜査協力者の名前、顔写真、住所のほか、旅券番号、家族構成、出入国記録までがそのまま記載されており、地裁は緊急性を考慮して迅速に対応したとみられる。