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カプコンを脱藩した「鬼武者」稲船

叩きあげ創業者の使い捨て経営に、見切りをつけた。ゲームづくりの雄が挑むリベンジとは。

2010年12月号 BUSINESS

ワイン道楽に励む辻本憲三会長

AP/Aflo

作家、村上龍がメルマガの編集長や電子書籍出版に挑戦するのはいい。でも、テレビ東京の経済人ドッコイショ番組「カンブリア宮殿」のキャスターはいただけない。悲しいかな、所詮は知ったかぶりだから、企業経営の本質を見抜けないのだ。

8月2日放映の「駄菓子屋から世界企業へ 辻本憲三」編がそうだった。間口3間から始まる立志伝。綿菓子製造器、改造パチンコ台、インベーダーゲームと三段跳びでカプコンを創業し、ファミコンゲームから「ストリートファイター」や「バイオハザード」などのヒットで、スクウェア・エニックスと並ぶ家庭用ゲームソフト大手(東証・大証1部上場)にのし上がった。

テレ東は6月にも「ワールドビジネスサテライト」で辻本を持ち上げている。「作れば売れる時代の終焉」と。8月の番組では、会長室で分厚い資料の数字と格闘する69歳の辻本の姿が映る。「現場よりも数字」とのナレーション。村上が「成功した経営者は現場主義が多いのですが、なぜ現場より数字なんですか」と尋ねると、あてにならないクリエーターの言い分より「数字のほうが安心」と会長は嬉々として答えた。

三本指に入るヒットメーカー

したり顔でうなずく村上。作家とはなんて鈍感な動物なのだろう。同社900人のゲーム開発部隊を統括し、20件以上のプロジェクトを指揮していた常務執行役員(開発統括本部長兼コンテンツ統括)稲船敬二(45)と創業者が抜き差しならなくなっていたのが感じとれないのだ。

稲船は「ロックマン」「鬼武者」「モンスターハンター」「デッドライジング」などのヒット作を世に送り、日本のゲーム業界では「スーパーマリオ」の宮本茂、「メタルギア・ソリッド」の小島秀夫と並ぶスター三人衆の一人。番組では「どんな判断や、金をドブに捨てる気か!」と叫ぶシーンがちらっと映るが、嫌々だったという。手柄をすべて独り占めにする創業者に鼻白んでいたのだ。

9月20日、米ニューヨーク・タイムズ紙に稲船の長文インタビューが載った。過去最高の194社が参加した9月の「東京ゲームショウ2010」を酷評している。「みんな、ひどいゲームをつくってる。日本は少なくとも5年は遅れた。コンソールで遊ぶ最後の世代のためにゲームをつくってるようなもんだ」と一刀両断。稲船はすでに独立するハラだった。

9月27日、稲船は会長と会う。その時点までは、継続中のプロジェクトは独立後も外注の形で請け負う気でいた。ところが、飼い犬に手を噛まれたと思ったか、会長は数日後に小田民雄CFO(最高財務責任者)兼取締役と一井克彦常務執行役員(コンシューマエンターテインメント事業統括本部長)を呼び、「稲船とは一切契約をしない」と告げた。

仰天したのは役員陣だ。稲船がいないと進行中のプロジェクトの8割に支障が出る。開発が軒並み保留か中止になったら、数十億円の損失を出しかねない(カプコン広報・IR室は本誌に「影響なし」と回答した)。ゲーム開発は1作品に3年かかるものなどザラで、影響は今後数年に及ぶかもしれない。二人は懸命にとりなしたが、会長の怒りは収まらない。息子の春弘社長も説得に加わったが、稲船と同年齢の引け目からか、途中で腰砕けになった。

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カプコンのプロデューサーが退社
From: 永遠の6歳
Excerpt: カプコンを脱藩した「鬼武者」稲船 結局、稲船は「カプコンではもうやることがない」と辞表を提出、10月下旬のコーポレート会議で受理された。 28日のプレスリリースでは執行役員1人の昇格だけ発表し、稲船...
Tracked: 2010.11.27 11:05

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