沖縄知事選の結果と社民党の動向 - ５月末の騒動が小さく再現か
沖縄知事選は４年前に続いて今回も敗北。民主党の支持がなかったとはいえ、伊波洋一という傑出した候補で現職と一騎打ちして、勝利できなかったという点は問題が多い。都市で大票田の那覇で惨敗した点が注目されているが、まさにそこが問題の中心だろう。従来型の社共革新の選挙では勝てない。昔は、革新勢が都市部で票を集めたが、現在は逆の構図になっている。無党派は保守的で、都市部の中間層が保守・新自由主義の牙城なのだ。今回、伊波洋一を押し立てた勢力は、昨年からの普天間問題の盛り上がりの順風を選挙に生かせなかった。本来、勝たなければいけな選挙であり、勝って当然の選挙であったにもかかわらず。また、沖縄の人々は、普天間を国外に移転する機会を自ら潰した。選挙主体の側だけでなく、正直なところ、沖縄県民に失望を覚える。知事選で民意を示さずして、どうやって基地撤去の政治を導けるのか。辺野古の海が埋め立てられた新基地からオスプレイが飛び、それが民家に落ちて犠牲者が出るまで、それまで待つというのが県民の意思だろうか。基地と見返りの振興費では、沖縄経済は立ち行かないというコンセンサスができていたのではなかったのか。６月のクーデターからの経緯があり、尖閣問題があり、本土では状況が一変し、沖縄知事選への関心がすっかり失われていた。私も記事は書かなかった。それには理由がある。
３月から４月の普天間問題が盛り上がっていた頃、私はブログで「五つの提案」を繰り返し、沖縄の人々にネットでの運動の発起を求めたが、応答や反応が全くなかった。11月の県知事選の勝利に繋げ、国外撤去を実現させるためには、本土に世論を沸き起こし、国民運動のモメンタムを作らなくてはならない。沖縄一県だけで世論や運動を完結させてはいけない。という意味の主張を何度も言ったが、沖縄の人々の呼応は皆無だった。別に自慢を言うつもりはないし、私の記事との因果関係を証明できるとは毛頭思わないが、小沢一郎を支持する「１万人集会」の訴えについては、何度も声を上げている間に勇気ある人々が奮起したという事実があった。声を涸らして訴え続けてよかったと思っている。沖縄の人々の本気度の欠如と言うか、熱意の無さを痛感させられた。何で、あの局面でネット運動を立ち上げる有志が現れなかったのだろう。本土と手を繋ぎ、現地の情報を伝え、運動の輪を広めようとする動きがなかったのだろう。連帯を求める指導者が市民から出なかったのだろう。普天間基地撤去の抗議デモというのは、知事選に向けての過程で、東京や大阪で断続的に行われるべきもので、本土在住の県出身者の手で組織されるべきものではなかったか。仲井真弘多が選挙で県外移設を公約したから、そこに成果が見出せるなどと言う気休めは無意味だ。嘘に決まっている。当選後は必ず態度を豹変させる。
政府の言う「基地負担軽減」と同じで、それは口先だけの騙しだ。実際には、沖縄の基地負担は増大するだろう。東アジアで新冷戦構造が固まり、緊張が高まる中で、米軍だけでなく自衛隊も沖縄に増強される。次の知事選の頃には、辺野古が埋め立てられているだけでなく、新しく追加で勝連半島沖の基地建設が争点になっているかもしれない。否、現実は想像をはるかに超えて悪い方向に進んでいる。４年後は沖縄が戦場になっているかもしれない。テロ攻撃以外の実戦を想定したとき、ミサイル着弾とか上陸侵攻とか、この国で最も戦場化する可能性が高いのが沖縄だ。情勢を考えれば、あのとき、伊波洋一を当選させる選挙にしておけばよかったと、沖縄の人々が後で後悔する事態になるのではないか。戦争が起きても起きなくても。戦争を阻止する指導者を選んでおけばよかったと、臍を噛む展開になるだろうと予想する。海兵隊のグアム移転は延期されるか、あるいは計画そのものが縮小され、逆に「前線」に近い沖縄の方に兵力が増強される方針転換されて不思議ではない。軍事はクイックに戦略が変わる。米軍からすれば、海兵隊を沖縄からグアムに後退させるということは、中国に対して前線の陣地を手薄にするメッセージを放つことを意味する。と、そう考える参謀や政治家もいるだろう。米国の政治は、東アジアの緊張を高める方向に動き、平和を唱える候補や勢力は選挙で票が入らなくなっている。おそらく２年後の大統領選も。
この知事選の敗北に絡めて、言及しなければならないのは社民党の問題だろう。この敗北は社民党にとって大きな打撃で、党の解体をさらに誘発する材料になると思われる。福島瑞穂の権力基盤は一段と危うくなり、民主党への吸収合併で生き残りを図る右派（阿部知子と又市征治）を勢いづけると思われる。7月の参院選敗北以降、福島瑞穂は沖縄県知事選に注力し、Twitterを見ていても、ほとんど沖縄に張り付いている雰囲気があった。これを党勢再起の転機にしようと目論んでいたのは明白で、勝利に賭けていた意向が窺われる。何やら、社民党がローカルパーティになった感があり、恰も社民党が社大党に統合されたかの如き景観だった。中央で足場を失った社民党が、沖縄に勢力を溜めて割拠し、反転攻勢の機会を待つという印象だった。おそらく、年末から年始にかけて、社民党の正式与党入りの小政局になる。このとき、マスコミと民主党執行部は、社民党に「日米合意」拒絶を撤回させるよう強要し、同時に恭順と服従の証として福島瑞穂のクビを差し出せと迫るだろう。５月末の騒動が小さな騒音で再演され、いよいよ福島瑞穂の進退が窮まるのではないか。参院選と知事選に敗北した今の社民党は、言わば関ヶ原敗北後の豊臣家であり、次は大坂城の外濠を埋めろ（福島追放）という段になり、連続して大阪夏の陣を迎えるのだ。豊臣家滅亡であり、社民党の解散と民主党との合同である。辻元清美が福島正則、阿部知子が片桐且元だろうか。社民党は滅亡する。
福島瑞穂と阿部知子の二人のTwitterを比較すると面白いが、福島瑞穂の方はもっぱら沖縄の話ばかりで埋められている。一方、阿部知子の方は参院選以降に沖縄に触れたツイートは２件だけだ。二人の温度差がよく伝わってくる。福島瑞穂のBlogを見ると、11/27の記事に、志位和夫と伊波洋一の３人で撮影した写真が貼っている。関係者には恐縮だが、こういう映像は、那覇の無党派層の票を伊波洋一に呼び込む上では、陣営の戦術としてむしろ逆効果だったのではないかと思えて仕方がない。マイナスの作用しか及ぼさないのではないか。社民も共産も、もう終わった党で、絶滅指定種の政党だ。本人たちがそれに気づいてないか、気づかぬフリをしているだけである。私が選対本部の者なら、社民と共産の政党色はなるべく表面から消し、無党派層に媚を売る戦術を試みた。政治は結果だ。東京から呼んで街頭に立たせる顔は、例えば、鳥越俊太郎、田中優子、湯浅誠、マイケル・ムーアである。逆に言えば、こうした面々が応援に来てくれるところまで、選挙戦が始まる前の段階で優勢を固めておかなければならない。マイケル・ムーアは父親が沖縄戦に参加している。応援を依頼する価値はあっただろう。伊波洋一のような逸材は容易に掘り出せないことを思うと、できれば、58歳のこの時点で知事選に勝たせたかったと残念に思う。だが、全体的な流れから見て、伊波洋一が勝てる条件は少なかったと思うし、結果は予想どおりのものとなった。悪い方向への流れは断ち切れない。政治の流れを変えるには、他力しかないという確信がますます強くなる。■ 社民と共産の絶滅について - 「他力」、「国民党」、「バスケット新党」
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