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【産経抄】11月29日
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「ぼくらの暮しと 企業の利益とが ぶつかったら 企業を倒す ということだ ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつかったら 政府を倒す ということだ」。雑誌「暮しの手帖」の初代編集長、花森安治は、こう宣言した。
▼花森のような「反骨の編集者」の列に加わったつもりかもしれない。警視庁公安部などが作成したとみられる国際テロ捜査関連の文書が、インターネット上に流出した問題で、第三書館という出版社が、データをそっくり収録した本を出版した。
▼出版社の社長は、「そもそも警察がテロリストを疑って個人情報を集め、違法捜査をしていることを明らかにしたかった」と語っている。「反骨」はわかったけれど、「ぼくらの暮し」はどうなっているのだろう。
▼本には、警察官や在日のイスラム系外国人らの名前や住所などがそのまま掲載されている。彼らのプライバシーは徹底的に踏みにじられた。そもそも今回の流出は、海上保安庁からの映像流出とは比べものにならないほど深刻な事件だ。情報拡散に加わるのは、テロ活動に加担するに等しいと思う。
▼事件が発覚してから約1カ月の間、警察は一体何をしていたのか。警察といえば国家公安委員長は、北朝鮮の砲撃にもわれ関せずだったし、官房長官は、自衛隊を「暴力装置」と呼んではばからない。治安の乱れは、現政権の「性向」と無関係とは思えない。
▼おとといの小紙は、警視庁の騎馬隊員が、暴れ出した馬から落ちながらも、周りに危害が及ばないように手綱を離さなかったために重傷を負った、と報じていた。こんな献身によって、かろうじて守られてきた「ぼくらの暮し」が、今まさに危機にさらされている。