これまで北朝鮮と融和策を用いてきて、成功した試しはまったく皆無であり、逆にいつも、ますます好戦的かつ、挑発的な行動に出てきているのである。
北朝鮮は表面ではどんな言葉を発しても、国際的にも証拠の揃ったラングーンの爆発事件や大韓航空機爆破事件を、自国の仕業であると認めていないのである。
そんな好戦的な独裁国家に、平和的な対話を期待しても、しょせんは無理であるといってよい。時間稼ぎをしながら、新たな核開発に勤しんでいるのである。
したがって、今回の軍事衝突における事実は1つだけなのだ。それは「第二次朝鮮戦争の始まり」の可能性があるということ。
1950年の朝鮮戦争の開戦時も、北朝鮮軍の突然の砲撃から始まったのだ。このときの北朝鮮軍も、「南朝鮮の傀儡政権からの挑発による自衛的反撃」という声明を出し、一挙に38度線を超えて、戦車部隊と歩兵部隊が侵入してきたのである。
今回の軍事行動も、まさにその徴候と見て間違いないであろう。60年前は、北朝鮮軍が連戦連勝で、韓国軍が朝鮮半島の南端に追いつめられたとき、米軍を中心とした国連軍が仁川に上陸して、反撃して盛り返す。北朝鮮軍が劣勢と見た中国の人民解放軍が介入して、朝鮮半島のちょうど真ん中あたりの38度線のラインで、休戦協定を結ぶことになったのだ。
GNP世界第2位の超覇権国家が「核保有」独裁国家の後ろ盾に
しかし今回の情勢は、50年当時とはまったく異なっている。まず、北朝鮮軍の後ろ盾の中国が、世界第2位のGDPを誇る超大国になっていること。
中国は六ヵ国協議や国連の会議などで、自ら覇権を求めない平和国家だとしているが、もともと何千年も昔から、自分が世界の中心であるという中華思想を有して、領土拡大の野望のもと周辺各国へ侵攻を繰り返してきた背景がある。
数年前に北朝鮮が核実験を行ったときも、口先では非難するも行動は伴わず、むしろ陰では、「これで極東アジアから米国や韓国、日本の影響力を少しでも排除できる」とほくそ笑んでいるような節があった。
そしてもう1つ、60年前との決定的な違いは、北朝鮮が核保有国であることだ。