むかしむかし・・と言っても１３年前だけど、「東電エリートOL殺人事件」という“不可解”な事件が世を騒がせたことがあった。この事件の何が不可解だったか？というと、結局犯人探しそのものよりは、被害者女性の身辺があまりにも「え〜？！」だったからで：
昼は東京電力のエリート社員、夜は渋谷の道路脇に立って、自分で声をかけて５００円でカラダを売っていたという被害者のプロフィールが世に明るみにでるにつれ、センセーショナルな報道は過激化していった（ま、被害者がやっていたことがかなり非常識な売春行為だったからだが・・）
「いったいこの女性って何？」という騒ぎが完全に収まった現在、わたしが思うに、この被害者女性って、軽度のアスペルガーが入っていたのではないかと思う。昼間は熱心な社員（彼女は働きすぎだったという報道もあった）、夜は娼婦という二面性が注目されて、
「なぜ東電のエリート女性社員がそのような売春行為に走ったのか？」といろんな評論家やコメンテーターが出てきて意見を述べたのだが、うまく説明できたと云い難い。しかしこの女性がHFPDDだったと仮定すると、当時のすべての疑問点に納得がいく。被害者の脳には生まれつき“ある事情”があったのだ、と。
軽度のアスペルガーの人は学歴も高く、ワーカホリックに陥る人が多いし、女性は性的な問題（セックス依存症）を抱えやすいことが専門医によって指摘されている。・・といっても１３年後のいまだからこそ、「この被害者女性ってPDD入っているんじゃ」という可能性に気がつくのであって、当時は「アスペルガー症候群」さえあまり知られていなかった。むろん発達障害者が（セックス）依存症を抱える率が健常者より高いという指摘は聞かなかったような・・。
●大人の女性の発達障害に特有の５つの症状●
�� 家事や雑用が段取りよくできない
�� 自己評価や自尊心がものすごく低い
�� うつ病や、不安障害、過食、買い物依存症などを合併しやすい
�� しばしば性的な問題を抱えやすい
�� 月経前不機嫌症候群（PMDD）が重くなりやすい
（星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』より一部、抜粋）
「�い靴个靴仞�的な問題を抱えやすい」なんですが、『発達障害に気づかない大人たち』には、PDDが抱えがちな依存症全般についてかなり詳細に説明してある。
大人の女性の発達障害に特有な問題の一つに性的な問題があります。彼女たちはしばしば性欲が低下して不感症になったり、逆に性欲が異常に亢進して異性関係が乱れ、セックス依存症に走ることがあります。大人のADHDの診断基準で知られるジョン・J・レイティらは、大人のADHDの一部は、性的刺激に非常に敏感で、性的欲望が強く、性生活にトラブルが生じることがあると述べています。(110p)
大人の発達障害者は、とびきりの心配症で、心の中にさまざまな不安や葛藤を抱えています。それが束の間でも「セックスで救われた」という経験をすると、またあの快感に浸りたいと繰り返しセックスを求めるようになります。[略]
また彼女らは、衝動的で新奇追及の傾向が強いですから、身の安全など考慮せずに危ない闇の世界へ足を踏み入れることがあり、たとえば、非合法な裏風俗などで犯罪に巻き込まれ、けがをしたり、命を落としたりするケースもあります。セックス依存は、その淫靡な語感とは裏腹に、極めて深刻な事態を伴う恐れのある危ない精神疾患なのです。(150p)
こう説明されると、１３年前の不可解さがすっきりするような気がするのはわたしだけだろうか？もちろんセックス依存症は世界中で見られる“精神疾患”である。マイケル・ダグラスがセックス依存症をカムアウトしたという報道には、思わず笑ってしまったけど（勝手にすれば、って感じで）。