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[24596] 【習作オリジナル】有線式のワイヤード【近未来SFほにゃらら】
Name: 深海トカゲ◆444befdd ID:de1c8a59
Date: 2010/11/27 21:15
脳みそのようなクラゲ。
人類史と同じくらい長い時間閉じ込められた深奥の水源。
そこの中の組成は人間の脳と同じ、そして地上からは土壌を通して豊富なミネラルを含む水が降り、それを餌にして生化学合成を行う微生物と……クラゲがいた。

主人公ワイヤードはそのクラゲ『encephalon』を頭蓋内に移植した実験体人型クローン”エフィラ”の1人、多様な人種のDNAを混合した事によるなんとも言えない風貌と、その首からはケーブルタイプと呼ばれる所以の10mほどの黒いケーブルが伸びていた。









チラ裏的突発発想で投稿。
なろうでもやってます。



[24596] 有線式のワイヤード 『encephalon』と人間の歴史
Name: 深海トカゲ◆444befdd ID:de1c8a59
Date: 2010/11/27 21:13
─2050年
アフリカ、コンゴ共和国の深奥にて歴史上類を見ない規模のメタンハイドレート埋蔵域を発見、エネルギー資源の枯渇により経済危機に喘いでいた各国はこぞってこれを求めてNPO法人という言葉を隠れ蓑に調査隊を派遣する。

─2051年
NPO法人として国連から派遣されていた『緑の袖』が、埋蔵域を覆うように分布している水源によってこの地方のメタンハイドレートが保たれていると発表、この発見によって掘削による水質汚染、水源破壊が問題視され開発が更に難航することになる。

─2052年、10月
国連が埋蔵域に分布する水源は中部アフリカで使用されている水源とは何処にも繋がっていない独立した物だと発表、当時のコンゴ共和国大統領、国連各国との世界エネルギー会議で埋蔵域を『世界的資源』と評して採掘同意書に捺印、メタンハイドレート採掘を各国からのマージンと現地住民を優先して雇用する事を条件に承認する。

─2053年
日本の地質学者、西条徹(サイジョウトオル)が埋蔵域に細かく分布する水源の分析結果を発表、小規模なメタンハイドレート燃焼により36℃という高い水温、未確認の微生物多数発見、塩分濃度、酸素濃度等の統計を学会に提出、その時西条博士は、”この水源は近海に繋がっているか、もしくは何らかの方法で光合成を使わずショ糖やグルコースやデンプン、酸素を生化学反応によって行う生物がいる”可能性を示唆、新たな生物の発見はおおいに評価されるも、この西条博士の仮説は一笑に付され開発競争は更に加速することになる。

─2054年
違法採掘業者が国から指定されていた採掘ルートを無視し、多数分布する水源の一つに穴を空ける。
その後もれ出した水によって液状化した地盤が崩壊、報せを受けたコンゴ共和国治安維持隊によって違法採掘業者十数名が泥の中から救出されたが、搬送された病院にて全員死亡が確認された。

─2060年
国連が”コンゴ共和国メタンハイドレート開発区域における特異事項”を発表。
その配られたレポートの中には人間の神経系の中枢”脳”に酷似した生物が掲載されており、それと同時に全世界に向けて人間以外の知的生命体が開発区域全体を覆うように分布する水源にて確認された事を発表した。
国連は、”これはクラゲと呼ばれる水生生物と同様の種であり、人間の体内と非常に近い環境がこの種をこのように進化させたのだろう、私達はこれを仮称であるがencephalonと呼んでいる、安直な名称だと思うがコレを表すにはピッタリだと思ったからだ”
との発言に留まった。









脳みそのようなクラゲ。
人類史と同じくらい長い時間閉じ込められた深奥の水源。
そこの中の組成は人間の脳と同じ、そして地上からは土壌を通して豊富なミネラルを含む水が降り、それを餌にし生化学合成を行う微生物と……クラゲがいた。

主人公ワイヤードはそのクラゲ『encephalon』を頭蓋内に移植した実験体人型クローン”エフィラ”の1人、多様な人種のDNAを混合した事によるなんとも言えない風貌と、ケーブルタイプと呼ばれる所以の10mほどの黒いケーブルが首根っこから伸びている、研究者も無茶苦茶だと思うほどの実験体から、テストケースの中のテストケースと呼ばれることも。

登場人物

ワイヤード
この物語の主人公
開頭開花してからはずっと首根っこから伸びるケーブルに繋がれている、黒髪、目は緑、肌の色は淡い黒、顔は様々な人種が合わさっている為かハンサムとは言えない、だが愛嬌があるため研究員に人気がある、実験体としては一番若く、度々訪れる第八戦術部隊に弟のように扱われている。
年齢は5歳だが人間の成長速度ではencephalonの成長速度に頭蓋が耐えられないため人為的に12歳ほどの体躯になっている、これは他の実験体も程度の差はあれど同様。

アオイ
何時も主人公のそばにいる人。
使用人兼親的存在と自称している、ワイヤードにとっては大事な友人の一人

カール
第八戦術部隊所属、主人公と同じエフィラの一人、コードレス、特殊炭素鋼で出来た扉もぶち破るほどのテレキネシスが使える、部隊の隊長。
男、12歳、体は20代
突撃要員なのに意外と理性的なのは部隊長だからか、しかしあるレベルまで理性的という点は他の実験体にも程度の差はあれ同じ傾向が観られる。
コーカソイドが母体のため白人らしい色素の薄い髪と肌、青い目、高い鼻。


エフィラの特徴
何かしら知能指数が高いことと実験体によっては奇々怪々な特殊能力や特異体質を保有している。
理性的だけどぽつりぽつりと子供っぽい部分が見られ、いったん振り切れると我侭で傲慢で傍から見れば残酷な部分等が現れだす。
何故か音楽に好意的な反応を示す個体が多いが研究者もそれには頭を捻る事しかできない。





[24596] 有線式のワイヤード 『encephalon』と人間の歴史2
Name: 深海トカゲ◆444befdd ID:de1c8a59
Date: 2010/11/27 21:14
2060年の国連による”コンゴ共和国メタンハイドレート開発区域における特異事項”の発表は、その後の私達の生活に非常に大きな変化を与えた。

地表からのミネラルを餌に驚くほど多様な養分を生化学合成する藻類、メタンハイドレートの小規模燃焼や地熱そのものを餌とするワーム類、そして”かれら”に酸素を効果的に供給し、二酸化炭素をもらう微生物など、それらは殆ど人体で言う所の赤血球や白血球、しまいには壊れた岩盤に付着して穴を塞ぐ血小板のような役割を持つなど、それぞれ個々の生物が人体の仕組みに類似した役割を担っていたのだ、彼らの全ての行動は『encephalon』の為に存在するようでもあったし、当時の学者達はその生物達を”Those biological has written on the back of flyer”(これらの生物は、チラシの裏に書かれている)と言っては呆れかえり、案の定その水域は学者達や一部の人間達によって”The Back of flyer”(チラシの裏)と呼ばれるようになった、中には神様のことを前世紀で有名だった曲からもじって”Paperback Writer”(ペーパーバックライター)とか言う不届き者も現れたらしいが真偽の程は定かではない。

そして『encephalon』の研究は一つ進むたびに驚きの連続だった、ヒトのDNAは30億塩基対だが『encephalon』はそれを優に越える10倍の300億塩基対、テロメアの長さはそれよりももっと多くヒトの15倍の長さはあったのだ、しかしこれを知った研究者達や各国の有力者は目の色を変えた。

『不老不死』

それは西暦以前から人間が挑み、敗退してきた夢物語。
誰しもその栄誉を抜け駆けしたい訳ではない、だが自分達以外の国の誰かがそれを行うかもしれない。
目の前で眩く輝く黄金に、結果的にそれぞれの国の猜疑心が膨らみ、そして2062年の春先に中国人研究者による情報のリークが公になると、とうとう各国による『encephalon』の奪い合いが始まった。
全世界が冷戦時のソ連とアメリカのロケットの射ち合いのように『encephalon』を研究し、情報の秘匿をし、奪い合い、その熱の上げようは度々戦争一歩手前にまで発展するほどに苛烈さを極めた。

しかし2070年5月、数年間ほど続いた第二次世界冷戦は『encephalon』自身の反抗という思わぬ結果によって終息することになる。

各国研究所の職員が次々に不可解な変死体で発見され始めたのだ、最初は何処か別の国の仕業と考えていた有力者達も被害が『encephalon』を研究している全ての国に及んでいるとなると争ってなどいられなくなる、彼らは再び国際連合本部であるニューヨークに集結し、人類の歴史上初めての異なる知的生命体との交渉に及んだ。

……補足しておくが彼らが『encephalon』を知的生命体と認識しておりながらもコンタクトを一向に取らなかったのは単にコミュニケーションの方法が解らなかったからである。
検査の結果一応脳波としては反応が見られていたので、これまである程度の尊厳は守りつつ実験に参加していただいていたのだ、といっても相手は手も足も出さないし出せないので”殺さない”という一点だけであるが。


交渉の方法はロシアのとある若い研究員が考案したある方法が採用された、その方法とは本当に簡潔だが、レトロとかを飛び越えてこの時代にはオカルトのような物としてすでに認識されつつあったモールス信号。

微弱な電気信号をモールス符号に当てはめてアルファベット順にスイッチをカチカチとする、ある程度それを行った後、今度は簡単な会話分を作成し、また延々とカチカチとする、この21世紀の後半にさしかかり銅線と簡単なスイッチ機能と返ってくる信号の有無を表す高感度テスターを一から集めて作るはめになったのはどういう偶然かこれを考案した本人であるロシア人の青年であったことは特記しておく部分であろう、もう既に怒れる『encephalon』に近づける人間は彼だけだったのと”なんで費用も機器もだしてくれないの?”と彼がぶつくさ言いながらもこれを作り自ら実践してくれたおかげで人類は『encephalon』と始めて会話が出来るようになったのだから。

因みに彼はその後コンピューター端末で『encephalon』との会話を補助するツールを作成して二度後世に名を残す事になる、現『グリーンスリーブス』の研究所所長である。





[24596] 有線式のワイヤード 『encephalon』と人間の歴史3
Name: 深海トカゲ◆444befdd ID:de1c8a59
Date: 2010/11/28 11:52
”さすがにもう飽きた”

─私はこの成功するかどうかも解らない実験を一昼夜続けているが、正直に告白しよう、私の極僅かな忍耐力と根性もそろそろ限界だ、国連の本部くんだりまで出ばっていざやったことと言えばホテルでサンドイッチを食べた事とスイッチを押し続けるという今まさにやっているこれだけなのだから。─


これはロシア人研究者”ユーリー・ストラヴィンスキー”が後の自伝にて掲載した当時の日記である、左手でモールス信号を打ち込み、右手で書いていたようだ、そしてその日記文もモールス信号で書かれている、当初は”ボブとケンが~”や”これはペンですか?”など初等教育の英語の教科書みたいなことを書いていたのだが、途中から唯の愚痴になってしまっていたようだ。

”サミュエル・モールス! 国連! クソッタレ! ファック!”

その日記は当時の筆記型有機ELディスプレイにユーリーが指で延々と書いた代物で、後半に進むにつれてユーリーオリジナルの楽譜や歌詞、数式がちらほらと見受けられてくる、もちろん全てモールス信号であり、文章の情報量は最終的に1Gbyteにまで及んでいる事からユーリーの疲弊っぷりは相当の物であった事が伺えるであろう、彼も当時の事を語るに”━と・を見ると死にたくなる”と呟いていたほどだったらしい。

そして、記念すべき『encephalon』と人間の会話は更に一昼夜、実験を開始して48時間、ユーリーが壊れてから24時間後に成功する。

”私は本当は音楽家になりたかった”

これがユーリーの一文である、ユーリーはこれを最後に呼びかけを終了しようと思っていた、しかし飲みかけのマグカップを片手に職員宿舎に戻ろうとしたユーリーを、高感度テスターが鳴らすビープ音が足止めした。

”生きている間は輝いていてください

 思い悩んだりは決してしないでください

 人生はほんの束の間ですから

 そして時間は奪っていくものですから”


ユーリーは『encephalon』から繰り返し送られてくるビープ音を必死になって解読した。

そして解読が完了すると、彼は『encephalon』から初めて掛けられた言葉が激励の類だと言う事に苦笑した、しかし次第にこの文の、ある一つの事に気がついて掌からマグカップを滑り落とす、ユーリーは過去にこの文章を読んだ事があったのだ、正確に言うとこの”歌詞”をロシアでの、学生時代に。

そして続けざまにビープ音が鳴る、ユーリーは慌てて落としかけた有機ELディスプレイを真っ直ぐに立て直すと振るえる指先で、それを簡素な英文に訳していく。




”あなたとこうして出会えて光栄です、少し私とお話しをしましょうか、ユーリー。”






こうして人類と『encephalon』の最初の交渉は成功した。












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