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ドクタージェット:北海道で9月に試験運航 16件搬送「有用性実証」

 北海道で9月、小型ジェット機による航空医療搬送「ドクタージェット」を試験的に実施し、1カ月間で16件の搬送例があったことが、札幌市内で今月開かれた日本航空医療学会で報告された。

 北海道では医師不足の影響で産科や小児科など専門医が人口の多い札幌市に集中する傾向にあり、半径50キロ以内で分娩(ぶんべん)施設が2カ所しかない地域もある。そこで、北海道医師会や航空会社など70団体で構成する「北海道航空医療ネットワーク研究会」(HAMN=会長・浅井康文札幌医科大教授)が、2000万円をかけてドクタージェットの試験運航を計画。清掃事業会社の寄付金約1000万円を受け、残りはジェット機を運航する中日本航空が負担した。札幌の丘珠空港を中心に、小型ジェットが離着陸できる道内12カ所の空港を結んで実施された。

 報告では16件のうち患者搬送は9件。手術などのため札幌市から専門医を他地域に運んだ医師搬送が3件、道外への臓器搬送が4件だった。患者搬送のうち小児は4件で、そのうち2件は医学的に緊急を要するとされた。

 気道と食道の間に穴が開く「気管食道ろう」で緊急手術が必要と判断された釧路市内の生後3カ月の女児は、陸路なら5時間以上かかるところを、小型ジェット機で30分で丘珠空港へ運ばれた。防災ヘリが引き継いで札幌市内の病院に収容され、無事手術を終えたという。

 実際に何度も乗り込んだ手稲渓仁会病院の奈良理医師(45)は「ヘリより振動が少なく、患者への負担が少ない。機内も広く、患者へ処置がしやすかった」と話した。

 HAMNはドクタージェットの年間運用費を2億5000万円程度と試算。浅井会長は「今回の試験運航でドクタージェットの有用性が実証された。今後、設置に向け行政に費用負担を働きかけていく」と話している。【黒川将光】

毎日新聞 2010年11月28日 東京朝刊

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