インサイダーとアウトサイダー
~The Economist 日本特集(4/10)~

2010.11.25(Thu)  The Economist

The Economist

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 こうした忠誠心は労働者を勤勉で献身的で極めて生産的にし、数十年間にわたって日本に多大な利益をもたらしてきた。彼らが得る見返りは、終身雇用と年齢とともに増える賃金だった。このような年功序列型賃金体系は、成長が鈍化するにつれて後退したが、年齢層の高い労働者、とりわけ数が増えている50代以上の労働者は最もコストがかかる存在となっている。

 労働力に占める高齢労働者のウエートと(少なくとも2008年の景気後退までは存在した)人員解雇に対する文化的な嫌悪感は、いくつかの難しい問題をはらんでいる。解雇された運の悪い中高年の従業員は事実上、前途を閉ざされてしまうのだ。悲しいことに、実用に堪える英語力を持つ元サラリーマンがガードマンとして働いているのを目にすることもある。

 若者にとっても、結果は同じように深刻だ。高齢の従業員を大勢抱える会社は、若い従業員の採用や研修にかかる支出を減らすことで、縮小する国内市場や海外市場での厳しい価格競争に対応してきた。企業は、ますます「非正規」の労働者を雇うようになっている。採用するのも解雇するのも簡単な、正規の雇用契約のない人々だ。

 こうした非正規労働者は今、労働力全体の3分の1を占めており、1984年の18%から上昇している。女性ではその割合が過半に上っている(図4参照)。

 全く同じ仕事をしていても、非正規労働者の平均賃金は、「正規」の労働者よりはるかに少ない。また非正規労働者は、正規労働者に比べて格段に少ない実地訓練しか受けられない。これが日本経済の技能格差を広げ、全体的な競争力の水準を低下させている。

 東京大学の玄田教授によると、1つ励みになる兆候は、非正規雇用の若者が、勤め先の企業に長期間とどまるのが以前より容易になっていることだという。だが、正規労働者と同じように扱われるまでは、彼らはやる気を持てない下層階級にとどまったままだろう。

 日本政府は労働力の減少に直面して、政府の最優先事項は、能力のある既存の労働者の有効活用でなければならないということを理解している。政府は、女性を労働力に呼び戻すために託児所を増設しており、実際、働く男性の割合が低下する一方で、働く女性の割合は上昇している。

竹の天井

 それでも、世界経済フォーラム(WEF)によると、日本の労働参加率の男女格差は依然、先進国で最も大きいという。女性が非正規の仕事に就いていることや、子供を産むために仕事を辞めてしまうこと、管理職として働く機会が男性と同じように与えられていないことなどが原因で、女性の賃金は男性より3分の1少ない。

 代わりに女性は、地位の低い事務職をやるものだという固定観念を持たれている。こうした事務職は、かつて上司たちが働きすぎの夫に忠実な妻を用意するための結婚仲介業と大差ないと考えていた仕事である。

 1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことで、職場での女性に対する法律上の障害はほぼ取り除かれたが、差別は今も盛んだ。日本の大手商社で働くある幹部は、今年の総合職の採用に応募した女性は男性よりはるかに有能だったが、女性は同社が与える産業関係の仕事には適していないと思われ、応募者の20%しか採用されなかったと説明する。

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