このような態度は、役員室にまで及ぶ。高い評価を受けている日本の経営者の中で、女性はごくごく限られた存在だ。そうした女性の1人である、管理職専門の人材会社コーン・フェリー・インターナショナルの橘・フクシマ・咲江氏は、日本の上位企業100社で働く女性の経営幹部はたった16人しかいないと話す。
日本の「ガラスの天井(目に見えない昇進の壁)」は「竹の天井」として知られており、ガラスの天井より破るのが難しい。
定年後も会社にとどまる高齢の労働者に対しても、同様の偏見がある。日本は米国と比べても、60~64歳の労働者の雇用率が非常に高い。一般的に言えば、大陸欧州で見られるように、60歳前に退職を促すようなこともなかった。だが、65歳を過ぎると、雇用は急激に減少する。
慶応義塾大学の塾長、清家篤氏は、これは、年金受給者が所得制限を受け、働き続けると受け取る給付額が減ることが部分的に影響していると話す。2013年からは65歳以前に退職を強要することが違法になるが、多くの企業では、強制的な制限措置によって多くの労働者が60歳以降は低賃金の仕事に就くのを余儀なくされている。
65歳までの雇用義務化によって、年功序列型の賃金体系を廃止することがより一層必要になる。高齢の労働者を雇用し続けることは非常に高くつくからだ。清家氏は、定年を設けないことが多い中小企業が、高齢者が働き続けるのに相応しい場所かもしれないと話す。実際、一部の中小企業はむしろ、若い労働者を見つけるのに苦労している。
ただでさえ若者の就職事情が厳しい中、移民を大勢受け入れることには反発も根強い(写真は就職活動への決意を誓う専門学校生の「就職出陣式」)〔AFPBB News〕
労働者の数を増やすもう1つの方法は、もっと多くの移民を雇用することだ。ただし、これは日本では文化的な地雷原だ。積極的な外国人受け入れを支持する野党の政治家、浅尾慶一郎氏は「移民を支持する政策は、特に新規参入者との競争を恐れる若者の反対が強い」と言う。
政府は米国式のグリーンカード制を導入したいと考えているが、たとえ外国人労働者が全員日本語を学んだとしても、日本が人口減少を補うだけの十分な外国人労働者の入国を認めることはありそうもないように見える。
複数の試算によると、人口減を完全に補うためには年間約60万人の移民が必要になるという。それよりも、米国に押し寄せるインドや中国の大卒者のような高度な技術を持つ労働者を採用する方が有望な策かもしれない。新鮮な発想を取り入れることができるからだ。
合法的に日本に滞在している外国人の数は20年間で2倍以上に増えたが、わずか100万人から200万人余りに増えたに過ぎない。その多くは中国人と韓国人で、彼らは必ずしも歓迎されていない。さらに言えば、中国や韓国の人口も高齢化しているため、これらの国々が今後長らく、自国民を輸出し続けることは見込めないかもれない。
日本で教育を終えた外国人の数は、ほかの先進諸国に比べて情けないほど少ない。経済産業省によると、大卒者全体に占める外国人の割合は、オーストラリアの29%、英国の16%、米国の13%に対し、日本はたった0.7%だ。日本の大学は明らかに、日本にとどまることを選択する優秀な外国人卒業生を育てる場所を提供していない。
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